平成27年6月議会一般質問「景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について」

録画中継にて知事答弁を含め視聴する事が可能です
板橋聡の議会質問録画中継

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質問要旨 一、景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について
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◯十八番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自民党県議団の板橋聡です。二期目を迎えました小川知事に対する一般質問のトップバッターを務めさせていただきます。常日ごろから御指導をいただいております先輩諸氏、同僚議員の皆様の御配慮に感謝申し上げて、始めさせていただきます。
 四年前、私が初めて一般質問の舞台に立たせていただいた際、小川知事より、県内の格差を何としてでも解消し、地域の特色を生かしてバランスある発展を目指す旨、力強いお言葉をいただきました。あれから四年の時が流れ、国政においては政権与党がかわり、経済政策も緩やかなインフレを目指すよう方針転換が行われ、それに伴い為替相場、株価初めとする経済環境が激変した中、今回は景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について質問をさせていただきます。
 まず、景気回復の地域格差についてです。経団連が六月十九日に発表した二〇一五年春闘の月例賃金引き上げに関する最終集計では、大手企業の賃上げ額は八千二百三十五円となり、十七年ぶりに八千円を超え、賃上げ率は二年連続して二%を上回りました。直近の景気動向指数は前月比一・九ポイント上昇し一一一・一となり、内閣府は基調判断を引き続き改善を示していると発表。また、民間企業の設備投資増により二〇一五年一─三月期のGDP二次速報値は前期比年率三・九%増で、一次速報値から大幅改善をしております。このように、多くの景気指標は経済状況の改善を示し、消費税率アップによる足踏みがあったものの、アベノミクスと呼ばれる経済政策は着実に実績を残していると言えます。
 しかしながら、私の地元のみやま市初め市井の声に耳を傾けると、そこまで景気のよい話が聞こえてこないのも現実です。知事も同様に、六月議会の説明要旨や我が会派の代表質問に対する答弁など、アベノミクスの効果による県内経済の見通しについて事あるごとに、県経済は持ち直してきている、その回復を確固たるものにするとした上で、県内各地でそれを実感できるようにすると発言をされています。
 そこで知事に質問です。知事が景気回復を県内各地で実感できるようにするというのは、裏を返せば県内でもまだ景気回復を実感できない地域があるという意味だと理解します。景気回復に関する県内地域格差について知事の所見をお聞かせください。
 当初、景気回復は、東京を初めとする大都市圏が起爆剤となり、徐々に地方へ波及していき、最終的に県下隅々で実感することができるものと思っておりました。つまり、都市部と地方には景気回復の時間のずれ、すなわちタイムラグが存在するため、このタイムラグの期間を乗り切れば、まず都市部に訪れた景気回復の波が地方に押し寄せるのではと考えておりました。しかし、景気指標と言われる業況判断DIや有効求人倍率、完全失業率など主要な数値を過去二十年ほどさかのぼって調べてみると、東京、福岡、全国平均は全てほぼ同じタイミングで上昇したり下降したり回復をしております。つまり、リーマンショックがあれば同時に全て下降し、政権交代すれば同時に上昇し、消費税が上がれば同時に下降しており、そこにタイムラグは存在しません。存在するのはタイムラグではなく、地域による上昇または下降する振れ幅の違いでした。つまり、東京は回復するときは大きく上昇する、福岡は小さく上昇する、下がるときには同時に下がり始めてほぼ同じタイミングで底を打つ。今のところ福岡県内各地の詳細なデータは存在しませんが、県内でも都市部と地方で同様の傾向があることは想像にかたくありません。
