◯板橋 聡委員 皆さん、おはようございます。自民党県議団の板橋聡です。今回の予算特別委員会では、まん延防止等重点措置の効果、コロナ禍における学校文化の継承、ウイズコロナ期の観光施策と三つの知事保留質疑をお願いしましたが、全て新型コロナに関わる知事のリーダーシップに関連しますので、まとめて簡潔に質問してまいります。
第六波のまん延防止等重点措置において、服部知事が東京、大阪に追随せず、独自の判断で三月六日をもって国に解除要請されたことを高く評価します。一方で、新型コロナウイルスが発生してから三年目、当初はえたいの知れない恐怖のウイルスは、繰り返される感染の波を経て、徐々にその感染傾向が判明してまいりました。保健医療介護部によると、オミクロン株による第六波の県内新規陽性者数は六十歳未満が八五%と大半を占めますが、重症者や死亡者はその逆で、六十歳以上の方が重症者の八五%、死亡者では九七%を占めます。その結果、六十歳未満の重症化率は〇・〇〇七%、致死率は〇・〇〇九%です。平成二十九年の内閣官房の資料によりますと、季節性インフルエンザの致死率は〇・一%以下とあり、それよりはるかに低い状況です。
また、若者は重症化しないけれども、軽症や無症状の若者が同居している高齢者に感染させることが若者に行動制限を強いる理由として語られていました。昨今の核家族化で高齢者と同居している若者は減っている気がしますが、今回の知事保留質疑において正確性を期すため、福岡県で死因や経緯を把握している第六波における死亡者二百十名を分析してみました。すると、既に別の病気や高齢のために入院や施設に入所中の方が院内、施設内感染された後、亡くなったケースが七七%と約八割を占め、死亡後の検案や他の要因で入院する際に検査で陽性が判明した方が一三%、合わせて約九割の方は家庭内感染に起因した死亡ではありませんでした。つまり、若者に限らず、同居している家族が感染して家庭内感染により高齢者が亡くなるというロジックそのものが成り立たない現状が明らかになりました。その一方で、新型コロナ発生以降、福岡県の自殺者数は増加に転じ、特に女性、若年層の増加が顕著と評価されています。
そこで、知事に質問です。人類が根絶できた感染症は天然痘ただ一つです。それも、ジェンナーが種痘を行ってから二百年かかりました。新型コロナがゼロになる日は、我々が生きているうちには訪れないと思われます。一方で、ワクチン、経口治療薬、治療法など、人類は新型コロナと闘う武器を着々と手に入れ、先ほど申しましたとおり、新型コロナで亡くなる方の傾向も分かってきました。新型コロナ対策の要諦が、命を守り、救える命を救うことであるならば、死亡リスクが極めて低い六十歳未満まで含めた県民一律の行動抑制ではなく、コロナから身を守るべき方々には感染対策を徹底し、感染してもリスクが低い人はどんどん社会経済を回すような、コロナと共存するウイズコロナ政策へかじを切るべきではないでしょうか。知事の御所見を御披瀝ください。
◯吉松源昭委員長 服部知事。
◯服部知事 おはようございます。御答弁を申し上げます。
本県では、新型コロナの第四波の経験を踏まえまして、私も、先般お亡くなりになってしまいましたが、県医師会松田会長をはじめ専門家の皆様とも協議を重ねました。そして、本県独自のトリアージ基準の設定、また、県民の皆様に対策のロードマップとして示すための福岡コロナ警報の設定など、福岡県方式と呼ばれる独自の対策を第五波、第六波においても取ってまいりました。第六波のまん延防止等重点措置につきましては、新規陽性者の数が減少傾向を続けており、また、重症病床使用率は一〇%を上回ることなく、病床使用率も三月中旬には五〇%を切ると本県の推計を行っていたところでございます。また、高齢者のワクチン接種率も七〇%に達する見込みでございました。こういったことから、飲食店の時短等の措置を続けることの効果と、そして、そのことの社会経済に与える影響を勘案いたしまして、私から山際大臣に対し、まん延防止等重点措置の解除を要請したところでございます。
