早見和真「イノセント・デイズ」

「ひゃくはち」等で著名な作家・早見和真さんの新作「イノセント・デイズ」。新潮社より8月22日発売予定ですが、伊藤忠時代の友人である萬治君が早見さんの幼なじみという御縁で献本頂きました。
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発売前ということでゲラ刷りの状態。そのまま開くと
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見開き4ページになって結構読みにくいです(苦笑)

発売までに読み切れるかなと心配してましたが、プロローグにある判決理由を各章の見出しにして徐々に物語の全容が浮かび上がるテンポの良さと、一つ一つのエピソードが登場人物を通じて読者の心の古傷を抉る筆致にグイグイ引き込まれ一日で読了。

発売前なのでネタバレは出来ませんが、ちょっと感想。

人から「必要とされる事」だけを望む主人公田中幸乃。周囲の人々は幸乃に依存し、幸乃は「必要とされる事」に依存する。どこまでも空虚で無色透明、故に関わる人の本性を増幅させる狂言回しのような主人公。読者が抱く先入観を最後の最後に拒絶するような結末と合わせて、早く誰かと感想を語り合いたくなる物語です。

一方で『整形シンデレラ』というキーワード。本の帯にもデカデカと書いてあるし物語にも整形手術のエピソードを含め何度も出てきますが、そこまで重要なのか自分には理解出来なかった。これは女性の視点で感想を聞いてみたいですね。

そうそう、献本と一緒にこんな封筒が
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「読後にごらん下さい」、この中身が見たくてサクサク読み進めたのかもしれません。

「スティーブ・ジョブズ神の交渉力」 竹内 一正

スティーブジョブズが亡くなって、追悼ムードがメディアにも街中にも蔓延しています。先日本屋に寄ったら平積みコーナーがジョブズ本で埋め尽くされていましたのでついつい何冊か買ってしまいました

「スティーブ・ジョブズ神の交渉力」竹内 一正

いやー面白い。何が面白いって、この本ジョブズが亡くなるずっと前(2007年)に出版されておりますので容赦ない。
如何にジョブズが暴君で子供染みていて義理人情を踏みにじり信義に悖るような事をやっていたかが明け透けと書いてあります。追悼ムードぶちこわし、でもそこが良い。世界を変えるような信念と行動力を持った人は常人とは相容れない部分が有るんだろうなぁ、と。

内容的にはジョブズのエピソードを軸に、松下幸之助とか本田宗一郎とか日本の有名経営者の逸話を絡めて交渉のノウハウ本の体裁になっており、サクサク読めて良いんですが。。。
ただまぁこの本に感化されて日本でこんな調子でやってたらあらゆる方面から袋叩きになりそうですね。全然関係ないんですが、現在収監中の堀江貴文氏が時代の寵児として祭り上げられた後のバッシングをふと思い出してしまいました。

下町ロケット: 池井戸 潤

先日東京に行った際、電車内の吊り広告でこれでもかって位宣伝してたのが池井戸潤著「下町ロケット」

なにやら下町の中小企業が大企業からの訴訟や銀行の貸し渋りなんかに負けず頑張っちゃう小説とのこと、さらに直木賞も受賞したらしいので早速読んでみました。
車内吊り広告で煽っていたスピード感と爽快感は有ります。移動の最中につらつら読んでも2日で読み切りました。逆に言うと内容紹介に書いてある「その特許がなければロケットは飛ばない」がオチの全てとなる構成は、スピード感と引き替えにリアリティという意味では随分端折ってますので、下町の中小企業経営者が読んだら「現実はこんなにシンプルじゃないよなぁ」という溜息が聞こえてきそうです。それはそれ、やはり技術力・知財は資源の無い日本が世界と伍する為に必要不可欠な要素だと再認識させられました。「やっぱ二番じゃ駄目だよな!」と気付かせてくれること間違い無しです。