 そこで知事に質問です。景気回復を県内各地で実感できるようにするとは、すなわち景気回復の振れ幅が小さい地方においてこれを押し上げることにほかならず、景気回復のピークを迎える前にこれに対する具体的かつ効果的な施策を速やかに打っていくことこそが景気回復の地域格差是正につながると認識しますが、知事の御所見を披瀝ください。
 さて、景気回復の振れ幅は、地域によって格差が存在するということについて質問しましたが、その際、大きな問題となるのが賃金格差です。アベノミクスの第二の矢と呼ばれた財政出動などをきっかけに、人手不足の声が聞かれるのが土木職です。この求人賃金の東京と福岡の差額を、アベノミクス前後という観点で政権交代前の二〇一二年十二月と二〇一五年直近を比較します。そうすると、最高賃金における東京と福岡の差は二〇一二年十二月に五・六万円だったものが、直近では七・七万円に広がり、最低賃金においても二・三万円から四万円に広がっています。もちろん、福岡でも賃金は上がっているものの、上げ幅が小さいため東京との差がむしろ広がる結果になっており、これは福岡県内においても同様の傾向、すなわち景気回復に伴い都市部と地方の賃金格差は広がっていると考えられます。そうすると、四年前の私の一般質問でも同様の指摘をしておりますが、給与がよく、人材の流動性もあり、景況感もいい都市部に新規学卒者を含む求職者は流れることになり、これは地方創生議論の肝である人口の一極集中をさらに加速させる懸念すらあります。また同様に、福岡県内各地には、地域の特色に根差した技術力を武器として活躍するローカルな物づくり企業が多数存在します。例えば、筑豊地域では、炭鉱産業の二次産業として技術を磨いた鉄工会社などが、自動車産業を初めとする新しい分野へ続々と乗り込んでいます。また私が住む有明海周辺では、ノリ養殖の最盛期に、不眠不休で行われるノリの生産、加工を支える技術を持ち、二十四時間対応の保守体制を整えた機械メーカーが複数存在します。これら地域密着の物づくり企業が今、口をそろえて技術者の確保が大変難しいと言っております。景気回復や賃金の地域格差が原因で地方から技術人材が流出し、前述したような地域に根差した物づくり企業が存亡の危機に立たされるのは、雇用問題はもちろん、地域が人材の多様性を失い、そこに生まれ育つ青少年にとって身近な目標となる社会人の種類が減ることは、地域の柔軟性や活力を失うことにつながります。
 そこで知事に質問です。四年前も指摘しておりましたが、給与格差が景気が回復傾向のために引き続き拡大する中、地方では人材、特に技術系の人材確保が難しくなっております。雇用面について、地域における人材多様性の重要性と、その確保のためにどのような対策が必要か、知事の所見をお聞かせください。
 最後に、中小企業振興条例について質問します。知事は、地域経済を支える中小企業を総合的に支援するために、中小企業振興条例制定に向け準備を進めているとおっしゃっております。我が党の代表質問において、これまで九十二社の経営者に対し本庁職員が直接ヒアリングを実施したり、現在千二百社を対象にアンケート調査中とのお答えをいただきました。そこで私は、ひそかに危惧していることがあります。経済産業省出身の知事だけに、物づくり系企業に偏ったヒアリングやアンケートにならないだろうかと。例えば、先ほどからお話ししているように、景気回復の幅が小さい地方において、公共事業は景況感に大変大きなウエートを占めます。その点で、公共事業を担う企業の意見や地域ごとの特徴もしっかり反映させるなど、都市部だけでなく、地方の景気回復に対しても実効性のある条例を目指していただきたいが、知事の御所見を御披露ください。
 以上、四年前の初質問で取り上げた県内地域格差を主眼に置いて質問をいたしました。知事の選挙のスローガンどおり、四年前よりさらに前進した答弁を期待して、質問を終わります。(拍手)

◯議長(井上 忠敏君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、景気回復の地域格差と、それに対する対策でございます。福岡県の経済は、生産、消費が堅調に推移をいたしておりまして、雇用情勢も有効求人倍率が過去最高の水準でこのところ推移するなど、全体としては着実に持ち直しをしてきております。これを企業ごとに見てみますと、輸出が好調な自動車、産業用ロボット、また外国人の観光客の増加により売り上げが伸びておりますホテル、百貨店などを中心に、業績が回復しているという声が聞かれます。その一方で、食料品加工、サービスなど内需型の中小企業を中心に原材料の高騰、あるいは人件費の増加が収益を圧迫している、そういった声も聞かれるところでございます。業種や規模にかかわりなく、この今持ち直してきております景気回復を県内に広げていくためには、企業の生産や設備投資が活発化をいたしまして売り上げ、収益が増大し、それが雇用の拡大、賃金の上昇につながっていき、そのことがさらなる個人消費の拡大と生産拡大を引き起こす、そういった経済の好循環を実現していくことが必要であると考えております。
