令和元年9月議会一般質問「豪雨災害対策について」

録画中継録画にて知事答弁を含め視聴する事が可能です ⇒板橋聡の議会質問録画中継

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質問要旨 一、豪雨災害対策について
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◯四十三番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自民党県議団の板橋聡です。通告に従いまして、豪雨災害対策について質問いたします。
 本議会の代表質問において、各会派より、本年七月と八月に立て続けに発生した大雨災害に関連する質問がなされました。その直後、九月二十三日には福岡市博多区で三十四メートル毎秒、久留米市で三十二・四メートル毎秒、糸島市で三十一・八メートル毎秒など、それぞれ観測史上最大の瞬間風速を記録した台風十七号により、今度は強風被害が県下各地で発生しました。一連の災害により、とりわけ施設園芸が盛んな私の地元県南地域でも多くの被害状況が寄せられていることを踏まえ、以下、質問をさせていただきます。
 まず、農業分野の油の流出対策について伺います。昨年、一昨年に続き、本年も七月から八月にかけて、大雨により道路や河川、民家、農地、農業用施設等において被害が発生しました。今議会の我が自民党県議団の代表質問においても、災害復旧にかかわる支援についてただしたところです。今回の一連の豪雨災害では、多くの農作物にも被害が発生しております。特に、八月二十七日から降り続き、本県や佐賀県、長崎県など九州北部を中心とした記録的な大雨では、水稲、大豆や施設野菜などの冠水被害が広範囲において発生しました。
 私の地元は、生産高が県内一位であるナスなどの施設園芸が盛んな地域です。トマトやナスなどの施設園芸では、重油を使用した加温機により冬場の育成温度を確保しており、ハウス施設には加温機に重油を供給するためのタンクを併設しております。しかしながら、八月の大雨により、作物の冠水被害などに加えて、冠水がひどい場所においては、重油タンクや加温機が転倒したという被害報告を受けております。
 一般的に梅雨時期等の大雨が発生しやすい時期は、気温が高く加温をしないため、タンクの中に重油が満タンに入っていることは少ないかもしれませんが、もし、加温をしている冬場に大雨が降ったり、梅雨時期に重油をタンクから抜いていない場合には、重油が流出してしまい、周囲の農作物に対して被害を与えることも想定されます。重油が一旦流出すると、除去のために多大な労力が必要となることに加え、農作物の風評被害にまで及ぶことは、佐賀県の事例を見ても明らかであり、まずは流出させないための事前の対策が必要と考えます。
 そこで知事に質問です。本県では収益性の高い施設園芸に力を入れていますが、現在、重油を使用した加温施設の面積が県内にどれぐらいあり、豪雨災害時における重油の流出防止対策についてどのような指導を行っているのでしょうか、お示しください。
 八月の大雨により、油の流出被害が発生した佐賀県の鉄工所では、石油系の油を冷却用に使用しており、工場内では地下に複数ある油槽にふたがないため、油槽内の油が浸水により外に流れ出たとのことです。推定で五万キロリットルも流出した油は、周辺で栽培していた水稲や野菜などの農作物に付着、その農作物は全て廃棄処分になる上に、風評被害により、その後の販売にも影響してくるのではないかと心配する向きもあります。油の流出による被害は、直接的な冠水被害はもちろんですが、生産者の営農意欲の低下を招くおそれもあり、さらに作物だけでなく、土壌の検査なども必要となってきます。本県では生産者や農業団体と一体となり、これまで、あまおうを初めとして八女茶や元気つくしなど多くのブランド農産物を育成してきましたが、一たび大規模な油の流出が発生すれば、これまでの取り組みが水泡に帰すことになりかねず、決して許されることではありません。近年、予期せぬタイミングで予想を超える豪雨災害が発生している状況の中では、佐賀県の事例を他山の石として、重油を利用する施設園芸が盛んな我が県においても、迅速かつ十分な事後対策を検討しておく必要があるのではないでしょうか。
