平成25年度予算特別委員会質問「体罰のない環境における指導体制について」

◯板橋 聡委員 自民党県議団の板橋聡です。本日最後の質問です。皆さん、頑張りましょう。
 川端委員に続いて、体罰関連の質問です。私は、教育課程や学級活動、ホームルーム活動、学校行事などのいわゆる正課活動を前提に、体罰のない環境における指導体制について質問いたします。
 昨年末の大阪市立桜宮高校生の自殺から発生した体罰論争、体罰を受けた生徒あるいは体罰を与える教師、これらの視点から語られていることが多いのですが、私は、本当に守られるべきものは何なのかという視点が決定的に欠けていると思います。一部の問題行動を起こす生徒により、学級崩壊を初めとする秩序が保たれていない学校があると聞きます。今回の体罰問題により、教師は指導方法に戸惑う一方で、問題生徒は教師を軽んじ、中には挑発する者もおり、さらに環境は悪化しているとの報道もあります。そんな環境の中、体罰是非の論争に明け暮れるのではなく、本当に守られるべきは、学校に真面目に通い、学力と人間性の向上を目指す大多数の生徒たちではないでしょうか。
 そこで質問です。県教育委員会は、一部の問題行動を起こす生徒の指導に多くのエネルギーを費やすことが重要なのか、それとも、問題行動を起こす生徒により学校の秩序が崩壊し、教育を受ける権利を阻害される子供を守らなければならないのか、どちらを優先されるべきと考えますか。杉光教育長の簡潔、明快な回答を求めます。
    〔正副委員長交代〕

◯原口剣生委員長 杉光教育長。

◯杉光教育長 先ほど委員がおっしゃったように、問題行動を繰り返す児童生徒の立ち直りや自立に向けた指導は必要ではございますが、一部の児童生徒の問題行動によりまして、他の児童生徒の授業を受ける権利が妨げられるということは、あってはならないと考えております。

◯板橋 聡委員 もう一点。生徒たちは一人一人に個性はありますけれども、指導者である教師を頂点として、さまざまな個性が結びつき、調和を保った状態こそ、秩序が維持された学校と私は認識しておりますが、杉光教育長、この認識を共有していただけますでしょうか。

◯杉光教育長 そういうことに関しては、委員がおっしゃるとおりで、私も同感でございます。

◯板橋 聡委員 教育長の回答を大前提に、質問を進めさせていただきます。
 体罰論争以降、学校教育法を私は確認しましたけれども、学校の秩序を保つために体罰を振るうことは、これは学校教育法のどこをどう読んでも不可能だということを認識しました。私立学校なら、繰り返しの指導で改善の見込みのない生徒は退学ということになります。公立学校はそれはできません。昔はパチンとやっていましたけれども、それもできません。その結果、教師は問題生徒の指導に追われ、私立と公立の教育格差が生まれかねない。公立学校の先生はどうやって一部の問題行動を繰り返す生徒を指導すればよいのでしょうか。
 ここで資料要求に従い、問題行動に対する指導基準の提出をお願いいたします。

◯原口剣生委員長 お諮りいたします。
 ただいま板橋委員から要求のありました資料を委員会資料として要求することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者がある〕

◯原口剣生委員長 御異議ありませんので、本委員会の要求資料といたします。
 執行部に申し上げます。ただいま板橋委員から要求のありました資料について提出できますか。家宇治義務教育課長。

◯家宇治教育庁義務教育課長 直ちに提出いたします。

◯原口剣生委員長 正副委員長に確認をさせてください。
    〔資料確認〕

◯原口剣生委員長 それでは、資料の配付をお願いします。
    〔資料配付〕

◯原口剣生委員長 資料が配付されましたので、板橋委員、質疑を行ってください。

◯板橋 聡委員 では、資料に基づいて、問題行動を起こす生徒の指導方法について説明をお願いいたします。

◯家宇治教育庁義務教育課長 お手元の資料は、問題行動への対応における指導基準の例でございます。県による明確な基準を出しているわけではございませんが、おおむねこのような基準、もっと細部にわたる基準を持っている学校もございますが、ここに示しております基準に基づきながら問題行動の状況に応じて指導の基準を明確化して、全教職員の共通理解のもと、一貫した指導を行っているという状況でございます。
 具体的には、問題行動のレベルによって、レベル一、学級担任・学年教師による指導。レベル二が、学年主任あるいは生徒指導主事による指導でございます。レベル三が、校長等管理職による訓戒等を段階を追って行うということでございまして、このような指導によってもなお改善が見られない児童生徒の中で、他の児童生徒の教育に妨げがあるという場合には、学級から取り出して別室で指導するという対応を行っておるところでございます。さらに市町村教育委員会において、学校が継続的に指導してもなお改善が見られず問題行動を繰り返す場合は、その保護者に対して出席停止の措置をとる等の対応を行っております。

◯板橋 聡委員 つまり、問題行動には、この資料のように対応を行い、それでも改善しない場合は取り出し指導、それでもだめなら市町村教育委員会の判断を仰いで出席停止になるという認識ですけれども、つまり、学校現場の判断で行える最後の指導方法というのは、取り出し指導という理解でよろしいでしょうか。

◯家宇治教育庁義務教育課長 他の生徒に被害が及ばないということを考えますならば、それが最後の手段だと考えております。

◯板橋 聡委員 ここで一つ心配なことは、取り出し指導とか出席停止の措置を行う場合、その問題を起こした生徒に対して補習授業を行わなければならないと聞いていますが、これは本当でしょうか。

