【総務企画地域振興委員会 管外視察 徳島県・奈良県】

私が委員長を務める総務企画地域振興委員会にて2月6〜8日にかけて徳島県神山町の神山プロジェクト、徳島県庁の消費者庁誘致、大塚国際美術館、奈良国立博物館の取り組みについて視察をして参りました。備忘録代わりに纏めておきます

○ 徳島県神山町NPO法人グリーンバレー 「神山プロジェクトについて」
昨年1月に九州各県議会議員研修会にてご講演頂いたNPO法人グリーンバレー大南信也理事長が中心となり進められている所謂「神山プロジェクト」。
http://itahashi.info/blog/20160130025122
是非この眼で確かめたいと思い、やっとその日がやって来ました。
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大南理事長から約1時間のご説明を頂きました、全てが刺激的で参考になる内容でしたが特に印象に残っていることを4つ

1)過疎の町神山町が仕事や働く場を持っていないなら、仕事を持っている人を呼び込む、というのが「ワークインレジデンス」の発想。シャッター街となった商店街に、「ここにパン屋さん来ませんか?」「デザイナーさんをこの空き家に求めます」と職種指定で募集をかけることで、理想の商店街作りが出来た。今後の不動産業は金額だけのマッチングではなく、街の価値を上げるようなマッチングが求められる。
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2)地方創生では往々にして地域の唯一の産業である「農業」をどうにかしようという発想で進められる。例えばブランド化とか。これで少々の単価は上がるが、最終的に儲けるのは卸売市場であったり都市圏のレストラン。神山町は文化芸術から始まり、移住者、サテライトオフィス、サービス産業と対象が変わってきたが結果として農業に好循環を与えた。足りないサービスを外に求めるとお金は地域から流出する。地域内でサービスを生むことで、地域内経済循環が起こる。
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3)サテライトオフィス(SO)の誘致に関しては、SOと受入側をフラットな立場にする。例えば、自治体が最初に「是非うちに来て下さいお願いします」と謙るから、SO側とフラットな立場になるために補助金を出したりする。今の若い起業家達はそういうのを嫌がる。実際神山町の多くのSO誘致やサービス業誘致のリスクは企業や個人が負っている(自治体が補助金をぶら下げて誘致するような事はしていない)。
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4)神山町の地方創生戦略を立てるにあたり、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」が立ち上げられた。その中で「地域に可能性が感じられる状況」が不可欠との認識。そんな中、通常だったら有識者会議を立ち上げ3回位会合を開いて素案を作るような、まるで行政のアリバイ作りの様な策定プロセスを根本から変えた。また策定メンバーをコアチーム(町長はじめ地域のリーダー5名)とワーキンググループ(若手を中心に28名)に分け、ワーキンググループが基本的に話し合いアイディアを出す、コアチームはそれを認証するという役割分担で3ヶ月60回徹底した議論を行い作り上げた。するとワーキンググループが自らこの戦略の実行部隊を志願し、戦略策定と同時に実行部隊まで決まってしまった。
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その後、プラットイーズというテレビの番組情報などを放送局に配信する会社のサテライトオフィスや神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスなどを視察しました。

○ 徳島県議会 「政府機関の徳島県移転に向けた取り組み状況について」

日本創成会議が2014年に発表した消滅可能性市町村などの報告書。日本の課題として東京一極集中の是正が急務とされ、その手段の一つとして政府関係機関の地方移転が提案され、国もその後まち・ひと・しごと創生総合戦略として政府関係機関について地方移転をする道筋をつけました。そんな中、徳島県は消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの移転を提案。何度かの試行を経て昨年消費者行政新未来創造オフィスを平成29年度に徳島県に開設することなどを決定。5.5億円の政府予算がつきました。
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ここでも神山町は活躍していました。理論として政府機関が地方移転すれば良さそうな事はなんとなく分かるが、実際そこにどんなメリットが存在したり問題が横たわるかは分からないため、為にする議論で話が進まなくなりそうなものです。しかし、河野前担当大臣、松本担当大臣、消費者庁長官はじめ多くの官僚が神山で移転試行をするなかで、神山町に存在する具体論が不安を払拭し一歩前へ進む推進力になったのは間違いないそうです。