 そこで知事に質問します。もし本県でも農地に大量の油が流出し、農作物に対する被害が発生した場合、被災農家に対してどのような対策を行うのか、知事の所見をお示しください。
 次に、災害に強い園芸産地づくりについて伺います。八月の大雨や先日の台風十七号で多くの農業施設の被害が報告されており、県においては速やかな復旧支援をお願いするところです。一方で、これまでも大雨や台風などの災害時には、ハウス施設や加温機などが冠水や倒壊により壊れ、農家経営に大きな支障を来しました。県においては、そのたびに被災農業者に対して支援策を実施していただいていますが、十年に一度、五十年に一度と表現されるような気象災害が毎年のように発生する状況を鑑みれば、施設や機械も原状復旧するだけでは同じことの繰り返しになりかねず、対症療法ではなく抜本的な対策も検討すべきと考えます。
 そこで知事に質問します。まず、今月の観測史上最大の瞬間風速を記録した台風十七号で大きな被害を受けたハウス施設の迅速な復旧について、県としてのお考えをお示しください。
 その上で、今後は大雨や台風などに備えてできるだけ災害を回避する、あるいは軽減するような施設整備や機械の導入を進めることが重要であると考えますが、県ではどのような取り組みを行っていただくのでしょうか。短期間に繰り返し被災した農家の皆様の悲痛な叫びが多く届けられている中、知事の御所見をお聞かせください。
 最後に、私は、平成二十四年九月議会の一般質問において、平成二十四年七月九州北部豪雨により、みやま市の指定避難所となっている上庄小学校と下庄小学校が冠水し、避難所として機能しなかったことを踏まえ、県下の指定避難所に関して、冠水等により孤立する可能性のある避難所の状況及び県の取り組みについて質問をいたしました。その際、知事は、県下全ての指定避難所について、安全性の確保や避難する際の距離、代替施設への避難誘導の有無などの視点で点検を行い、その結果を踏まえて、市町村による避難マップの見直しや避難マニュアルの策定、これらに基づく避難訓練を支援していきたいと答弁をされました。
 それから七年たった令和元年八月末の大雨の際、先ほどの質問で言及した小学校の前の道路が冠水しました。まさかと思い、市に改めて確認したところ、引き続きその小学校は指定避難所になっており、自主避難された方とのトラブルも発生したと耳にしております。周りが冠水して孤立しても、校舎の二階や三階に避難することで命を守ることはできるという考え方もあります。それは理解いたしますけれども、一方で冠水した避難路を使って避難所へ向かう場合、用水路や田んぼなどに転落すれば命を落とす危険があることを指摘をしておきます。
 そこで知事に質問です。前回の質問から七年経過しましたが、平成二十四年時点で指定避難所の安全性が確保されていない避難所は何カ所あったのでしょうか。そのうち、現在までに何らかの対応を行った避難所は何カ所あるのでしょうか。そして、現在も豪雨の際には避難路が冠水し、避難所として機能しなくなる可能性が高い施設がありますが、今後、市町村をどのように指導していくのか、知事の御所見を御披瀝ください。
 以上、知事の真摯な答弁を期待して質問を終わります。(拍手)
30◯議長(栗原 渉君) 小川知事。
*知事答弁
31◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、園芸農業における重油の流出防止対策でございます。県におきましては、これまで収益性の高い園芸農業を実現していくため、加温施設などの整備について支援をしてまいりました結果、本県における重油を使用した加温施設の面積は約九百八十ヘクタールと、熊本県、宮崎県に次いで全国で三番目の規模となっております。重油タンクの設置に当たりましては、火災予防条例の規定に基づきまして、流出防止のための囲いを設置し、その中に重油タンクをしっかり固定していることなど、これらについて農家からの届け出を受けまして、各消防署において現地を確認をいたしております。また、国や県の補助事業で設置をしております加温施設につきましては、私どもの農林事務所も現地で確認をしております。さらに県におきましては、台風、大雨などの災害が近づいている場合には、重油タンクの元栓をしっかり閉めること、タンクの固定を点検することについて農家への指導を行っているところでございます。
