【福岡県ーインド・デリー準州友好提携10周年視察】

福岡県は6つの地域(米国・ハワイ州、中国・江蘇省、タイ・バンコク都、ベトナム・ハノイ市、韓国・南岸の一市三道、インド・デリー準州)と友好提携をしていますが、今年はインド・デリー準州と友好提携10周年となり、盟約の更新を行う記念式典の為に1月15日から19日にかけて小川知事はじめとした執行部と、樋口議長を筆頭とした議会訪問団にてデリー準州を視察して参りました。
備忘録代わりに記しておきます。

インドは中国につぐ12億1千万人(2011国勢調査)の人口をもつ国です。2007年に福岡県は首都であるデリー準州と、自動車産業やIT等の振興を目的に友好姉妹都市となりました。

その後、福岡県内において「インドフェア」デリー準州内において「福岡フェア」を交互に行い相互交流の気運を高めたり、環境分野での交流や、デリーの私立学校の生徒を毎年福岡にホームスティに招き青少年分野の交流を深めるなど事業を継続的に行い、2012年の5周年の盟約更新を経て、今回10周年の盟約更新となりました。

尚、デリー準州が友好提携を結んでいるのは日本では福岡県のみ。福岡以外ではモスクワ、シカゴ、ウランバートル(モンゴル)、メルボルン、ロンドン、エレバン(アルメニア)、北京など錚々たる大都市が並びます。

○ デリー福岡県人会との交流会
デリー準州では福岡出身や縁のある企業駐在員などを中心に構成される「デリー福岡県人会」が2009年に設立され、現在は50名の会員を擁する。現在の会長は、JICAの所長でもある坂本威午様ですが、インドやデリーに造詣が深いだけでなく、インドそのものに対して溢れんばかりの深い愛情をお持ちの方でした。インドで日本人ビジネスマンが生き抜くには必要なものが3つあると熱く持論を述べられ、それは「語学、コミュニケーション能力、面の皮」との事。思わず膝を打ちました。

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安倍総理とインド・モディ首相との深い友好関係に基づき、近年日印関係は非常に良好で、今後の発展にも大変明るい見通しをお持ちでした。とは言え、インドはなかなか独特の文化があり、我々も友好関係の進化には苦労が伴うところです。是非、福岡県とデリー準州との懸け橋にデリー福岡県人会の皆様にはなって頂ける事を心より期待しております。

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また偶然にもみやま市ご出身の会員の方にも遭遇。大手ゼネコンご勤務で30年近く色んな海外を飛び回っているそうで、みやま市は大都市ではありませんが世界を股に掛けて活躍されている方がいらっしゃることに感激しました。

○ デリー準州主将表敬訪問
小川知事と樋口明議長をはじめとする訪問団にてデリー準州のアルビンド・ケジリワル首相を表敬訪問。

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ケジリワル首相の発言要旨「1980年代から日本とは主に自動車産業とその他の分野で協力をしてきた。その中でも福岡との関係は特に大事。デリー準州と福岡県は友好協定が2007年からあり、2012年に更新している。次は3年後の更新になる。一緒に組める点を更に探していきたい。環境、大気汚染、衛生などの分野で協力したい。観光でも新たな協力をしたい。スキル開発を含む大学など教育機関の交流も目指したい。デリーメトロは日本の協力でインドに無くてはならない交通機関になった。その他運送分野でも協力を模索したい。ニッチな半導体・IT・環境技術でも協力を求めていきたい。」

樋口議長の発言要旨「福岡県とデリー準州の友好提携は現時点では行政サイドのみの提携となっている。インド側の事情も色々あると思うが議会同士も友好関係を結びたいと思っている。福岡は様々な世界遺産や民芸品などリッチな文化があり、それを保護するノウハウも豊富である。デリー準州にも多種多様でリッチな文化が存在するが、文化財保護などの観点で福岡も協力出来るところがあるのではないか。」

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小川知事の発言要旨「環境については行政の政策と民間の行動が大事。若い世代が環境の大切さを理解してもうらう事が極めて重要。その点で福岡県とデリー準州の友好提携から始まった、デリー準州のプライベートスクールにおけるエコクラブの活動は高く評価している。」