あわせまして、気候もよくなりまして人の動きも活発になるこの時期に、早期のリバウンドを防ぐことから、四月七日までの一か月間を本県独自の感染再拡大防止対策期間と設定をいたしまして、県民、事業者、高齢者施設等に対し、感染防止対策の徹底を要請しているところでございます。
オミクロン株の特性を踏まえまして、ウイズコロナに向けた歩みを進めていくためには、ワクチン接種率の向上、そして治療薬の確保、また、医療提供体制の強化、検査体制の充実、さらに、飲食店における感染防止対策の徹底、こういったことが必要であると考えております。本県においては、これらは着実に進んでおるものと考えております。そして何より最大の対策は、私たち自身が基本的な感染防止対策を徹底し、慎重に行動することであると思っております。私といたしましては、こういったことをさらに徹底をして、ウイズコロナ、すなわち感染防止対策と社会経済活動との両立を図っていかなければならないと考えております。
国におきましても、イベントにおける人数制限が緩和され、ワクチンと検査を活用した新たな行動制限緩和策について検討が進められておるところでございます。このような中で県が取るべき措置は、国の基本的な対処方針に定められておるところでございます。この基本的対処方針が、ウイルスの特徴や感染状況に応じて柔軟かつ機動的に対応できるものになるよう、引き続き、全国知事会を通じ、国に対し提言を行ってまいりたいと考えております。また、県が定めております福岡コロナ警報につきましても、先ほど申しましたように、デルタ株からオミクロン株へとウイルスの特性が大きく変化いたしました。これまでとは異なる運用が必要になってきております。このため、福岡コロナ警報につきましても、こういった特徴、また、感染状況の変化に応じて機動的に対応できるよう見直しを行ってまいる考えでございます。
◯板橋 聡委員 続きまして、本予算委員会において、私の教育長への質問で、学校文化がコロナ対策の名の下にないがしろにされている現状が明らかになりました。
そこで、知事に対して質問させていただきます。県立高校九十三校のうち三十四校、約四割弱で卒業式に校歌斉唱が行われていないというアンケート結果を御覧になられて、知事はどう感じられますでしょうか。率直にお答えください。
◯服部知事 県立高校の入学式、また卒業式においての校歌斉唱、また、声を出しての校歌の練習、こういったことを行う学校が減っております。これは、文部科学省のガイドラインあるいは県のコロナ対策本部の方針を踏まえました県教育委員会の指導に基づきまして、各学校における感染者の発生状況、あるいは実施をする場所の広さなどの実情に応じまして感染防止対策を行った結果であると考えております。
しかし、校歌や伝統行事など学校文化の継承は、生徒の愛校心、連帯感の醸成につながるものでございまして、教育的にも意義あるものと考えております。このため、生徒の健康を守るための感染防止対策を徹底しつつ、どうすれば学校文化を継承することができるのか、各学校が生徒、また、保護者の皆さんと共に考え、創意工夫を凝らしていくことが重要であると考えております。
◯板橋 聡委員 学校現場には、文科省や県コロナ本部からコロナ対策のガイドラインや方針が下りてきますけれども、そこには防止策ばかりが書いてあり、現場は過剰に受け止めて、リスクがある活動を全て中止したり必要以上に縮小している現実があります。県教育庁の合屋企画監がコロナ発生直後に校長を務めていた福岡高校では、県から降ってくるガイドラインの中で、どうやったら何ができるか生徒会と教師が徹底的に話し合い、文化祭、体育祭、修学旅行をはじめとするほとんどの学校行事を開催にこぎ着けたそうです。しかし、これは特殊な例で、生徒の自主性を重んじる校風、リスクを受け止め、生徒と向き合う教師の情熱、学校と信頼関係で結ばれた保護者の理解といったものがなければ、なかなかまねできるものではありません。
そこで、知事に質問です。成長期にある子供たちの一年一年は、我々大人と違い、はるかに貴重で尊いものです。コロナ禍も三年目に入り、このままでは中学、高校の三年間を丸々新型コロナに台なしにされ、卒業してしまう世代が生まれてしまいます。感染防止のガイドラインや方針を教育現場に伝えることは今後も必要かもしれませんが、防止策だけではなく、学校文化を守るためにも、知事として、学校活動、特に授業以外の活動をどう後押ししていくのか真剣に考えるべき時期が来ていると思います。人材育成を重要施策として掲げる知事が率先して何らかのアクションを起こすべきではないでしょうか、お答えください。