 農地に油が流出した場合の対応についてお尋ねがございました。本県におきましては、近年の豪雨災害において佐賀県のような大量の油の流出による農産物の被害、これは発生いたしておりません。県におきましては、少量の油が流出した場合には、被害状況によりまして表土の排出、石灰資材の散布による土壌の油分の分解を早める技術指導を実施してまいりました。また、農産物の減収につきましては、農業共済団体に対しまして、損害評価の迅速かつ適切な実施、そして共済金の早期支払いというものを要請することといたしております。さらに、今回、佐賀県におきまして、国の災害復旧事業を活用して農地の油の除去ができるようになっておりますことを踏まえ、本県において大量の油の流出による農産物の被害が仮に発生した場合には、農家が営農継続の意欲を失われないように、被害状況に応じて国への要請を含め、対応を検討させていただきます。
 次に、今回の台風被害への対応でございます。県におきましては、現在、今回の台風の被害の実態把握に努めているところでございます。今後、被災された農家が、先ほども言いましたように、営農継続の意欲を失われないように、被災の状況に応じ、必要な支援策を検討してまいります。
 その上で、これから先の災害に備えた取り組みでございますが、近年、台風や大雨による被害がふえておりますため、平成二十七年度に国が創設しました産地パワーアップ事業を活用して、強風にも耐えるハウスの整備を進めております。また、県単独の高収益型園芸事業におきましては、施設の長寿命化対策に取り組み、既存ハウスの改修、補強についても支援をしているところであります。さらに、ことしの七月、八月と大雨による冠水被害が相次いでおりますことから、災害回避のためのハウスの浸水防止壁、これに加えまして、今回新たに排水ポンプの整備について支援をすることといたしております。こうした措置によりまして、災害に強い園芸産地づくり、これを進め、農業経営の安定を図ってまいります。
 次に、指定避難所の安全の確保でございます。県は、平成二十四年九州北部豪雨を踏まえまして、平成二十五年一月、風水害時における避難所の安全性を検証するため、避難所の安全性の確保に関する点検マニュアルを作成いたしました。このマニュアルに基づき、各市町村がそれぞれの避難所の立地や避難経路の安全性などを点検をいたしました。その結果、県内の避難所三千七十カ所ございますが、そのうち浸水想定区域に所在をしたり、避難路が浸水する等何らかの対応が必要な避難所は、五十七市町村、一千百二十六カ所という状況でございました。本県といたしましては、これらの市町村に対しまして、その点検結果を踏まえ、以下の観点から、その見直しについて指導をしてきたところであります。浸水や土砂災害の危険性のある区域に所在している避難所は、可能な限り別の避難所を指定すること、やむを得ず浸水のおそれがある避難所を使用する場合には、二階以上への垂直避難を徹底すること、避難所までの避難路が冠水する可能性がある場合は、早期避難の徹底や代替路の確保を行うこと、これらでございます。その結果、対応が行われましたのは、五十四市町村、一千七十八カ所でございます。現在まで対応が行われていない避難所は、十三市町村、四十八カ所でございまして、そのうち一カ所については、砂防ダムの建設が予定されております。残された四十七カ所につきましては、所管する市町村によりますと、代替できる避難所がないため、やむを得ず使用しているということでございます。今後は、市町村に対し、早期避難を行うことによりまして、危険性のない避難所を使用するよう指導してまいります。その際、隣接の市町村に対し、避難者の受け入れを要請する必要があれば、県として広域的な調整を行ってまいります。
 また、ことしの八月の豪雨時に避難路が浸水した事例についてお尋ねがございました。みやま市に確認をさせていただきましたところ、御指摘の避難所は、早期避難を行うこととしておりましたが、内水氾濫により、避難が完了する前に避難路が冠水したものであるということであります。今回の事例に鑑みまして、今後、各市町村に対し、やむを得ず浸水のおそれのある避難所を使用する場合には、内水氾濫前の早期避難、それから冠水状況についての情報の提供、安全な他の避難場所への誘導など、改めて促してまいります。