平成24年6月議会一般質問「イオンとの包括提携協定について、攻めの環境政策について 」

20120622朝日新聞
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一、イオンとの包括提携協定について
 1.企業と自治体との適切な距離感
 2.部署をまたがる利益相反
一、攻めの環境政策について

◯十一番(板橋 聡君)登壇 一般質問最終日のトップバッターを務めます自民党県議団の板橋聡でございます。通告に従いまして一般質問を行います。
 まず、イオンと福岡県の包括提携協定について質問いたします。四月二十日、イオンと福岡県は観光振興、地域防災など十四項目で協力する包括提携協定を締結しましたが、その内容から、私は県と一企業の距離感に疑問を覚えました。プレスリリースや新聞記事によると、その協定の一環として買い物金額の〇・一%が福岡県に寄附される電子マネーカードふくおか共創WAONカードが発行されるとのことです。寄附してくれるなんてありがたいことじゃないかと感じられる方も多いかもしれませんが、これは一般的な自治体への寄附と違った仕組みでございます。イオンはわざわざこの協定のためにふくおか共創WAONカードを発行し、このカードの決済金額を寄附金額と連動させることで、福岡県や関係者に対して、心理学で言うところの外発的動機づけを行っております。わかりやすく言えば、福岡県はイオンから鼻先にニンジンをぶら下げられたような状態ということです。
 共創とは比較的新しい言葉で、ともにつくると書いて共創です。福岡県では、麻生前知事が平成八年二月議会の所信演説で述べられた、豊かで活力あるアジアに開かれたふくおかの共創に端を発し、その後五年連続で議会冒頭の所信表明で使用された造語です。共創の精神は今も引き継がれ、本年度の県の事業においても新社会推進部にNPO・企業による元気なふくおか共創事業が存在しております。お気づきのように、今回、協定の一環で発行されると位置づけられたふくおか共創WAONカードに、県の事業名の一部が含まれております。イオン側からの提案だったそうですが、これは一般県民にとって、福岡県が発行しているかのような誤解や、県がお墨つきを与えたカードとの誤解を生じさせます。
 実は、イオンは既に約五十の自治体と同様の包括提携協定を結び、それぞれの地域でご当地WAONと称される、同じ寄附の仕組みを持ったWAONカードを発行しております。昨年十月のみずほ情報総研のレポートでは、これをWAONの普及拡大戦略と紹介し、地方自治体をパートナーと位置づけております。
 そこで知事に質問です。福岡県内に流通している電子マネーは、JR九州のSUGOCA、西鉄のnimocaなどまだまだたくさんございます。私は、一企業が運営する電子マネーの普及戦略に自治体が取り込まれている状態は、自治体の公平性、中立性を損なっていると考えますが、知事の所見をお伺いします。
 次に、部署をまたがる利益相反について質問します。イオンとの包括提携協定の所管部署は新社会推進部社会活動推進課で、目的は福岡とイオンとが相互に連携を図ることにより一層の地域の活性化及び県民サービスの向上を図るとあります。具体的には、県政情報を発信する専用ボードをイオン店舗に設置、イオンの店舗にて県のイベントを開催、そして先ほども言いましたが、ふくおか共創WAONカードを新たに発行してその売り上げの一部を県に寄附することになっております。しかし、言いかえれば、協定に基づき実施するこれら一連の内容は、すべてイオンの顧客囲い込み戦略に利するものです。一方で、商工部では、少子化や大規模小売店舗の進出により苦境に立たされている中小企業の振興や商店街の活性化を政策として推進しており、その観点で今回のイオンとの包括提携は、新社会推進部と商工部で明らかな利益相反を起こしております。
 今回、新社会推進部社会活動推進課に、この部署をまたがる利益相反の状態について認識を問うたところ、いま一つぴんときていないわけです。なるほど、それはそうだろうと。社会活動推進課は、みずからに与えられた職務分掌を忠実に推進しているわけで、彼らは商店街の活性化に思いをめぐらせ責任を持つ必要はないわけです。
 そこで知事に質問です。新社会推進部が独自の政策である企業、NPOとの協働を進めるために、今後も企業との提携、協定を通じた関係を広げようとする中で、その内容、メリット、デメリット、作用、反作用を庁内横断的に精査分析して、関連部署に通達し稟議するような仕組みがなければ、部署をまたがる利益相反、つまり新社会推進部以外の部局が、議会から認められた予算に基づき進めている政策の足を引っ張る可能性があることについて、知事の所見をお伺いします。