ケジリワル首相はたっぷり1時間ほど同席されていましたが、公務多忙な首相が1つの会合にこれだけ時間を割くことは珍しいらしく、それだけ福岡県との友好提携に強い期待を持っている現れだと感じました。

○ 在インド日本国大使館大使公邸訪問
平松駐インド日本国特命全権大使の公邸を訪問し、ケジリワル首相との面談の報告や、友好提携10周年記念式典の報告をさせて頂きました。平松特命全権大使には友好提携盟約更新の見届け人も務めて頂きます。

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また政務公使などにご同席頂きインド情勢と日印関係についてブリーフィング。

モディ政権は2014年の発足から3年半経ったが依然として高い政府への支持・期待を集め、2022年までに「新しいインド」の達成を目指している。与党である国民民主連合(NDA)は下院議員にて2/3の議席を占めるが、上院では過半数を割って捻れている。またデリー準州のケジリワル首相は庶民党(AAP)で、その点でインド政府との力関係は微妙な点が有、これは今後の視察の中でジワジワと実感するところでもありました。

一方モディ政権発足後、インド経済は7−8%の実質GDP成長率を維持しており好調。更に政治のリーダーシップの下、経済改革も着実に積み重ねており、特に高額紙幣を廃止してブラックマネー対策を取ったり、デジタル決済を促進させたり、各州で異なる間接税体系を一元化したり、破産法の制定をするなど、一時的に経済に悪影響があったとしても大局に立った改革を行い実績を残している。

日印関係は安倍総理、モディ首相の関係の良さを反映し蜜月。日本にとってトップが毎年相互交流をしているのはインドだけ。インドにとってもトップの毎年の相互交流はロシアと日本だけ。対インド直接投資は、シンガポールやモーリシャスを除けば日本の投資額は世界一。インド進出日系企業も順調に伸びてきているが(2006年267社→2016年1305社)、大手企業は大体進出してきたので今後倍増させるには中小企業の進出が肝。インドは最大の円借款受取国で、2016年度の円借款供与額は3713億円で前年度に引き続き過去最高を更新。一方で人の交流として日本人のインド訪問者は2015年で約21万人と対中国(2015年で約250万人)の1/10。もっと人的交流を増やしたい。

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公邸には1960年に天皇皇后両陛下が皇太子皇太子妃としてインドを訪れた際に植樹された菩提樹が立派に育っており、今の日印の友好関係を想起させるようでした。

○ デリー準州エコクラブ生徒の環境活動視察
エコクラブとはデリー準州の公立中・高校、私立学校に設置され11歳ー17歳の学生が所属する環境問題に取り組むクラブです。福岡とデリー準州の青少年交流でも中核的な役割を果たし、過去視察団を福岡県に派遣してホームステイや県内高校生との交流などを行っています。

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今回はP.K.Puram私立学校を訪問しエコクラブの皆さんの取組を視察させて頂きました。エコをテーマにしたダンスや、ミュージカルもあったりインドらしさを感じました。

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最後に生徒さんと植樹。一緒に植えた生徒さんが「私がお世話係をします」と言ってくれました。次伺ったときに立派に育ってくれていることを期待しています!

○ 友好提携10周年記念式典・レセプション
ケジリワル デリー準州首相やインド政府の皆様をお招きし、平松駐インド日本国特命全権大使の見届けによって福岡県とデリー準州の友好提携の盟約更新が行われました。

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多くのテレビカメラやマスコミ関係者も取材に来ており、現地でも様々なメディアに取り上げて貰っていたようです。また日本からはNHKが取材に来ており、全国版で報道されたというお話しを聞きました。

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○ 大気環境セミナー
友好提携10周年を記念して、今回重点提携分野となった環境についてのセミナーを福岡県が開催。開会式に参加しました。

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過去、福岡県が実施する国際環境人材育成研修にデリー準州の環境行政官が2006年から連続して参加されたり、県の環境施策、水質保全、廃棄物処理をテーマにデリー準州にて環境セミナーを行ったり、デリー準州環境局長をお迎えして福岡県の環境関係の施設を視察頂いたりしております。

