【総務企画地域振興委員会 管内視察 豊前市・築上郡】

8月9-10日に総務企画地域振興委員会で、我がみやま市からは一番遠い福岡県の地域とも言える豊前市と築上郡を視察して参りました。しかしながら、県境の地域として熊本県と接するみやま市民としては、大分県と接する豊前市・築上郡には何かシンパシーを感じます。以下備忘録

◎ 九州電力 豊前蓄電池変電所 ◎
地球温暖化対策面で優れた、太陽光・地熱・水力・バイオマス・風力などの再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいます。特に、2008年以降の助成制度拡大により太陽光発電は大量に導入されましたが、一方で天候などにより発電量が大きく左右されるために、電圧や周波数などの電気の品質に影響を与えるために、その安定化対策の一環として国の補助金を活用する「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」により豊前蓄電池変電所が2016年に稼働開始しました。

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この施設は総工費200億円で世界最大級の蓄電容量30万kWh、出力5万kWhのスペックで、太陽光などで発電した余剰電力を充電したり、逆に電気使用量に供給が追いつかない時には放電を行うことで、電気の発電量と使用量のバランスを改善します。
2011年東日本大震災による福島原発事故以降、原子力発電についての是非が論じられる時、「電力供給量は原子力発電に頼らなくても足りている」という意見がありますが、電力を安定的に供給するには需要と供給のバランスをタイムリーに保つ事こそが重要で、「電力供給量が過剰になった場合」にも大規模停電などの問題が発生する恐れがあります(2003年に米国北部で約10日間にわたり発生した大規模停電はまさにそれ)。ベースロード電源としての原子力発電、化石燃料を使う火力発電、天候に左右される太陽光発電という発電量を即時調整することが難しいエネルギーを需給予測を含めどのようにコントロールして、安定して高品質な電気を供給するかに腐心される九州電力のお話しは大変考えさせられるものがありました。

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世界最大級といえども、現在九州管内の太陽光発電は700万kWh以上と言われ、豊前蓄電池変電所の出力5万kWhでは調整出来る範囲はごく僅かです。
それ以外に需給バランスを改善するには揚水発電があります。こちらも蓄電池と同じく起動に時間が掛かからない上に、蓄電池と違いエネルギーを保存しておいてもロスが無いというメリットがあります。しかしながら、揚水発電には上部と下部に二つのダムを造る必要があり、九州にはもう適地がないのではと言われています。

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技術の高度化により、電子機器側が高品質の電力を必須としており、電力供給の議論をする中では、コストや安全性同様、いかに需給バランスをタイムリーに安定させるかという観点を忘れては今の社会システムのレベルを維持するのは厳しいと感じます。

◎ 西友枝体験交流センター「ゆいきらら」 ◎
みやま市でも人口減少の煽りを受け、小中学校の統合問題が発生しております。昨年、4つの小学校が統合され「桜舞館小学校」が新たに開校。今後も更なる統合を進めるべく、各地で話し合いが行われておりますが、その中で一番問題となるのが、閉校となった学校跡地の活用問題です。

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今回訪問した築上郡上毛町西友枝にある「ゆいきらら」は、136年の歴史に幕を下ろした西友枝小学校を活用した施設です。

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閉校時の住民アンケート結果が示す約7割が校舎を残して欲しいとの意見を踏まえ、地域エネルギーを結集し明るく楽しい活力有る体験交流センターが作られることとなりました。
その事業は「活き生きサロン」「田舎の居酒屋」など地域住民が交流し活性化するような事業や、豊富な自然やお年寄りの知恵を活用した体験学習や蛍・月見イベント、教室に畳を引き雑魚寝が出来る大広間を活用した安価なスポーツ合宿・一般宿泊の受入れによる地域間交流の促進など非常に実効性がある内容でした。

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その結果、開校136年の歴史を継承する事が出来た上に、スタッフ・調理班などで50名以上の雇用を創出、3500名以上が参加した域内交流事業や4200名を超える宿泊者を含み利用者は32500人を超え、5年間ずっと黒字で運営がされて来たとのことです。
校舎内には過去の卒業写真や卒業制作、学校の手作りの年表がそのまま展示してあり、そこに行けばタイムスリップしたように小学生時代に戻れるような雰囲気も素晴らしいと思います。

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また、教室や講堂は基本的にはそのままの雰囲気を残してありますが、トイレ・浴室は近代的にリノベーションしてある所もメリハリが効いており利用者目線になっていると感じました。
こんな施設があれば、「盆と正月はここで同窓会しようぜ!」って盛り上がりも期待出来そうです。また卒業生二組が、この交流センターで結婚式を挙げたとの事。なんでもかんでも取り壊して新しいものを創るばかりが良いわけではありません。
みやま市でも是非参考にして欲しいです。

◎ 国指定名勝 旧藏内邸 ◎
明治時代から昭和前期まで福岡県筑豊地方を中心に炭鉱事業で成功を収め、その後錫や金の鉱山も経営した藏内次郎作、保房、次郎兵衛の藏内家三大の本家住宅。平成22年にこれを築上町が購入、専門委員会を設置し保存・活用が検討された後、平成27年3月に国指定名勝となり、地域の活性化に活用されております。

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この豊前・築上の地域は鎌倉時代から城井氏によって治められており、藏内家はその家臣だったそうです。
その後、秀吉の命により豊前国中津の大名として入封した黒田如水・長政と、本領安堵を主張する城井鎮房が対立。城井谷城の戦いでは黒田長政率いる黒田軍を、地の利を活かしたゲリラ作戦で追い詰め敗走させるも、最終的に鎮房は謀殺され宇都宮大名の歴史は終わり、家臣は豊前を離れるか、武士を座を返上するか迫られ、藏内家は豊前の地に残ることを選択したとの事。

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よく観察すると邸内の至る所に城井の家紋が使われており、主君に対する想いを感じることが出来ました。

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また、開放的な煎茶文化を好まれたそうで、茶室や脱衣所を兼ねた茶室から一番良い庭園の景色が楽しめるよう計算し尽くされた設計になっております。
仏間には明治時代にヨーロッパで好評を博し、日本の殖産興業として注目を浴びた金唐革紙が使われております。現在では伝統を受け継ぐ職人は国内で一人しかいらっしゃらない貴重な技術ですが、旧藏内邸ではその復元品も展示していました。

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築上町では旧藏内邸を中心に「戦国のムラ城井谷」として地域の歴史資源を軸に地域振興を進めておられました。福岡県は観光という意味では先進県とはなかなか言いづらい部分もありますが、黒田如水、柳川の立花宗茂、卑弥呼伝説など歴史資源が豊富であります。是非このような取り組みを県全体でも後押しして歴史観光による誘客を目指す事が出来ればと思います。

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駆け足の視察でしたが、総務企画地域振興委員会らしいバラエティに富んだ視察先でした。今後の県政活動にしっかり活かしていきたいと思います。