 続きまして、攻めの環境政策として大きく二点質問します。
 まず一点、生物多様性戦略のような環境政策は決して環境部だけで完結せず、幅広くすべての部局がかかわるもので、従来の縦割り行政ではその効果を存分に発揮できない可能性があります。例えば、農林水産部において平成十五年より福岡県減農薬・減化学肥料栽培認証制度という事業が行われております。これは化学肥料と化学農薬が県の基準量の二分の一以下で生産された農産物に県が検査を行い認証するもので、食の安全や農産物の付加価値向上に資するだけではなく、環境保全、特に水田のような湿地の環境が減農薬、減化学肥料により改善されれば生物多様性の維持に大きく寄与するわけです。この認証制度は平成十五年に始まりまして、当初は右肩上がりに栽培面積、そして認証農家戸数ともにふえておりましたが、平成二十年ごろから頭打ちになり、県内の耕地面積に占める割合は三%程度にいまだとどまっております。理由を聞きますと、技術的な問題や減農薬、減化学肥料の価値を認めてくれる消費者が広がらないというのが主な原因とのことです。この事業は説明のとおり農林水産部が所管しており、環境政策的意味合いも非常に大きいのですが、環境部の密接な関与は基本的にはなかったと聞いております。
 そこで知事に質問です、このような環境政策にかかわる具体的な事業は、環境部だけでなく庁内各部局で行われておりますけれども、その中で環境部が情報を集約し、必要あれば有識者の紹介やアドバイスを行い、関連部署と調整をして、今までコストセンターと見られがちだった環境政策から、福岡県の魅力向上、あるいは県産品の高付加価値化といった攻めの環境政策に進化させるべきと考えます。特に、みやま市を初めとする県南地域は生物多様性に深く関係する農業が重要な産業で、至るところに農地がございます。環境保全と経済発展または地域振興を両立させるような攻めの環境政策が待ち望まれるところです。知事の所見をお聞かせください。
 また、環境政策においては啓発が重要になります。県教育委員会においても、環境部を通じ県が進める環境政策と連携し、児童生徒の理解を深めるような教育を推進する必要があると考えますが、教育長の見解をお聞かせください。
 続きまして、攻めの環境政策二点目の質問として、矢部川水系の流況についてお伺いします。まず、東日本大震災の原発事故以降、クリーンエネルギーの活用が叫ばれており、その中でも水力発電はエネルギー効率がよいと言われております。矢部川には既に福岡一の水力発電を抱える日向神ダムがございますが、今議会の我が会派の質問でも触れられたとおり、ぜひ県内各ダムにおいても水力発電の導入を推進されるよう強く要望しておきます。
 そして私は昨年の六月議会、初めての一般質問にて、前職の県議の思いを受け継ぎ、矢部川水系の抜本的水源対策に関して知事にお尋ねしました。それに対し小川知事からは、利水ダムの検討まで踏み込んだ麻生前知事の過去の答弁を踏まえ、さまざまな方策について総合的に研究していく旨、御答弁いただきました。
 そこで知事に質問です。あれから一年、県としてどのような具体的な動きがあったのか、その進捗と今後の取り組みを御説明ください。
 以上、知事の明快な御答弁をお願いして、私の一般質問を終了いたします。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 イオンとの包括提携協定についての私の認識でございます。県ではかねてから、共助社会づくりに向けましてNPO・ボランティアとの協働を初めといたしまして、企業に対しても社会貢献活動の取り組みを促してまいりました。今回、イオンから当県に対しまして、企業の地域社会への貢献という観点から、県との協働を進めていきたいと包括提携の御提案がありました。県では、庁内の各部、関係課におきまして、県民サービスの向上という観点から、それぞれの立場で精査をいたしました上で、県産品販売や地域の安全、安心、青少年の育成、そういった幅広い取り組みについての協定を締結したものでございます。この協定のもとで、県産品、まごころ製品の販売でありますとか、店舗での、議員御指摘のポスター掲示のためのボードの設置、広報紙等のいわゆる配架、棚に置いてもらう、そういった取り組みを具体的に進めていきたいと考えております。