 こうした考え方のもとで、二月の補正予算と、それから二十七年度の当初予算によりまして、民間設備投資を刺激するグリーンアジア国際戦略総合特区の推進、物づくり中小企業が行います新製品の開発に対する助成、地域の消費を喚起をいたしますプレミアムつき地域商品券の発行、またよかもん、名産品です、それから、よかとこ、旅行事業でございますが、これらの販売、そして雇用条件や労働環境の改善を後押しをいたします正規雇用促進企業支援センターの開設、賃金改善を図る中小企業への人材派遣、そういったことに取り組んでまいります。また、幅広い産業分野で生産誘発効果が見込まれております公共事業につきましては、補助事業費の減少というものを県の単独事業費で補うとともに、防災、減災の観点から、地域ごとにめり張りをつけてこれを執行することといたしております。そして、今後県経済の動向を見きわめつつ、必要に応じ事業量を確保していきたいと考えております。こうした取り組みを機動的に進めることによりまして、持ち直しをしてきております我が福岡県の経済、その回復を確固たるものにし、県内各地の企業、県民の皆様に景気回復を実感していただけるよう全力を挙げてまいります。
 次に、地域の中小企業の人材確保についてお尋ねがございました。中小企業が求める技術者などが地域から御指摘のような都市圏に流出をし、その企業経営に支障を来すようなことになれば、各地域の特性を生かした形で物づくり企業というのは立地いたしております、その多様性が失われかねません。中小企業が必要な人材を確保していくことは重要な課題であると、このように認識をいたしております。そのため県では、年代別の就職支援センターのホームページ、また合同の会社説明会などによりまして地元中小企業を御紹介をしていくとともに、企業の人事採用担当者を対象といたしまして採用力の向上セミナー、そういったことも実施をいたしまして、中小企業の人材確保、両面から支援に努めているところでございます。今年度は、地元中小企業の魅力をより詳しく紹介をする冊子を作成をいたしまして、県内外の大学等へ配布する予定でございます。また、正規雇用促進企業支援センターを設置いたしまして、労務管理経験がある専門アドバイザーが企業を訪問いたしまして、人材の採用やその定着の支援を図ることといたしております。今後、こうした新たな取り組みも含めまして、中小企業が必要とする技術者など多様な人材の確保をできるだけ支援をしてまいります。
 次に、中小企業振興条例の制定についてお尋ねがございました。この条例の策定に当たって、幅広く中小企業の課題やニーズを把握をしているところでございます。これは、その対象は物づくり企業に限ったものだけではありません。県内七十一カ所の商工会議所、商工会の経営指導員は、御承知のとおり日ごろから地域のサービス業、小売業、建設業などの企業を訪問いたしております。こうした産業の情報も活用してまいりたいと思っております。加えて、現在千二百社に対するアンケート調査を行っており、その内訳を申し上げますと、県内企業の産業構造、これを反映させた形で数を決めております。サービス業が四割、小売が二割、建設、製造、卸、それぞれ一割となるように対象を決めて調査を行っているところでございます。また、これまでのところ九十二社の経営者の方にヒアリングを行っておりますけれども、これまで行った九十二社についてその内訳を申し上げますと、製造業が最も多く五十三社、サービス業が十六社、小売が七社、建設が四社、卸が三社、その他が九社となっております。(発言する者がある)それで、最後まで聞いてください。引き続き、できるだけ、今、これまでのところ九十二社と申し上げた。これから引き続き、できるだけ幅広く経営者の声を聞いていきたいと、このように考えております。今後も、県内各地域の中小企業の課題やニーズの把握に努め、条例に反映させていきたいと、このように考えております。