◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆様、おはようございます。自民党県議団の板橋聡です。今回は、七月十四日に発生した九州北部豪雨災害の被災地であるみやま市から選出していただいている議員として、矢部川水系における九州北部豪雨災害について質問いたします。
まず、河川管理情報の提供について質問いたします。今回の豪雨は、矢部川の整備基本方針に掲げられた基本高水流量毎秒三千五百トンを超える流量をもたらし、西日本新聞いわく、想定外の流量、百年に一度超えだったそうです。矢部川の最高水位は観測史上最高の九・七六メートルに達し、はんらんの危険があるということで、私の地元であるみやま市、そして隣の柳川市においても全区域に避難指示が出されております。
その当日、私はみやま市の災害対策本部を訪れており、まさに避難勧告が市内全区域の避難指示へ変更される間際に立ち会っておりました。今回の避難指示についてはタイミングの問題や、河川からの距離にかかわらず市内全域に避難指示を出すべきだったかどうかなどの議論が存在しますが、実際その場にいた者として申し上げれば、判断材料となる河川情報が乏しい条件下で、市としてはぎりぎりの決断をされたと評価しております。
そこで質問です。知事は我が会派の代表質問に対する回答で、ダムのリアルタイム情報を下流地域へ提供するとおっしゃっていますが、下流地域にとってはリアルタイム情報だけでなく、ダム付近の天候はどういう変化をしており、今後どのように流入量、放流量が変化していくかまでを含めた今後のダム放流予測のような情報提供があれば、住民の安全を確保するためのより正しい避難判断につながると考えますが、知事の所見をお聞かせください。
また、今回二カ所が決壊した沖端川には、現在河川監視カメラがございません。水位計も一カ所のみです。沖端川の監視カメラ及び水位計の整備と拡充を強く要請いたしますが、知事の所見をお聞かせください。
さて、沖端川は実はとても特殊な河川であります。通常、川は、支流が本流に流れ込んでだんだん太い川になって河口に流れ着くものですけれども、沖端川は本流矢部川から支流として分派して河口に向かっていく、全国でも珍しい河川であります。一般的に堤防が決壊すれば河川の水位は下がるものですけれども、今回の水害で沖端川の堤防は二カ所決壊したにもかかわらず、本流矢部川の水位が落ちなかったため、矢部川から大量の雨水が沖端川に流れ込み続けました。その結果、沖端川の水量は落ちず、最終的に本流矢部川の六合付近の堤防が決壊して、本流と支流全体の水位が下がるまで復旧作業を行うこともできませんでした。
そこで質問です。知事は沖端川のこのような特殊性を御存じだったでしょうか。また、被災した住民が今後も安心してふるさとで暮らしていくために、沖端川の復旧はこの特殊性を踏まえて、ぜひとも改良型で進めていくべきと考えますが、知事の所見をお聞かせください。
次に、九月十三日の矢部川水系流域協議会にて、今回の沖端川の堤防決壊原因は越水と確認されました。豪雨が日向神ダム、矢部川、その支流、遊水池、クリークなどありとあらゆるポケットに流れ込み、洪水調整の限界を超えた結果、あふれてしまったということだと理解します。ポケットで一番効果が高いのはダムだと思いますが、今回は視点を変えて質問します。
現在県で推進されている、災害に強いため池等整備事業、いわゆる小規模クリーク整備事業は、湛水被害の軽減のみならず、下流地域のポケットとして洪水調整機能も強化します。近年、十年に一度、二十年に一度と表現されるレベルの豪雨が頻発するようになり、今回を上回る豪雨がいつ起きても不思議ではありません。このため、地域の洪水調整機能を強化できるクリークの整備を計画的に進め、防災機能をさらに高める必要があると考えますが、これまでどおりの整備で本当に十分なのか、今回被災した県南地域、特にみやま市、柳川市において不安が残ります。
そこで質問です。クリーク整備の現状と今後の取り組み方針について知事の所見をお聞かせください。
次に、避難所に関して質問します。矢部川を挟むような形で、みやま市の指定避難所となっております上庄小学校と下庄小学校があります。この二つの小学校は、県が管理しております国道四四三号沿いに立地していますが、それぞれ土地が低い場所にあります。そのため今回の水害で、下庄小学校においては四四三号から校門に至る市道が冠水してしまい、そもそも住民が避難することができませんでした。そして、上庄小学校に至っては一時三百人以上の避難者がおりましたけれども、沖端川の決壊により四四三号を含め周囲が完全に冠水し、まさに孤立状態になってしまいました。浄化槽も水没しているためトイレが使えず、避難所として用をなさない状況でした。他の自治体の状況を聞いてみると、確かに小学校や公民館が避難場所として指定されている場合が多い。学校施設は広いですし、トイレや給食設備があったり、避難所として適している面も多いですが、今回のような水害の場合、その立地によっては避難所の機能を果たさないばかりか、逆に避難された方を危険な状況にする場合もあります。
