TPP亡国論の中野剛志京大准教授講演

私は県南農政議員連盟に所属しているのですが、そのご縁で県南農政対話集会に参加しました。メインゲストは「TPP亡国論」の著者である中野剛志京都大学准教授。演題は「TPP問題の本質とその対応について」でした。
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TPP亡国論は読了しておりましたが、大変示唆に富んだ内容でしたので、自分の頭の整理ついでに要旨をまとめておきます。

    ●2000年代の世界経済やアジアの成長は欧米の過剰消費(特に米国の住宅バブル)に依存していた。2008年の世界金融危機(所謂リーマンショック)により米国依存のグローバルな経済成長は持続不可能。
    ●そもそも日本が「東アジアの成長を取り込む」というのは幻想で、東アジアの成長は米国への輸出によって活況を呈していただけ。
    ●2006年の主要国・地域間の貿易額(下写真内のスライドご参照)を見れば分かるとおり、一方的に輸入・輸出する国が存在していた(輸入=欧米、輸出=日本・東アジア)

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    ●東アジアの成長=欧米の成長
    ●グローバル化=アメリカ住宅バブルの産物
    ●今後米国自らが輸出によって国内景気の持ち直しを目指す中で、日本は「グローバル化によって東アジアの成長を取り込む」などという幻想をもっていては駄目。
    ●日本は輸出立国ではない。GDPに占める輸出比率は僅か10%程度。TPP交渉参加国の中ではアメリカに次ぐ内需大国。つまりTPPにおいて日本は格好の標的。
    ●米国の主要品目の関税は既にかなり低い(乗用車2.5%、テレビ5%等々)
    ●つまり日本の輸出を成長させるのに「関税」の調整は無意味。関税より為替が重要。菅前総理がTPPの話を持ち出した頃より現在は為替が5%近く円高になっている。つまり関税5%分のメリットは既に無くなっている。
    ●一方、農業には関税が絶対に必要。農業を守りたい日本 VS 製造業を守りたい米国、という構図の中でTPPは日本にとって絶対に不利。

投資家と国の紛争解決手続き(ISD)は大変危険:

    ●審理の観点は投資家への経済的被害の有無のみ、政策の社会的な正当性(公共の福祉)は考慮されない
    ●非公開かつ判例に拘束されないので不透明・不確実
    ●上訴できない
    ●既にカナダ・メキシコ・オーストラリア等で問題続出。

グローバル化における憲法と民主政治の問題点:

    ●憲法第73条第2号に「外交関係の処理」は内閣の専権事項と明記。つまり交渉参加表明に国会の承認は必要とされない。
    ●TPPの国会承認は予算同様衆議院優先
    ●例えばJA共済を廃止するとなると普通は衆参議会の賛成が必要となるような大問題だが、TPPのような条約により非関税障壁の撤廃で共済を潰す場合は議会の承認が不要となる
    ●国民の議論無視で条約に縛られて国内制度が改廃される危険性

ここにはとても書けませんが、フジテレビ系「とくダネ!」でTPP推進論者をぶった切った中野節を更にぶっちゃけたようなシニカルなトークも交えながら淡々と熱く講演をして頂きました。TPPについてはもちろんですが、ポイントは今後日本の成長を外需頼みにするのは構造上成り立たないという事を痛切に感じました。しかし今後人口減が進む中、内需に頼れるのか?これからの国の成長とは一体なんぞや?今までの常識や学説をベースに議論しても意味を成さないような気がします。地方分権や社会保障などの議論が矮小に思えるほど、過去経験したことのない難題を我々は突きつけられています。行政・政治の場にいるもの全てが頭を切り換える必要がありそうです。維新の会が昨今持て囃されていますが、彼らの「船中八策」にこういう視点が盛り込まれているのでしょうか?大変気になるところです。

中野先生のとくダネ!の映像があったのでリンクしておきます。ご興味の有る方、どうぞ。

111027 とくダネ!TPP 中野剛志 投稿者 plutoatom