 また、イオンが他の多くの道府県で行っております取り組みと同様に、御指摘の電子マネーカードの利用金額の一部を本県の共助社会づくりのために寄附するという提案がありました。この提案につきましては、企業が独自に寄附の仕組みを考案し、自主的に社会貢献活動として取り組むものであると、県が特定の企業活動を後押しするようなものではない、そのように考えております。また、収益に応じた寄附というのは、企業の社会的貢献活動の一つとして広く使われることでございますので、このカードの提案についても協定項目の一つとしたところでございます。
 それに関連して、県庁内部署にまたがる課題の対応でございますが、今回のイオンとの協定事項は、庁内の各部、関係課におきまして、それぞれの立場でどのような提携が適当か、これを精査し、検討した結果、総合的に判断をいたしまして、協定締結の決定をしたものでございます。今後とも、このような協定につきましては、各部、関係課の連携を密にいたしまして、施策の方向性、県が行っております各施策の方向性にそごを来すことがないように、分析や調整を十分に図りながら対応してまいります。
 攻めの環境行政ということで、環境行政における環境部と各部の連携についてお尋ねがございました。持続可能な社会づくりを目指していく上で、生物多様性の保全というのは重要な課題でございます。県が実施するさまざまな施策におきまして、この生物多様性への配慮が必要であると、このように考えております。県では、今年度、生物多様性を保全するための地域戦略、これを策定することといたしておりまして、現在、各部が実施する事業に生物多様性の視点が盛り込まれるよう、環境部が中心となりまして議論を進めているところでございます。
 当然その過程で、場合によっては専門家の紹介、そういったことも考えられていくわけでございます。これらの生物多様性に配慮した各部の事業が実施されますことで、ひいては議員御指摘にありましたように、地域や県産品のイメージアップにもつながっていくものと考えております。
 次に、矢部川水系の水資源対策にかかわる調査研究の進捗状況、私の答弁以降の進捗状況についてお尋ねがございました。矢部川水系の水資源対策につきましては、日向神ダムにかんがい期の農業用水を確保するとともに、そのダムの弾力的運用によりまして流量改善に努めてまいりました。また、農業用水が不足する場合には、筑後川から導水することができます筑後川下流用水による対応を関係市町や関係団体等と連携しながら行っています。
 議員から御質問いただきました昨年の七月以降の県の対応といたしましては、まずダムの弾力的運用で貯留いたしました八十四万立方メートルの水を、関係団体からの要請を受けまして平成二十四年二月十日から二十九日まで放流を実施いたしまして、矢部川の流況改善を図ったところでございます。また、筑後川下流用水につきましては、矢部川の流況が悪く、希釈用水が不足した場合に筑後川下流用水で補給することが昨年から可能となってございますが、県といたしましては、施設管理者である水資源機構と連携し、関係者にその周知を図ってきたところでございます。加えまして、弾力的運用で貯留した水の放流時に、矢部川河口域のノリの養殖に必要な栄養分の供給につきまして、昨年の九月からでございますが、五地点で調査を開始いたしておりまして、これまで調査の結果、放流水が栄養分の補給の増加に寄与している、そういった傾向が見られました。今後、この放流水がノリ養殖に効果があるか、そういったことなど、さらに確認をするために、二十四年度、本年度も調査を継続してまいります。

◯議長(松本 國寛君) 杉光教育長。
*教育長答弁

◯教育長(杉光 誠君)登壇 県の環境政策と連携した教育の取り組みについてでございます。環境教育は、人間の諸活動と環境との関係について理解し、環境保護、保全活動に主体的に参加するとともに、環境への責任ある行動ができる児童生徒を育成するための教育でございます。その中でも、学校における生物多様性保全の取り組みは、減農薬等による生産活動や河川の生態の調査など多岐にわたっております。これらは県の環境政策とも密接に関連しておりまして、環境、農林水産関係職員等を招き、実践に取り組んでおるところでございます。さらに、県の環境政策を実効性のあるものにするためには、その政策を正しく理解し、実践する児童生徒の育成が重要でございまして、今後とも環境関係部局と一層連携しながら、環境教育の充実に努めてまいります。

◯議長(松本 國寛君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 知事の答弁を受けまして、二点再質問をさせていただきたいと思います。