そこで知事に質問です。県下の指定避難所について、冠水などにより孤立してしまう可能性がある避難所を把握されていますでしょうか。また、県としてどのように取り組んでいくのかお答えください。
次に、市をまたがる避難についてお尋ねします。今回、沖端川の決壊によって百五十軒近くの床上浸水被害が出ました。みやま市本郷の瀬戸島地区は、ちょうど沖端川と矢部川に挟まれて中州のような形状になっております。沖端川を挟んで筑後市と隣接する市の境目の地域です。この地域の指定避難所は本郷小学校ですが、矢部川にかかる約二百メートルの橋を渡って避難しなければなりません、幸作橋というんですけれども。ここは高齢者の多い地域です。矢部川が増水して幸作橋のすぐ下まで濁流が迫ってきております。流木が橋げたを揺らして雨風も激しい。怖くて幸作橋を渡りきらん、と避難をためらわれるお年寄りもいらっしゃいました。そこで地元の浅山区長がとっさの判断で、より川幅が小さい沖端川の行基橋、こちらは五十メートルぐらいの橋なんですけれども、これを渡って筑後市側にある筑後広域公園の体育館に避難をすることになりました。そしてその直後、沖端川は決壊。瀬戸島地区のほとんどのお宅は浸水、天井近くまで濁流にのみ込まれたお宅も数多くあり、まさに間一髪の避難でした。体育館には筑後市の職員の方が避難対応をされており、みやま市からの避難にもかかわらず大変よくしていただいたそうで、避難された本郷住民の皆様は、口々に感謝の言葉を述べていらっしゃいました。
今回の大水害でつくづく感じたのは、水があふれたところとそうでないところは全く別物です。今回沖端川は、たまたま左岸側、みやま市、柳川市側だけ決壊しました。つまり、大量の避難者が水の出ていない対岸の筑後市側にどっと押し寄せる可能性もあるんです。先ほどお話ししました、冠水した上庄小学校も、ちょっと歩くとすぐお隣の柳川市です。
そこで知事に質問です、災害の場合、人間が決めた市や町、あるいは県の境界線は関係ありません。市をまたいで違う地域へ避難するような場合を想定し、県がちゃんとイニシアチブをとって調整役を果たすべきと思いますが、知事の所見をお聞かせください。
また、県境を越えて佐賀、大分、熊本へ福岡県民が避難する可能性もあります。そのような県をまたがる避難について、他県との連携はどうなっていますでしょうか、お聞かせください。
最後に、風水災害時の緊急対策工事などに関する協定書について質問します。長いので以後、風水害協定と省略させてもらいます。
七月十四日の朝、矢部川は堤防のパラペット越しに手を出すと水面に手が届くほど、いつ越水してもおかしくないくらい増水していました。私はたまたま堤防のパラペットから漏水している箇所を発見したのですけれども、付近を点検に当たっていた建設業者の方にこれを報告すると、幾つかある水防工法を検討し、これはシート工法で対応しましょうと即座に対処していただき、被害の拡大が防げました。その見事な対応に感服した次第です。
今回の水害において、堤防決壊箇所や危険箇所の応急処置に始まり、土のうづくり、各地河川や道路の点検、その後の復旧工事など風水害協定を締結している企業の方々は地域住民の安全、安心のために、場合によっては御自宅が被害に遭われているにもかかわらず、迅速かつ適切な対応をしていただいたと聞いております。この制度は平成二十年度から始まった比較的新しい制度で、今回のような広範囲で起こる大規模な水害は想定されていなかったとのことですが、地域の災害対応、減災の力を高め、地域住民の安全、安心の向上に貢献する協定であると改めて評価いたします。
そこで知事に質問です。災害はいつ起こるかわかりません。忘れたころにやってきます。風水害協定が県民の安全、安心に資するよう、いついかなる場合でもきちんと機能させるのは県の責務だと考えます。今回の災害を通じて知事の風水害協定に対する評価と、今後どのようにしてこの協定を地域の住民の安全、安心につながる価値のある協定にしていくか知事の所見をお聞かせください。
知事には、豪雨災害後二度も現地入りしていただきました。今回の答弁は私に対してではなく、ぜひ、あのときお会いしていただいた被災者の皆様の顔を思い浮かべて、誠実で明快な御答弁をお願いいたします。(拍手)
◯議長(松本 國寛君) 小川知事。
*知事答弁
◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
