平成24年2月議会一般質問「中小企業の地域によるハンディキャップについて 、地域目線の新規就農者支援について」

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◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自由民主党福岡県議団の板橋聡です。通告に従いまして一般質問をいたします。
 まず、中小企業の地域によるハンディキャップについて質問いたします。私の六月の一般質問において小川知事より、県内の地域格差は何としても解消していきたいとの大変心強い答弁をいただきました。一方で、その際御指摘させていただいたとおり、平成二十年度の年間平均所得において、福岡都市圏は約二百八十四万円、私が住んでおります地元みやま地区では二百二十八万円と、福岡県内で約年間六十万円の格差が存在しており、この格差を解消するためにはさまざまな施策が必要であるのは明らかであります。
 その一つとして、最低賃金の引き上げ議論が存在していると思われます。麻生前知事に引き続き小川知事も最低賃金八百円の早期実現を目指し、平成二十三年七月十二日に国に対して意見書を提出されています。正規社員との賃金格差是正や、労働者が健康で文化的な最低限の生活を営み、生活保護との整合性に配慮し、労働に対するインセンティブが失われないことの重要性はよく認識しております。が、景気回復や経済成長のない、すなわち実態を伴わない賃金の引き上げは中小企業に対して大きな負担になるのも事実でございます。
 現在、福岡県の最低賃金は時給六百九十五円で、これは地域差なく県内一律六百九十五円でございます。一方で、最低賃金引き上げの根拠の一つで、最低賃金との整合性を問われている生活保護費は、福岡県内地域ごとに五等級、全国では六等級ですけれども、福岡県内は五等級に区分けされ、二十歳から四十歳の単身世帯において住宅扶助を含めて比較すると、一番高い地域と安い地域では月額十一万八千円余と九万二千円余となり約二八%の開きがあります。つまり、これは健康で文化的な最低限度の生活コストを地域に合わせて反映させた結果だと認識しております。
 私が住んでおります県南地域は、平均所得と同様に、福岡市、北九州市という両政令都市及びその周辺地域と比較し、産業基盤も脆弱であり、労働力の需要や流動性でも劣っているというのが実態でございます。そんな中、全県一律で最低賃金八百円を目指すのは、これは地方に拠点を置く中小企業には負担が大き過ぎ、逆に雇用の縮小や、場合によっては事業の廃止など悪影響を及ぼしかねません。政令指定都市とそれ以外の地域で最低賃金を変えるような弾力的運用が可能ならば、都市部と地方の経済成長のタイムラグを埋める解決策になり得るんではないかと考えます。
 そこで知事に質問です。県内一律の最低賃金が地方の中小企業の負担になっているという実情を御認識でしょうか。もしそうなら、法律など諸問題あるとは思いますけれども、例えば国に働きかけるなど政令で対応するようなおつもりがございますでしょうか、知事の所見をお聞かせください。
 そんな中、昨年末、福岡県、福岡市、北九州市がグリーンアジア国際戦略特区の認定を受けました。大変喜ばしいことです。国家プロジェクトとしての規制緩和、税制優遇、財政金融支援により県下全域が広く経済成長していくことを多くの方々、多くの県民が夢見ています。しかしながら現実は厳しく、この特区のエリアは県下全域というわけではなく、両政令指定都市及びその周辺の四市一町だけに限定され、私が住む県南など筑豊も含めエリア外、まさに蚊帳の外でございます。将来的に新たにエリアを追加することが可能とはいえ、エリア外の中小企業は、まずスタートラインに立つことはできません。特区の波及効果に期待はするものの、地方の中小企業は特区の恩恵を受け成長する都市圏にさらに差をつけられて、その背中を見ながら後を追う努力をしなければならないわけです。九月の定例議会に行われた最低賃金に関する答弁で知事は、負担がふえる中小企業の支援が必要と、最低賃金に関しておっしゃっておりましたけれども、現実はグリーンアジア特区の事例でもわかるとおり、私ども県南を初めとするハンディを背負った地方の中小企業振興をどうするか、これに対する手当てがないと、地方の中小企業は途方に暮れてしまうわけでございます。
 そこで質問です。地域の特色を生かし地域経済産業の活性化を目指す中で、私のみやま市を含む県南地域などグリーンアジア特区エリアになっていない地方の中小企業に対して、県はどのような具体的な戦略、施策があるのでしょうか、知事の明快な答弁をお願いいたします。
