「コロナで今日は何人感染者が出たとか、Facebookでわざわざ報告するの止めない?」と地元で飲食関係を営む先輩から言われたのは去年の5月だったか。テレビや新聞でもPCR陽性者数の増えた減ったで毎日大騒ぎしているのに、同じ情報をSNSで見ても気が滅入るだけ、もうちょっと前向きな発信をしてくれとのご意見でした。
確かに、県から頂く新型コロナの情報もよく見れば、見落としがちな一筋の光明のようなものが散りばめられています。その中で「福岡県内における新型コロナウイルス感染症陽性者の入院状況等について(1月24日分、写真ご参照)」気付いた事を書きたいと思います。
ぱっと見て分かりづらいのですが、この表は、陽性者数、退院者等、死亡者は累計の数字が上段に、下段の括弧書きが当日分の増加数を示しています。そして、入院または療養者、重症・中等症については上段が当日分の人数で、下段に括弧書きで前日との増減数が書いてあります。
これによると、1月24日は陽性者が224人でしたが、退院者は396人で、入院・療養者は174人減っています。
テレビを見てると毎日毎日陽性者が増えて、世の中に新型コロナが蔓延しているような気持ちになりますが、そういう訳ではないんですね。
もう一つ、「死亡者」が累計166名います。累積の陽性者数で死亡者数を割ると、新型コロナで陽性になった方の死亡率は約1.1%。全国では369,197人の陽性者に対し、死亡者が5,207人なので、1.4%になりますので、福岡県は全国的な傾向より死亡率はちょっとだけ低めだと分かります。
一昨日、英国のジョンソン首相が、新型コロナ変異種の死亡率が高いと発表した事が大々的なニュースになっていました。
英変異種、高い死亡率 1000人中13人―政府発表(時事通信 1月23日)https://www.jiji.com/jc/article?k=2021012300168&g=int
記事によると、往来型の新型コロナでは1000人の陽性者中10人程度が亡くなる(つまり死亡率1%)だったのが、変異種だと1000人の陽性者中13〜14人に増える(つまり死亡率1.3〜1.4%)との事でした。記事中には「死亡率が3割高い」と書いてあり、嘘では無いですが、読者によっては勘違いして「変異種の死亡率は30%以上あるのか?!」と恐怖に恐れおののく人もいるのでは?
しかしこれ、日本国内の新型コロナ死亡率でも地域によってその程度のばらつきがあるのに、たった0.3%の違いを新聞記事で大々的に取り上げる問題なのかな?と、誤差の範囲とも言えるのでは?と感じます。
数字は嘘を吐きませんが、数字は見せ方で人を欺く事が出来ます。
更に一つ、面白い発見がありました。
死亡者の項目に「うち標記感染症を死因とする者」という小項目があります。これは一体どういう事なのか確認したところ、「うち標記感染症を死因とする者」とは医者が「この方は新型コロナが死因で亡くなりました」と判断した方を指すそうです。
従い、福岡県の「新型コロナ陽性者の死亡者」は1月24日時点で166人ですが、「新型コロナを死因とした死亡者」は140人という事になります。
なんでこんな事になったかというと、実は昨年6月18日に厚生労働省は都道府県に事務連絡を行い、新型コロナ陽性患者が亡くなった場合は死因がなんであろうと全て「新型コロナの死亡者」として公表するように指導をしました。
2020年6月18日 厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルス感染症患者の急変及び死亡時の連絡について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000641629.pdf
ですから、それ以降は新型コロナ陽性者で亡くなった方は死因にかかわらず、新型コロナの統計上「死亡者」としてカウントされるようになったそうです。ただ、都道府県が独自に「その内、新型コロナが死因だった人は何人」と報告するのは可能なので、福岡県は「うち標記感染症を死因とする者」として新型コロナが死因となった死亡者を公表しています。
陽性者で死亡した総数が166名、うちコロナが死因の方は140人ですから、26人の方(全体の約15%)は新型コロナ以外の死因で亡くなったのですが、統計上新型コロナの死亡者として記載されています。こんな事を説明してくれるマスコミはいません。
統計の仕方次第で15%も死亡者数が変わるとするなら、前述したジョンソン英国首相が「新型コロナ変異種の死亡率が高い恐れ」と僅か0.3%の違いに警鐘を鳴らすこと、そしてそれをニュースにすることは正しいの?って気が益々してきます。
全国的な基準を決めずに、自治体毎に死亡者の定義が変わっていたりしては、新型コロナの実態は掴めませんので、厚労省の方針が悪いとは言いませんが、まだまだ実態が解明されていないウイルスについて、マスコミから流れてくる数字で極端に一喜一憂するのは精神的にもあまり好ましくないような気がします。そういう意味で、地元の先輩から昨年5月にご指摘頂いた事は正鵠を射たものでした。
正しく知って、正しく恐れる事が大切です。これからも前向きな情報発信に努めます。