まず、沖端川への河川監視カメラ及び水位計の設置についてお答えしたいと思います。今回の豪雨によりまして、矢部川流域では河川がはんらんし、甚大な被害が発生いたしております。特に沖端川におきましては、越水により堤防が決壊し、広範囲で家屋が浸水したところでございます。現在、沖端川におきましては、河川監視カメラは設置されておりません。水位計につきましては新村橋に一台設置をしてございます。今回の災害後、地元市からは、水防活動や住民の避難活動を迅速、円滑に行うため、沖端川に河川監視カメラを設置してほしい旨の要望をいただいておるところでございます。洪水時におきます河川の画像情報、水位情報といったものは地元市の災害時における諸活動の際、大変役立つ情報となります。そのように考えております。このため今後、矢部川水系流域協議会にも諮りながら、沖端川の河川監視カメラや水位計の具体的な設置箇所を決定いたしまして、来年梅雨の時期までに設置をしていきたいと、このように考えております。
次に、ダム操作の事前通知についてお尋ねがございました。降雨予測に基づいてダムの操作による放流量をあらかじめ予測いたしまして、下流地域に事前通報や警戒などを行うためには、情報の信頼性というのが大切でございます。しかしながら、現段階での降雨予測システムの精度、これを考えますと、事前にダムの放流量を予測し、通知をすることは極めて難しいというふうに考えております。
沖端川の改良復旧についてお尋ねがございました。矢部川水系沖端川では、先ほど議員も御指摘ありましたように、大変な被害が発生したわけでございますが、沖端川は国が管理をいたしております矢部川から分流する河川でございまして、この両方の河川のバランスをとりながら一体的な整備をしていくことが、沖端川の治水安全度の向上を図るためには必要であると、このように考えております。現在、このような沖端川の特性というものを踏まえながら、堤防の整備、河道掘削などによります河川の改良事業を集中的に行えるよう、その内容や実施方法などにつきまして、今国と協議を行っているところでございます。協議が調い次第、早期にその工事に着手してまいります。
クリーク整備の現在の状況と今後の取り組みについてでございます。クリークの整備は、農業用水を確保いたしますとともに、貯留、排水といった、先ほど議員はポケットとしての防災機能とおっしゃいましたが、そういった機能を強化するために実施しているものでございます。農業生産のみならず生活の安全を確保するためにも必要なものと認識をしております。クリークの整備につきましては、国営で行っております大規模なものを除きまして、県が国庫の補助事業を活用いたしまして、平成三十二年度の完了を目標に進めてきたところでございます。しかしながら、平成二十二年度に国の農業、農村整備予算というものが大幅に落ち込みました。クリークの計画的な整備に懸念が生じたところでございます。このため、昨年度、県単独事業というものを創設させていただきまして、必要な予算を確保させていただいたところでございます。小規模なクリークにつきましては、この県単事業を活用いたしまして、平成二十三年度から三カ年計画で整備を進めているところでございまして、これをしっかり進めさせていただきたいと思っております。
次に、避難所の現状の把握とその対応についてお尋ねがございました。市町村におきましては、避難所を選定する場合には、私ども県の地域防災計画で定めた考え方を踏まえまして、一に浸水区域等の危険区域を避ける、二に、仮に浸水想定区域内に避難所を設置せざるを得ない場合でも安全を確保できる場所にする、三番目は、できる限り近距離にある施設を確保するということ、そういったことを計画で定めておりまして、その考え方を踏まえて、市町村では避難所を選定しているものと承知しております。しかしながら、今回はかつて経験をしたことのないような大雨によりまして、短時間に道路が冠水し、河川がはんらんをいたしました。この結果、みやま市や柳川市では避難路が冠水をいたしまして、指定避難所が孤立したことから、指定避難所ではなく近隣の公的施設や民間施設に避難したケースもございました。先ほど議員御指摘のとおりでございます。県といたしましては、今回の災害における避難所の状況を踏まえまして、全県的な避難所の点検作業を行ってまいります。その際、今回の教訓を踏まえ、指定避難所の安全性が確保されているのか、また短時間で避難できる距離にあるものか、指定避難所が使用できない場合の代替施設への避難誘導が定められているかどうか、住民の意見をよく聞いて選定されているかどうか、そういった視点で点検をしていきたいと考えております。こうした点検を行った上で、市町村が地域の実態に即しまして、避難マップの見直し、避難マニュアルの策定や、これらに基づく避難訓練が行われる場合に、これを支援していきたいと思っております。