 続きまして、地域目線の新規就農者支援について質問させていただきます。我が会派の代表質問でも出ましたけれども、県として若者の農業参入定着支援については、青年就農給付金を軸に対策が練られていることは理解いたしました。しかしながら、それは就農希望者の目線に重きが置かれ、新規就農者をてこに、どのように県として農業を振興するのか、その戦略や方針がなかなか伝わってまいりませんでした。
 そこで知事に質問です。新規就農希望者において、水田農業や園芸農業それぞれの希望者が出てくると思われます。また、新規就農者のパターンも、Uターン就農による世代交代、またはIターン就農による県外からの人材の掘り起こしなどのケースが考えられます。ブランド化など福岡県が過去行ってきた農業政策との整合性に照らし合わせて、新規就農者確保を軸にしてどのように県農業を強化していくのか、その戦略や方針について知事の所見をお聞かせください。
 新規就農者の増加は、その後定着し、家族を持ち、地域に根差すことにより、農業のみならず少子化対策、地域活性化、経済振興など広がりのある効果が期待されます。また、地域性に基づく特定農産品の担い手を戦略的に育成し、産地としての競争力向上を目指すことも可能です。聞くところによりますと、糸島市は、海に面しており、都市圏にも近く、移住先として話題に上ることも多いため、福岡県における新規就農の問い合わせで抜群に人気が高いと聞いております。逆に言うと、それ以外の地域は青年就農給付金制度があろうとも、自治体やJAなどが主体的、積極的に働きかけを行わなければ、Iターンで新規就農者を獲得するのは大変困難というのが現実です。なかなか、みやま、八女、こういう話を聞いても、糸島ほど魅力的に見えないというのが現実だと思います。
 そこで知事に質問です。地域のJAが主体となって県の施策、例えば青年就農給付金や高収益園芸産地育成、あるいは融資、情報発信などをパッケージ化して、産地間の競争力の強化をにらんだ新規就農掘り起こしを目指した場合、つまり主体的にJAやその他現地の自治体が、主体的に新規就農者掘り起こしを目指した場合、これは県として農林水産部横断でしっかりと支援すべきだと考えますけれども、知事の所見をお聞かせください。
 以上、知事の明快な御答弁をお願いして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 最低賃金引き上げの影響に関する認識と賃金制度の運用についてお尋ねがございました。最低賃金は、労働条件の改善や労働者の生活の安定を目的といたすものでございますけれども、その設定に当たりましては、中小企業の賃金支払い能力など地域における労使双方の実情を踏まえることが大事だと思っております。現在国によって、最低賃金は県単位で決定されておりますために、これを引き上げる場合には、やはり地域における雇用維持に重要な役割を果たしている中小企業の経営状況に配慮しなければならない、そのための生産性向上や経営力の強化、経営の安定化のための支援策をあわせて充実強化することが不可欠であるというふうに私は考えております。そのため、議員も先ほどお触れになりましたが、昨年七月、国に対しまして、地域の実情に合わせた最低賃金の適切な引き上げというものを、私は意見書を出したわけでございますが、その際にも、中小企業に対する支援について強力に実施するよう求めたところでございます。
 グリーンアジア国際戦略総合特区エリア以外に存在いたします中小企業の方々への支援についてお尋ねでございます。本県経済の成長を図って安定的な雇用を生み出すためには、まずポテンシャルのある特区を推進をいたしまして、その大きな経済効果というのを周りに広めていく、広く県内中小企業に波及させることが重要であると思っております。お尋ねの県南みやま地域というのは、まず九州新幹線筑後船小屋駅、あるいは九州縦貫道みやま柳川インター、三池港インターが開通いたしました有明海沿岸道路、そして韓国釜山港とのコンテナ取り扱いが急速に伸びて過去最高を記録しております三池港など、県内有数の交通アクセス利便性と国際物流の拠点性、その潜在力が高い地域となってございます。また、近隣にはRDF発電所のほか間伐材を原料といたしました水素ガス製造プラント、レアメタルや紙おむつのリサイクルに取り組んでおります企業が立地をいたしております大牟田エコタウンというのがございます。こうした地域のポテンシャルを生かしますことで、みやま地域におきます、久留米のダイハツ向けの自動車部品製造企業に加えまして、三池港周辺への物流企業、エコタウン等への環境リサイクル関連企業など、そういった産業群の集積促進に努めてまいります。さらに、こうした企業との取引拡大を図っていくために、その周りの中小企業に対しましては、県制度融資によります金融支援のほか、技術開発、人材育成といったきめ細かな御支援を申し上げていこうと思っております。
