平成29年予算特別委員会「DMOと観光の終焉について」

◯板橋 聡委員 自民党県議団の板橋聡です。
 本日の観光局の質問の終えんに、私からはDMOと観光の終えんについてというテーマで質問させていただきます。
 執行部の皆さん、熱が入って非常に一生懸命答えられるのはいいんですけれども、ちょっと答弁が長い、わかりにくいところがありますから、なるべく簡潔に、わかりやすい言葉でお願いしたいと思います。
 まず、我が会派の十中大雅議員が、今議会の一般質問においてDMOに関して質問をされました。答弁の内容は、県内市町においては、地域観光振興の中核である観光協会がDMOの役割を担っていくという答えでしたけれども、私も観光協会の現状を知っていますので、全ての観光協会が一足飛びにDMOの役割を果たせるとは思っておりません。
 そこで、地域の観光協会が現在どういう状況にあって、どういう課題があると認識されているのか、お聞かせください。

◯井上忠敏委員長 中島観光政策課長。

◯中島観光政策課長 現在、観光協会は四十三市町村の中に三十四設置されております。そのうち二十七、率にしまして八割が職員数三人以下、このような状況で頑張っているところでございます。また、ほとんどの観光協会がプロモーションやイベント中心の事業を実施しておりまして、一年を通じて観光客を呼び込む、そのような取り組みになかなかつながっていかないというのが課題でございます。

◯板橋 聡委員 DMOの役割を担えと言っても、市町村の観光協会には人も足りない、ノウハウもない。だからこそ県がどういう役割を果たすのかが問題です。
 十中議員の一般質問では、県の支援策について、体験型観光資源の開発とか、ほかの先進的な取り組みに対する助成や観光地づくりに関する専門家による助言、指導などを挙げておられましたけれども、どうもいま一つぴんと来ないんですね。助言とか指導をするといっても、どういうふうにするのか。場当たり的にやっていてもなかなか成果が出ないのではないかと思います。もっと具体性のある方針や進め方が必要だと思いますけれども、県の立場における観光協会のDMO化の道筋について、説明をお願いします。

◯中島観光政策課長 県といたしましては、県観光連盟と連携しまして、観光協会の実情に応じた支援をしていきたいと思っております。具体的には、一つには、DMOの重要性を認識してもらうための啓発、そして、もう一つは、県観光連盟によります観光協会の事業計画策定等に対する助言、そして、全国的に有名な観光地づくりの専門家を招きまして観光協会の事業改善の指導を行っていく、あるいは県の助成金を活用して新たな事業展開を支援していく、さらに、官公庁が進めております日本版DMO候補法人、この登録を目指す観光協会への取り組み支援、そして、国の助成金活用に対する助言、このようなことを通じまして、観光協会がDMOとして収益を上げ、また地域に観光消費を生み出す司令塔となれるようにしっかりと支援してまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 道筋をお示しいただきましたけれども、DMOのコンセプトもまだまだ浸透していない中、地域観光協会のDMO化には、道筋と同時に道しるべも必要だと思います。明確で具体的な目標を設定して、地域観光協会と県とで共有をして、ベクトルをそろえて進めていくべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

◯中島観光政策課長 現在、県観光振興に関する基本方針の中で議論を進めているところでございます。今後、専門家を初めいろいろな意見を聞きました上で、DMOに関する目標についても盛り込む方向で検討してまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 さらに、一、二年やったからといって、すぐに地域の観光協会でDMO化が達成できるとは私も思っていません。やはり物になるまで継続的な取り組みが必要と考えますけれども、所見をお聞かせください。

◯中島観光政策課長 観光協会のDMO化につきましては、御指摘のとおり、長期的な視点で考える必要があると考えております。各観光協会の事業目標の達成に向けまして、今後の事業の進め方も含めまして、専門家の意見を聞きながら、継続的な支援に努めてまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 ちょっと視点を変えまして、二〇一七年二月、デンマークのコペンハーゲン市が新しい観光戦略を打ち出しました。その戦略はジ・エンド・オブ・ツーリズム、日本語に訳すと観光の終えんとショッキングなタイトルがつけられて、その内容は、観光地の美しい写真で観光をマーケティングしたり、マスメディアによるPRによって大量の観光客が押し寄せて地域住民に負担になるようではだめですと。観光客を大量に誘客し、大量消費してもらう時代は終わりました。これからは観光客を一時的な住民として捉え、地域のコミュニティーの一員となる、地域も誘客のために背伸びしない観光振興に取り組むという趣旨でした。この観光戦略を、課長、率直にどういうふうに評価されますか。

◯中島観光政策課長 この戦略は、委員の御指摘を受けて初めて知りまして、英語で書かれておりましたので非常に苦労したんですけれども、コペンハーゲンの観光戦略は、地域住民や企業、さらには観光客も一緒に観光をつくり上げていき、住む人の生活の質も向上させていくという、このような考え方でございまして、観光振興に取り組むに当たって非常に重要なテーマを掲げていると考えております。