次に、市町村域を越えた避難所の確保についてお尋ねがございました。市町村では、それぞれの地域を対象範囲といたしまして地域防災計画を策定しており、避難所につきましても市町村域内にある身近な公民館等を指定避難所として選定している、先ほど申し上げたとおりであります。一方で、先ほど申し上げましたように、今回の豪雨では、朝倉市、みやま市、大刀洗町におきまして、増水した川を渡り指定避難所に向かうことが危険であったために近隣市に避難をした、そういったケースがございました。こうしたことを踏まえまして、避難所につきましては市町村区域内で選定することが基本としつつも、地勢的な、地域的な特性によっては隣接する市町村の避難所を利用するほうが住民の安全につながる、そういう場合もあると考えております。今後、全県的に避難所を点検することにいたしておりますので、その際、隣接する市町村の避難所を活用することで、より効果的に住民の安全を確保できるような場合には、市町村間の連携、場合によっては御指摘の、必要に応じ他県との連携が図れるよう調整を行ってまいりたいと考えております。
あわせて、自主防災組織の共同避難訓練の実施など、市町村区域を越えた避難の実効性を確保するための取り組み、これについても働きかけをしていきたいと考えております。
次に、地域住民の安全、安心のさらなる向上についてでございます。本県では、風水害時における道路、河川などの公共土木施設の速やかな復旧を図るため、平成二十年度からでございますが、地元建設業者と県の県土整備事務所との間で風水害時の緊急対策工事等に関する協定、これを締結をいたしておりまして、迅速に工事ができる、これが実施できる体制を構築してきているところでございます。今回の災害におきましては、この協定を締結いたしました地元建設業者の方々が、沖端川の決壊箇所の緊急復旧工事を二十四時間態勢で献身的に行っていただきますなど早期の復旧に貢献をしていただきました。今後、今回の災害時における対応と、またその経験を生かしまして、協定を締結した建設業者に対しまして、日ごろから連絡体制を確認したり、技術の研さん機会を定期的に設けることによりまして、建設業者の方々の対応力の向上を図って、迅速かつ復旧が可能となるよう取り組んでまいります。地元の建設業者の皆様に御協力いただきながら、引き続き地元地域住民の皆様の安全、安心の向上に努めてまいりたいと考えております。
◯議長(松本 國寛君) 板橋聡君。
◯十一番(板橋 聡君)登壇 一点、再質問をさせていただきます。
ダム放流予測情報公開について、現時点では予測システムの精度などの問題でハードルが高いということは理解いたしますけれども、技術は日進月歩しておりますので、継続してぜひ検討をお願いします。
一方で、日向神ダムの放流量は最大で毎秒三百五十トンとのことです。今回は、ダム付近でも、観測史上最大の雨量だったため、沖端川が決壊した後もダムからの放流が続けられておりました。報道によりますと、当時、矢部川は毎秒四千トンの流量を記録したとのことですから、ダムの放流自体がそれほど下流域の水位に影響を与えたとは思いません。しかしながら、具体的に、ダムからの三百五十トンの放流が、下流域の水位にどれぐらい影響を与えるのか、基礎的な情報として下流域の市町村や自主防災組織、消防団などに情報提供することは、将来再び豪雨に見舞われた際の対応に有益であると考えますが、知事の所見をお聞かせください。
私は、過去二回、一般質問の場において、矢部川水系の質問をさせていただきました。それは水が足りないという利水がテーマでした。今回は皮肉なことに水があふれて困ったという質問であります。治水と利水は表裏一体です。どちらが欠けても地域住民の安全、安心は損なわれます。そもそも矢部川水系は、地域農林水産業に恵みをもたらす川なのです。こういう水害が起きると、どうしても治水だけに意識が向きがちになりますけれども、あえて言わせてもらえば、利水も忘れず、今回の水害からの復旧、復興は、恵みの川、矢部川への利水の視点も忘れずに復旧、復興していただきたいとお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)
◯議長(松本 國寛君) 小川知事。
◯知事(小川 洋君)登壇 ダム放流による下流部への影響について御質問がございました。日向神ダムが洪水調整時に放流する量は、私ども県の操作規則において定められておりますが、原則として毎秒三百五十立方メートルとなってございます。今回の豪雨におきましても、この規則に基づき適正に操作を行い、ダムの放流を行っております。ダムからの放流水は矢部川に流入をいたします。八女市の黒木町で星野川や笠原川などの支流と合流いたします。そして、下流域であるみやま市、柳川市などに到達をする、そういう川でございます。このようなメカニズムを経て矢部川下流や沖端川の洪水時の水位は上昇いたすわけであります。したがいまして、日向神ダムの放流量と下流域におきます避難判断水位との関連性につきましては、専門的な解析も必要でございます。このため専門家や地元市長が参画をいたしております矢部川水系流域協議会にも諮りながら、ダムからの放流量による下流部への影響について、いろいろ解析、研究いたしまして、可能な限り説明をさせていただきたいと思っております。