 次に、新規就農者の確保戦略についてお尋ねがございました。本県農業が持続的に発展していくためには、将来を担う意欲ある若者の確保が必要でございます。一人でも多く就農していただくことを目指しているところでございます。そのため、近年増加をしておりますUターンやIターン者につきまして、その方々、その人たちが一体どういう品目、産品を取り扱いたいのか、そういったことにつきまして把握を進めていきますとともに、どの産地でどのような品目がつくられているか、こちらサイドの情報ですが、そういったそれぞれの情報を、きめ細かな情報発信に努めていきましてマッチングを進め、その精度を上げていきたいと考えております。
 一方で、農外からの参入者は、平均年齢が三十三歳でございます。こうした方々の定着を図っていくためには、これまで行っておりました技術の習得支援だけではなくて、住宅の確保など生活全般にわたる支援が必要になってございます。このため県では来年度から、営農面から生活関連支援まで一体的に行います相談窓口というものを設置しております。さらに、就農前後の所得確保のための国の給付金も活用してまいりたいと思います。また、市町村、農協と連携いたしまして、研修受け入れ農家の紹介でありますとか、住宅や空き家そういったもののあっせん、これも行っていきまして、一人でも多くの新規就農者の定着を図っていきたいと思っております。
 新規就農者対策を含めた産地の振興方策についてお尋ねがございました。新規就農者の育成は、産地の維持発展につながるものでございまして、本県農業の振興を図っていきます上で極めて重要なことであると考えております。県では、就業セミナーや相談会におきまして、県、市町村の具体的な支援策につきまして情報提供を行っておりますとともに、農業大学校や普及指導センターにおきまして早期の技術習得というものを御支援してまいっております。また、県としましては、施設整備に必要な融資や補助事業等につきましてさまざまな制度を用意しております。私、着任してから農業、いろいろきめ細かく検証して、いろんな対策、新しく展開したもの、あるいはこれまでの施策を充実したもの、たくさんあると思いますが、頑張ってきたつもりでおりますが、そういった事業を活用して、具体的に事業を実施される方が、そういった制度を有効に活用ができますように、市町村、農協への情報提供をきちっとやっていきたい。それから県の農林事務所を中心に、県のこれらの施策を横断的に事業者の方々が実施していただけるように環境整備していくことによりまして、産地の振興に努めてまいりたいと思います。

◯議長(原口 剣生君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 一点だけ、ちょっと言葉の使い方に関して再質問させていただきたいと思います。
 最低賃金の部分でございますけれども、現在、県単位で最低賃金が決められているということで、地域の雇用を担っている中小企業のために、その支援策に関して、国にも要請したし、県としても頑張るということでございますけれども、私が先ほどから言っております地域というのは、福岡県全体を国としては地域として見ているわけです。ですから国に対して要望するときに、福岡県に対しての中小企業の支援というものでは、なかなか、私の言っております、地域をしっかり応援してくれということが違うニュアンスになるのかなと思いまして、知事として、地域というのは、しっかりと最低賃金の中で、県の中でも地域差があって、苦しいと感じる地域もあれば、最低賃金でもなかなか人が集まらないという地域もあるということを踏まえていらっしゃるのかどうか、この一点、ちょっと確認をさせてください。

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 先ほど申し上げましたように、最低賃金、これをどう設定するかにつきましては、それぞれの中小企業の賃金支払い能力とか、そういった地域の労使双方の実情を踏まえるということが大事だと思っております。そういう意味では、福岡県内で地域においていろんな差があるということは承知しております。逆に、その差を念頭に、きめ細かな地域指定と最低賃金のレベルといったものを設定していくと仮にした場合に、その手順と、それからその広がり、その地域をどう設定するかについての設定の仕方、非常に技術的にも、また政策的にも難しい課題が多々あろうかと思います。そういった、きょう御指摘を受けましたことを頭に置きながら、今後いろいろ物を考えていきたいと思っております。