 イオンとの協定について、企業と自治体の距離感という観点で、知事の御答弁では、もうちょっと突っ込んだやりとりをしたいところですけれども、一般質問の場にはそぐわないので、それは特別委員会などにお任せして、今回、一点だけ再質問させていただきたいと思います。
 企業というのは、ベンチャー、中小そして一部上場企業、外国資本、世論の賛否が分かれる企業、そして反社会的企業まであり、ありとあらゆる形態がございます。また優良企業と思っていても、ある日突然トラブルが発覚して問題企業となる場合もあります。記憶に新しいところで言えば、アレルギー訴訟になったりだとか、食中毒だったりだとか、あるいは社長が使い込みをしておっただとか、そういうふうなニュースが皆さんの記憶にも新しいと思います。県が今回のような協定により直接企業との契約関係を結ぶ場合、現時点でどんな企業なら福岡県として契約してよいかという明確なガイドラインがないと聞いております。ガイドラインを設定する必要はないのでしょうか。その理由とあわせて、知事の所見を御披露お願いします。
 そして、矢部川水系の流況の調査研究について。新たに行っていただいた栄養分調査ですが、栄養塩は有明海の主要産業の一つでございますノリのできばえを左右する重要な要素でございます。特に、昨シーズンは、ノリの生産時期の前半に、非常にノリのできが悪かったんです。大凶作になるかということで大変危惧されておりました。しかし、後半に巻き返して、最終的には例年に近い出来高で終わったのは、ことし二月に行われた日向神ダムの早だめによる弾力活用放流が寄与している可能性があります。今後とも、そういう意味で栄養分調査は、経年変化を見きわめ、矢部川の流況安定がノリ生産に対し定量的に効果があることを確認するためにも、平成二十四年度以降も継続することを要望いたします。
 またここで二つ目の再質問ですけれども、昨年も申し上げましたが、農業、水産業、防火用水、観光、そして環境保全の観点から、筑後平野南部に恵みをもたらす矢部川水系の流況安定は、私の議員としてのライフワークとして取り組む所存でございます。県議会のミスター矢部川として、福岡県がさまざまな調査を行いながら抜本的対策を継続して検討することが肝要だと考えますけれども、知事の所見をお聞かせ願います。
 昨年の一般質問で矢部川水系の現地視察を知事に要望したところ、十一月三日に現地まで赴いていただき、ありがとうございます。しかしながら、白秋祭水上パレードのどんこ船からでは、なかなか現地の窮状も伝わりにくかったかと思いますので、矢部川水系の流量不足が一番深刻な、ノリ生産のピーク時にぜひ現地を訪れていただき、現場で苦慮されているノリ漁家を初めとする地元住民の生の声に耳を傾けていただけるよう、現場主義を標榜されている小川知事に切に要望させていただきまして、私の再質問を終了いたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず第一点目、企業との連携協定に関連いたしまして、ガイドライン、御提案ございました。御承知のとおり社会経済情勢の変化というのは非常にスピーディーで、またその振幅大きいものがございます。またそれに伴いまして、市民の皆様、県民の皆様、国民の皆様のニーズも変化してまいります。意識も変わってまいります。そういう中で、やはり県民福祉の向上という観点から、当該協定を結ぶのがいいのかどうか、どういう範囲で結ぶのがいいか、それを考えていくのが基本だと思っております。そういう意味では、いろんな変化の中で機動的な対応をしていく、それを考えますと、今私どもやらせていただいておりますように、関係各部局におきまして連携をとりながら、それぞれの立場からしっかりその協定の内容を分析あるいは調整をして、県民の福祉の向上に資する形、あるいは資するものかどうか、これについてしっかり検討していく、連携をして取り組んでいく、そういう形がいいと思っております。
 第二点、矢部川水系の水源対策でございますが、御承知のとおり、矢部川の水というのは、流域の農業水ばかりでなくて、水産業あるいは掘り割りの水を活用いたしました防火用水といった水資源としても活用されております。流域にとって極めて重要なものであります。この水系におきます対策につきましては、今後とも必要な水資源の確保に努めるとともに、矢部川の水の効果的な使い方を初めさまざまな方策につきまして、議員いろいろ御指摘もありましたが、さまざまな方策につきまして引き続き関係部局が連携をとりながら、費用対効果などを含めまして総合的に調査研究を続けていきたい、このように考えております。