また県側にとっては、費用負担が一体どれ位出てくるか大変ご心配されていたそうですが、机や椅子といった調度品の貸出しや人的支援は要請ありましたが経費は基本的には消費者庁が持つという方向。7月を目処に50名オフィスを徳島県庁10階の半分を使って設置こととなるそうです。

一方で、この移転は3年を目処に見直しが行われるため、見方によっては「お試し移転」。消費者庁の移転をきっかけに民間企業の移転やサテライトオフィスの設置を期待するが、3年後の動向を不安視されることもあるようです。
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いずれにせよ、先行して政府機関の地方移転を実現する徳島県の取り組みが成功することを心より期待します。

○ 大塚国際美術館
1998年4月の明石海峡大橋の開通に併せて、大塚グループ創立75周年記念事業としてオープンした世界初の陶板名画美術館です。学芸部部長の浅井様に貴重なお時間賜りご説明を頂きました。
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元大塚グループ総帥で初代館長の大塚正士氏は設立の趣旨を、「鳴門海峡の砂を建設材料から付加価値の高い高精度タイル状の製品にして2000年の耐久性を持つ写真陶板として商品化する」「世界の有名美術館や遺跡を訪れずに一同に見られるところがあれば学生などに喜んで貰える」「教育的・観光的生活を併せ持つ滞在時間の長い大きな美術館を鳴門に建てて、人を堰き止めるダムを造る」などと仰っていたそうです。
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敷地面積2万坪、地下5階、地上3階、総事業費400億円、総展示数1075作品。その規模も凄いのですが、エントランスを入ってすぐにある陶板で復元されたシスティーナ礼拝堂で「世界の名作とはいえコピーじゃないの」なんて穿った気持ちは早々に吹き飛ばされました。世界の名画を2000年の耐久性を備えさせ実寸で再現し一カ所に集積することを目指した大塚正士氏の慧眼に感服致します。
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この技術を活用してキトラ古墳の壁画をコピーしたらどうだろう、等というアイディアも出ていましたが芸術的な視点だけでなくビジネスとしても凄い仕掛けです。

○ 奈良国立博物館
ご多忙な中駆けつけて頂いた石垣副館長からご説明を賜りました。
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国立博物館は我が福岡にある九州国立博物館を含め国内に4つあります。奈良国立博物館は明治22年に設置され、仏教美術及び奈良を中心とした文化財を収集、保存管理、展示、調査研究、教育普及事業などを行っています。特に仏教文化の優れた芸術性や背景の歴史を中心に紹介しているのが特色です。
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中国人観光客が近年増えており、英・中・韓の3カ国語の音声ガイドを用意していますが、利用数は中国語が一番多く続いて、英語、韓国語だそうです。近隣には東大寺ミュージアムのような民設の美術館・博物館も多く存在しており、連携を模索するも総論賛成各論反対のような状況。ぐるっと関西のような周遊カードなどが切望されるそうです。

奈良の特徴として、夜が早い(あまり遅くまで店が開いていない、出歩かない)というのがあるらしく、夕方から夜にかけての集客に苦戦しているとのこと。奈良県には14百万人の観光客が訪れていますが、奈良国立博物館は年間46万人の来場者。これをどう引き上げていくか模索されております。

因みに九州国立博物館は一番後発の国立博物館ですが、年間来場者は約90万人と善戦しており、石垣副館長からは特別展を軸に「あそこに行けば一日遊べる」と思わせるイメージ作りが強みではないかと分析されておりました。
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恐らく私が委員長としては最後となる管外視察。今後の県政運営にしっかりと反映出来るよう努力してまいります。