◯服部知事 私も、県立高校の生徒さんたち、また、先生方も御一緒に、いろいろなスポーツあるいは各種の活動を御披瀝願う表敬訪問を数多く受けております。そういった中で生徒さんたちとも言葉を交わす中で、今、県立学校に在籍していらっしゃるほとんどの生徒さんは、コロナ禍の中で入学をし、以来、授業や部活動にいろいろな制約を受けている。また、学校行事も多く中止になる。こういった形で、高校生活を十分な形で経験することができずに日々を送っているとお聞きしております。
こうした生徒さんたちを励ますためにも、コロナ禍にあっても困難を乗り越えようとする努力、また創意工夫は、今後生徒さんたち自身が大きく成長していくためにも貴重な体験となり得るものである、ぜひ頑張ってほしいというメッセージを適切な機会を捉えまして発出していくことにつきまして、教育委員会とも検討してまいりたいと考えております。
◯板橋 聡委員 続いて、ウイズコロナ期になれば、観光で社会経済を回していくことが重要です。福岡県の重要施策であるワンヘルスを観光素材と捉え、修学旅行や大人の視察をテーマに据えていただき、来訪者を増やし、ワンヘルスの理念を学んでいただき、全国に広めていくことは極めて意義深いと考えます。
そこで、知事に質問です。ワンヘルス先進県として、ワンヘルスの視点で修学旅行や大人の視察旅行の誘致に力を入れることは商工部から力強い賛同をいただきましたが、ワンヘルスに関わる部署は、農林水産部、保健医療介護部、環境部、教育庁など多岐にわたります。知事がリーダーシップを取り、横串で連携をさせて、ワンヘルスに関連する観光素材を開発し、PRすべきと考えますが、知事の御所見をお聞かせください。
◯服部知事 人と動物の健康、そして環境の健全性は一つであると考えるワンヘルスの理念は、人獣共通感染症対策あるいは環境保護、そして、人と動物の共生社会づくりなど、修学旅行をはじめとする教育旅行におきまして学びのテーマとなり得るものであると考えております。こういった旅行を通じまして、ワンヘルスの理念を県内外にも広めることができるものであるとも思います。
このワンヘルスの理念を分かりやすく楽しみながら理解をしていただくためには、ガイドの育成など、受入れ環境を整備するとともに、ワンヘルス関連の観光素材を開発することが必要でございます。県では、来年度、四王寺県民の森をワンヘルスの森として、人と動物と、そして森の関わりを解説いたしますパネルなどを設置いたしますとともに、ワンヘルスガイドの育成を行っていきたいと思います。こういった受入れ環境の整備を行いまして、ワンヘルスの森へのツアーを行っていきたいと思っております。
また、観光振興を所管しております商工部など知事部局のみならず、教育委員会も含めました全庁的な連携を図りまして、例えば、ドッグランなど動物と触れ合える公園の整備、あるいは、新たに創設いたしますワンヘルス認証制度によって認証されました農林水産物を使った食事の提供、こういった観光素材の開発に努めていきたいと思っております。さらに、こうした施設あるいは観光素材の開発の後には、福岡県観光連盟とも連携をいたしまして、旅行商品の造成の働きかけ、また、情報の発信に努めていきたいと思っております。
◯板橋 聡委員 本日いただいた全ての答弁を通じ、ウイズコロナに向かっていくんだという知事の力強い決意を感じました。保健行政の最前線にいるのは、間違いなく保健所を所管している県です。新型コロナによって、県知事ってこんなに大事な存在なんだと県民は改めて、いや、初めて認識していると思います。服部知事におかれましては、その立場を十分に御理解いただき、新型コロナ対策最前線の長として存分にリーダーシップを発揮し、国から下りてくる全国一律の対処方針に翻弄されるのではなく、実情やデータに基づいた政策で感染防止と社会経済活動の両立を実現していただけるよう切にお願いして質問を終わります。(拍手)