長年にわたり、日本国内、なかでも福岡県が先導してきた「ワンヘルス」の取り組みが、新政権でも重要な政策のひとつとして明確に位置づけられました。
日本初の女性総理となった高市早苗総理は、11月5日に開かれた臨時国会で初めて答弁に立ち、自民党参議院議員会長の松山政司議員の代表質問に対し、ワンヘルスの理念を踏まえた政策推進への強い意欲を示しました。
松山議員の質問と高市総理の答弁は、下記の動画でご覧いただけます。
ぜひ、この歴史的な瞬間をご確認ください。
↓↓↓
ワンヘルス(One Health)は、「人と動物の健康、そして環境の健全性はひとつにつながっている」という考え方のもと、分野の垣根を越えて協力し、地球規模の課題に取り組む国際的なアプローチです。
この理念は、2013年に日本獣医師会長に就任した藏内勇夫先生(現・世界獣医師会次期会長)と、当時日本医師会会長だった横倉義武先生(現・名誉会長)が、人と動物の感染症に対する危機感を共有したことをきっかけに、具体的な取り組みが本格的に進められるようになりました。
松山議員は質問の中で、世界人口や人・物の移動が増える中、新型コロナウイルスのような人獣共通感染症(パンデミック)のリスクが高まっている現状を指摘。
さらに、動物由来の感染症や薬剤耐性菌などの課題に対して、ワンヘルスの考え方に基づく取り組みが広がっていることに触れました。

福岡県では、「ワンヘルス推進条例」の制定や、県内全60市町村での「ワンヘルス宣言」採択など、全国でも先進的な取り組みが進められています。
また、アジアのゲートウェイという地理的特性を活かし、「ワンヘルスセンター」の整備や、アジア獣医師会連合(FAVA)ワンヘルスオフィスの開設など、国際的にも注目される活動が行われてきました。
国レベルでも、人獣共通感染症や薬剤耐性菌への対策を担う「アジア新興人獣共通感染症センター」の設立に向けた準備が進められており、来年4月には31年ぶりに世界獣医師大会が日本で開催される予定です。
さらに、ワンヘルスの理念は政府の「骨太の方針」やG7広島サミット、日中韓サミットなど、国際的な場でも繰り返し確認されています。

松山議員が「高まる脅威に対し、内閣としてどのように体制を強化していくのか」と問いかけたのに対し、高市総理は「人・動物・環境という分野横断的な課題に、関係者が連携して取り組むことが重要であり、ワンヘルスの考え方に基づいて総合的に対応していく」との考えを示しました。
そのうえで、今後の具体的な取り組みとして次の三点を挙げました。
① 人・動物・環境を含めた監視体制の強化
② 分野横断的な連携の推進
③ 地方での取り組み支援(福岡県のワンヘルスセンターなどを参考に)
この答弁によって、国としてもワンヘルスアプローチを本格的な政策の柱とし、福岡県の先進事例を生かしながら、人・動物・環境が連携する仕組みを全国へ広げていく方針が示されました。
パンデミックなどの地球規模の脅威に備えるための新たな一歩として、大きな意義を持つ答弁といえます。

