私が所属する総務企画地域振興委員会にて、11月6日〜8日にかけて東京都築地市場、埼玉県和光市の理化学研究所、総務省地域力創造グループ、有楽町駅前に拠点を構えるふるさと回帰支援センターの各取組について視察してきました。備忘録代わりに纏めておきます。
○ 東京都中央卸売市場築地市場「概要と地域振興の取組について」
昨年、小池百合子氏が東京都知事となって急転直下移転延期となった築地市場を視察してきました。
築地市場は都内に11ある東京都中央卸売市場のうち最も古い総合市場。平成27年の実績では水産物43万6千トン、4401億円。青果物27万1千トン、889億円を取り扱い、都内だけでなく関東近県も供給圏としており、特に水産物は世界最大級の取扱規模で、日本の建値市場(築地以外の市場で取引するにあたって参考となる価格を形成する力のある市場)としての役割を果たしています。
築地市場は1935年開場、それから82年が経過しております。老朽化・狭隘化はもちろんですが、コールドチェーンのような新しい物流概念への対応が難しく、また開場当初の取扱品目の搬出入は貨車と船がメインで、それに合わせて場内も設計されているので現在のトラック主体の輸送への対応も限界があり、2001年に策定された東京都卸売市場整備計画(第7次)で豊洲地区へ移転することが決定しました。
その後、小池都政になってからの混乱は皆様ご存じの通りです。
現場の方からは、維持管理の限界に来ていて、年間約2000件の補修工事が行われており、夕立が降ると雨漏りがしたり、排水口から水が噴き出したりする状態とのご説明。
質疑応答にて、今年7月の都議会選挙前に小池知事が発表した「築地は守る、豊洲は活かす」というプランの詳細について尋ねたところ、「一旦全ての業者は豊洲に移転して、その後築地を再整備した際に戻りたい方がいらっしゃれば」というご説明。ところが築地の再整備がどのようなものになるかは全く白紙との事で、その内容のあまりの行き当たりばったり加減に驚愕しました。
その後市場内を視察したのですが、衝撃的だったのがウニのセリ場の横にある窓から見えた光景。
そこは環状2号線の築地大橋が途中で断ち切られたように、無残な断面を曝していました。
築地市場の移転を前提に整備が進められていた環状2号線は豊洲新市場の所からここまで通行止めのままとなっているそうです。本来であれば環状2号線をオリンピックまでに開通させて、築地市場跡地は大会関係者用に5000台規模の車両基地になる予定でしたが、それも頓挫してしまい現状では暫定開通させるのがやっととの事。職員の方々が苦労に苦労を積み重ねてやっとここまで漕ぎ着けたであろう築地移転や環状2号線問題が水泡に帰している惨状に委員一同から溜息が漏れました。
実はこの視察11月6日に行われたのですが、その際に田中場長からは「つい先程の会議で豊洲市場へ2018年10月11日に移転する方針が決まった」と安堵の報告があったのですが、ご存じの通り移転先の江東区が観光施設整備が不透明な点を指摘し受け入れを再考すると表明し、また更なる暗礁に乗り上げています。
田中場長、春田統括課長代理におかれましては、大変話しにくい状況の中にも関わらず視察にご対応頂き有り難うございます。現場の皆様の生の声をしっかりと受け止めさせて頂きました。
行政の連続性の重要さと首長とは何かを深く問い直す切っ掛けとなりました。
○ 理化学研究所「福岡県との連携に向けた取組状況について」
1917年に日本で初めて創立された自然科学の総合研究機関である理化学研究所。過去にも朝永振一郎氏、湯川秀樹氏、野依良治氏など数多くのノーベル賞受賞者が所属しており、その年間予算は998億円、3552人の研究・事務スタッフを抱えています。
福岡県には理研独自の研究拠点はありませんが、平成27年に公表された、世界最高水準の成果を生み出すための経営方針「科学力展開プラン」には、理研がハブとなって各大学を連携しバーチャルな研究所を作りイノベーションを生み出す「科学技術ハブ機能」などが標榜されており。福岡においても、理研・九州大学・福岡市の三者で「地方発イノベーション創出に向けた連携協定書」を締結。有機EL分野や次世代精密加工に関する共同研究が行われていたり、久留米市の協力の下「理化学研究所との連携にかかる協議会」を設置。機能性食品・機能性農作物増産技術・医薬品などについて共同研究を進めています。