◯板橋 聡委員 そうですよね。しかしながら、過去の福岡県の観光施策でいうと、よしもと芸人と行くバスツアーなどはエンド・オブ・ツーリズムの中で指摘されている終わりゆく観光の典型例ではないかと。テレビの有名人という飛び道具を使って客寄せしても、一時的には誘客につながっているかもしれませんけれども、持続的なものとはなっていないと感じますけれど、課長、どう思われますか。

◯中島観光政策課長 このツアーにつきましては、参加者から県内にも魅力的なスポットがあるということを再発見できたというような声がありましたし、県の行いましたアンケートにおきましても、旅行先に福岡県を選んだ理由として、以前来てよかったというような回答がふえてきておりまして、一定の成果があったものと考えております。
 しかしながら、近年の観光客の動向は団体旅行から個人旅行へ、また見物周遊的な観光から体験交流型へと変わってきております。持続的に誘客していくためには、こうした市場ニーズに合った取り組みを進めていく必要がありまして、県の施策も変わっていく必要があるということで、現在、少しずつ見直しを行っているところでございます。
 二十九年度予算では、例えば都市部と農山漁村が近接している強みを生かしたサイクリングやオルレなどのトレッキングと、旅館、農家民泊等を組み合わせた地域の観光協会、商工会など、その分野の専門家とともに協議、検討を進めてまいる考えでおります。

◯板橋 聡委員 そういう意味では、マスメディアの力に頼って大量誘客しても、一過性で地域は疲弊するだけです。何も残りません。他県でもやっているからとか、テレビで紹介されていたからとか、はやりものに乗っからないで、もっと地域の本質的な魅力を打ち出すべきではないかと思いますけれども、課長、どう思われますか。

◯中島観光政策課長 県としましては、徹底したマーケティングを行いまして、こうしたデータに裏打ちされた取り組みが必要と考えております。そして、旅行ニーズを捉えた個人に届く情報発信、それから結果の分析、これを次への展開へとつなげていくことが必要だと考えております。このため、個人に届くような県独自の観光情報の発信というものに取り組んでまいる考えでございます。
 また、国内はもとより、海外からのリピーターをふやす必要がありますので、体験したり、交流しながら時間をかけて滞在していただけるような観光資源の開発を地域の皆さんとともに進めたいと考えております。

◯板橋 聡委員 まさにそのようなことをしっかりやってかなければならないんですけれども、先ほど申し上げたコペンハーゲン市の観光戦略は、観光客も住民として、コミュニティーの一員となって、将来的には移り住んでもらおうという大きな話でもあるんですね。これは我が国においても平成二十七年十一月に発表した「日本版DMO」形成・確立に係る手引に、地域住民の自らの地域への誇りと愛着を醸成する住んでよし、訪れてよしの豊かな地域づくりにより、地域住民の地域外への流出を防ぎ、ひいては地域を訪れた観光客の定住の促進につなげていくことも地方創生の実現における観光の重要な役割と、こういうふうに明記してあります。
 本日のDMOに関する質問の最後ですけれども、県としてこのエンド・オブ・ツーリズム的な考え方を生かした福岡県版DMOづくりにじっくりと取り組んでいくべきだと考えますけれども、最後ですから、部長のお考えと決意をあわせてお聞かせください。

◯井上忠敏委員長 小島商工部長。

◯小島商工部長 委員から御指摘のありましたエンド・オブ・ツーリズムはコペンハーゲンでございますけれども、ヨーロッパはもともと長期休暇がございますので、日本にそのまま当てはまるかどうかという問題はもちろん若干ありますけれども、体験型観光が今、非常にブームになってきている。その体験といいますのは、その地域にございます歴史や文化、あるいは食や産業、そういった訪問地の日常を体験する、旅行客の方にとっては非日常ですけれども、その地域の方にとっては日常の部分を体験するということでございまして、流行に流されずに観光客のニーズを的確に捉えて持続可能な観光地づくりを進めようとするこういったコペンハーゲンの考え方というのは、県にとっても見習うべき点が大変多いものだと考えてございます。
 県としては、こういった基本的な考え方のもとで、またこういった観光を進めていく上に当たっては、先ほど来、出ております地域の観光協会、こういったとこが、みずから収益を上げ、地域に観光消費を生み出していくための司令塔、つまりDMOとなれるようにしていく必要がございますので、県観光連盟との連携もしっかり強化いたしまして、こういった取り組みを支援してまいりたいと考えております。
 また、こういった考え方につきましては、先ほど来御説明申し上げております県の観光振興の基本方針の内容についても、この中で検討してまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 突然決意を聞くと、かなりどぎまぎしながらしゃべられていたみたいですけれども、部課長の意気込みは感じるんですよ。しかし、私、一般質問のときの知事の答弁を聞いている限り、部課長を初めとする現場の熱意と何となく温度差を感じるんですね。県全体の観光戦略でございますので、ここはぜひ、先日、福岡アジアコレクションカワイイ大使の女性八人に囲まれて満面の笑みを新聞で披露されておった小川知事に直接聞いていきたいと思いますので、知事保留のお取り計らいをお願いいたします。

◯井上忠敏委員長 ただいま板橋委員から申し出のありました知事保留質疑を認めることにいたします。なお、知事保留質疑は三月二十四日金曜日に行う予定でありますので御了承願います。

◯板橋 聡委員 終わります。(拍手)