デリーはPM2.5の濃度が999μg/m3を超える(福岡市の基準では35μg/m3で注意喚起!)ような猛烈な大気汚染が起こっております。私の滞在中でもみるみるうちに空気が淀み、まるでキリがかかったかのような状態になりました。今後、是非福岡の環境政策などによりデリーの大気汚染対策が進むことを願っています。

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↑冗談抜きに、PM2.5の濃度が高いときはこんな感じで霧がかかったようになります。

○ デリー準州議会議長表敬訪問
デリー準州議会を訪問。Ram Niwa Goel議長をはじめとする議員の皆様と意見交換をさせて頂きました。

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デリーの州議会は例年7月、12月、3月(予算議会)の3回開催されておりますが、今年は12月議会の開催が遅れたので丁度我々が訪問したときに議会が開催されていました。

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福岡県と大きく違うのは、州議会議員が行政側の長に任命され執行部の役割を果たす議員内閣制的な運用がされているそうです(福岡県では知事と議員をそれぞれ選ぶ二元代表制)。ですから与党と野党の対立が激しいとの事。

また、インド政府の意向が大変重く。州首相とは別にインド政府が任命する知事のような立場の方がおり、州政府として政策を州議会に提案し可決したとしても、インド政府が任命した知事の承認を経なければ成立しないとの事。前述しましたが、インドのモディ首相とデリー準州のケジリワル首相は党派が違う為、そこら辺の軋轢も結構あるように感じました。今回、デリー準州と福岡県の友好提携の更新期間が5年から3年と短くなったのも、インド政府の指導の為だそうです。

○ 独立行政法人国際協力機構(JICA)インド事務所・ODA事業視察
福岡県人会の会長も務める坂本威午JICAインド事務所長からインドにおけるJICAの役割などをご説明頂きました。

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坂本所長のお話で印象的だったところ:
デリーと福岡の持続的な交流は産業界を巻き込む。足長おじさんではなく、交流がお互い得るものがあるようにしなくてはならない。タイ・ベトナムならば日本企業が進出して2−3年で黒字転換する可能性は十分有るが、インドは低い。逆に10年単位でみるとインドでは圧倒的に黒字となって存続している可能性が高い。なぜならインドで確固たる信頼関係を得るには2-3年では難しく事業もなかなか軌道に乗らない。しかし一度信頼関係を築き胸元に飛び込めば、ちょっとやそっとでそれは揺るがず大きな成功を得る可能性が高い。
JICAの支援メニューとしては「技術協力」「有償資金協力」「無償資金協力」の三本柱と、それに続いて昨今は「市民参加協力」として青年海外協力隊派遣や民間企業の社員を派遣する民間連携事業などが重要事項として上がってきている。

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また、日印パートナーシップの最高の成功事例と言われる、ODA事業にて完成したデリーメトロを視察させて頂きました。

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日本のODAがインフラや技術だけで無く、その精神性までも深く変えていったというお話しを熱く熱く、たまに笑いを交えながら語られる坂本所長。まるで「世界で一番受けたい授業」を聞いているようでした。視察途中で立ち寄った「オールド・デリー」も衝撃的。最先端のデリーメトロとインドらしいインド「オールドデリー」を股に掛けた、非常にインパクトが強い今回の視察のクライマックスでした。

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○ JETROニューデリー事務所長との意見交換
仲條JETROニューデリー事務所長にインドの最新政治経済と日系企業動向についてご説明を頂きました。
政治経済状況などは重複する部分もありますので割愛しますが、インドの魅力として(1)人口構成「青年の国」(2)所得水準の向上(3)消費の多様化が始まる、などを上げられ今後の飛躍が期待出来ることをお話し頂きました。

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そんな中、福岡県としても時差活用ビジネス(例えば24時間対応のコールセンターなど)のチャンスを検討してはどうかという話が議員間でも上がりました。

海外視察はどうしてもレポートが長くなりますが、これも今後の活動に必ず活きてくると信じて纏めてみました。
最後までお目通し頂いた方、ありがとうございます!