◯家宇治教育庁義務教育課長 問題行動を繰り返す児童生徒につきましても、やはり学習権を保障するということは重要なことでございますので、通常の学級と同じような形で授業を行うことになるということでございます。

◯板橋 聡委員 教育権は大事だと思います。それは私も認めますが、学校が週六日制のころは、土曜日の午後、先生同士で指導力向上のために勉強会をしたり、あるいは授業の準備をしたり、本来あるべき教師の資質向上を図っていたそうです。しかし、週五日制の今はそれもできにくい。その上、昨今は、いじめ、自殺、体罰と、何か事件があればアンケートが降ってくる。モンスターペアレンツとまでは言いませんが、少子化の影響で親御さんの要求も反比例的に高まっております。発達障害児や食物アレルギーなど、個々の子供の状況に応じた対応、本当に現場の先生方はぎりぎりの状況で職務を行っています。その中で、学校秩序を守るために取り出し指導を行うと、さらに自分の首を絞めるような補習授業が課せられる。そんな現状では学校の秩序維持、あと教師の資質向上、この二つを両立させるために、取り出し指導に対して人的な支援が不可欠と考えますが、教育委員会としての見解をお尋ねします。

◯家宇治教育庁義務教育課長 学校におきましては、問題行動を繰り返す児童生徒の対応といたしまして、関係教員の負担が重くならないという形で、また関係職員が孤立することがないということで、生徒指導担当教員を中心に、学年主任や学級担任などでチームを組みまして、組織的に対応するようにしておるところでございます。取り出し指導や出席停止を行った場合におきましても、学習の支援や生活指導などを行う必要がございまして、生徒指導の充実のために配置しております教員が中心に対応を行うこととしております。状況に応じまして、学校の職員が分担して指導に当たるなどの取り組みを行っているという状況でございます。
 県教育委員会といたしましては、取り出し指導に十分に対応できない場合には、指導主事あるいは教育事務所に配置しておりますスクールカウンセラー、これらの活用等、市町村教育委員会や学校をバックアップできるような措置を行うように検討しているところでございます。

◯板橋 聡委員 現在取り組まれていることはよく理解しました。しかし、体罰はだめだということが法律上も社会的にも明確になった以上、問題行動を繰り返す生徒に対する指導体制なりシステムを新たに構築しない限り、つまり、既存の体制で人と時間のやりくりをしている限りは、現場の教師あるいは学校への負担はふえる一方なんです。ぜひ、ここは現場任せにせずに、県教育委員会として責任を持って、体罰によらない新しい指導体制の整備を行うべきと考えますが、教育委員会の考えをお聞かせください。

◯家宇治教育庁義務教育課長 体罰によらない指導体制の確立につきましては、問題行動を繰り返す児童生徒への対応についての指導システムを確立するということだろうと考えております。そこで、まずは各学校での対応状況の把握を行うことが必要と考えておりまして、問題行動を繰り返す児童生徒の措置に関する学校の対応状況を把握しまして、対応上の課題を明確にしたいと思っているところでございます。その課題をもとに、市町村教育委員会に対する報告、あるいは問題行動を繰り返す児童生徒に対する指導のマニュアル、あるいは取り出し指導や出席停止措置に関します市町村教育委員会、あるいは県の学校への支援等について検討を行って、早急に各学校に示したいと考えているところでございます。

◯板橋 聡委員 これは喫緊の課題でございますので、ぜひ早急にお願いいたします。
 最後に、某中学校において、悪ふざけをしたある生徒に厳しい叱責が行われました。叱責した教師と叱責を受けた生徒・保護者の間には確かな信頼関係がありまして、それを教育の一環として何の問題もなく受けとめていたんですけれども、それをたまたま目にした第三者が、体罰が行われていると学校サイドに通報して、結局その教師は処分されたという事案を聞きました。
 以前は大らかな時代は、先ほど当会派の大島議員から聞いたんですけれども、「ずっと先生が頭を殴りよると痛かやろう」ということで、大島議員のお父さんは学校の先生に竹刀を渡していたそうなんですが、それぐらいの大らかな時代があったんですが、今はもう全くそういうのを聞かない、あるいは第三者からそういったことを言われてしまうということになります。外部から指摘された、だから処分する、こういう事なかれ主義では、教師が愛情と責任感を持って生徒を我が子のように指導するよりも、問題生徒を受け持たない、あるいは問題生徒を見て見ぬふりをする、そのほうが得だと、こんな流した汗が報われない教育現場をつくってはならないと思います。
 冒頭の教育長の答弁で、県教育委員会は生徒の教育を受ける権利を守ることが最優先であるとの思いを共有させていただきました。そのためには、現場の努力をきちんと把握して、場合によっては県教育委員会が矢面に立って、現場をしっかり守ることも必要です。それこそが、教師、学校、市町村教育委員会、そして県教育委員会が一体となって、流した汗が報われる教育体制をつくることだと思いますが、最後に杉光教育長の決意を簡潔にお聞かせください。

◯杉光教育長 体罰によらない厳しい指導は、当該児童生徒にその非を自覚させ、成長を促す上でも必要であると考えております。先ほど事例として紹介がありました、第三者から体罰と見て通報されるといった事案につきましては、当該児童生徒や担任から事情を聴取して、事実関係を正確に把握した上で判断してまいる考えでございます。県教育委員会としましては、教育委員会と学校、さらには教員が一体となって、学校や教員一人一人が自信と責任を持って、毅然とした指導が粘り強く行えますよう、しっかりとした体制整備に努めてまいる所存でございます。

◯板橋 聡委員 答弁はいいです。あとは実行あるのみ。いつやるの。今でしょう。この精神でしっかりお願いします。
 以上、終わります。(拍手)