その後、研究室を視察させて頂きましたが、理研の重要な知的財産として企業等を中心にユーザー300社以上に利用される大森素材工学研究室の「ELID研削」、エネルギー移動・変換原理の解明を通じて環境・エネルギー問題解決への貢献を果たす走査プローブ顕微鏡を開発したKim表面界面化学研究室など、理研が特に力を入れている「研究を産業・出口に繋げていく」システムがきちんと機能していると感じました。
○ 総務省「ラグビーワールドカップ及びオリンピック・パラリンピックを通じた地域活性化について」
総務省を訪問し、地域力創造グループ地域振興室及び地域自立応援課の方から「ラグビーワールドカップ(以下、RWC)2019を通じた地域活性化についての調査研究」「東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリパラ)・RWCに関する地方財政措置」等について概要説明と質疑応答を行いました。
RWC、東京オリパラともにその開催により有形無形の遺産(レガシー)の創出により、大会開催期間のみならず大会開催後においてもスポーツ振興だけでなく地域経済の活性化を通じた地方創生への貢献や日本文化の魅力発信、観光・国際交流の促進など社会的・経済的発展に貢献ができます。
特にRWCは開催期間が約1ヶ月半と長い為、試合観戦の間に開催自治体や周辺を周遊する観光振興が特に期待されます。このようなレガシーを(1)大規模国際スポーツ大会において共通な傾向、(2)RWCにおいて特徴的な傾向、(3)近年の大会において特徴的な傾向、(4)日本国内の大会に特徴的な傾向に分類してご説明を頂きました。
また総務省としての財政的支援の為に、RWCでは記念切手の発行や大会協賛宝くじの発売を行ったり、開催自治体等への支援の為に地域振興室内に自治体向け相談窓口を設置、特別交付税措置や地方債措置により地方財政措置を行います。東京オリパラにおいてはホストタウン制度により、全国の自治体と大会参加国・地域とが相互交流を図りながら地域の活性化等を推進します。
我がみやま市も東京オリパラにおいてオセアニア連合の水泳キャンプ地に内定しており、地域交流等に対する特別交付税や施設改修に関わる地方債措置を積極的に活用して万全の体制で受け入れや相互交流が行われるように働きかけたいと思います。
また説明後、福岡県に出向経験がある林﨑官房長(元福岡県財政課長)と山野総務課長(元福岡県総務部長)が意見交換の場を設けて頂き、福岡県議会の昔話に花が咲きました。福岡県との御縁を大切にして頂いている事を嬉しく誇らしく思います。
ご丁寧な対応、本当に有り難うございます!
○ ふるさと回帰支援センター「移住相談の取組について」
NPOふるさと回帰支援センターは、故郷暮らしを希望する生活者の増加という時代の要請を受け、2002年に設立されました。当初は数名のボランティアで2−3畳のオフィススペースを間借りしてスタートしたのですが、国が打ち出した地方創生の流れにのり、2012年から有楽町駅前にある東京交通会館に東京オフィスを構え、今では990㎡の面積に44道府県が出展、2016年には来訪者・問合せ数が26,426件となりました。
以前は50代〜60代の方がリタイア後に田舎暮らしを希望されるIターンの相談が多かったそうですが、リーマンショック以降は20-40代の利用者が増え、また若い方はUターンを希望されている割合が多いとのことで、先ずは生活基盤の確保が第一との考えで「地方就職相談コーナー」としてハローワークの出張窓口などを設け、就労を前提としたUIターンをサポートしています。
私からは「就労という視点では、地方の大きな就労先は農業であり、就農の観点からのサポートをどう考えているか?」と質問させていただきましたが、現在JAと相談しながら就農専用の相談コーナーを作ろうとされているとの事でした。
福岡県は2015年からブースを出展しており、北九州市・久留米市・柳川市・糸島市・芦屋町が会員自治体となっています。移住希望地ランキングでは出展直後の2016年から早速5位にランクインするなど、移住者からも大きな注目を集めており嬉しい限りです。
一方で、まち・ひと・しごと創生本部が出来て地方創生のための交付金が現在はあるが、これもあと2年で終了する予定の為、交付金が無くなった後に現在43有る自治体の出展ブースが減少するのではと心配されておりました。
すっかり長くなりました。まだまだ書き足りないことが有りますが、今回の視察を今後の県政振興にしっかり活かしていきたいと思います。
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