平成25年12月議会一般質問「地方の時代にふさわしい、地域活性化の為の無形民俗文化財活用について」

福岡県議会 録画中継にて公式動画で質問と知事答弁が確認できます。
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質問要旨「地方の時代にふさわしい、地域活性化の為の無形民俗文化財活用について」
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◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆さん、おはようございます。自民党県議団の板橋聡です。十二月定例議会の一般質問トップバッターとして、本日は地方の時代にふさわしい地域活性化のための無形民俗文化財活用について質問をさせていただきます。
 昨年、北部九州豪雨による沖端川決壊で浸水被害に遭ったみやま市本郷地区において、十一月三日に、福岡県が指定する無形民俗文化財である、どんきゃんきゃんというお祭りが開催されました。昨年は災害直後だったので神事のみの開催でしたが、ことしは夜遅くまで多くの家庭でお客様を迎え、水害で痛手を負った地域住民同士のきずなを再確認し、心の支えとなるいつものお祭りの風景が戻ってまいりました。古来から祭りや神事に代表される無形民俗文化は、地域のアイデンティティーの核でもあり、天災などにより地域の人々の心が折れそうなときでも地域住民のきずなを深めるとともに、自尊感情を高め愛郷心を育むことにつながります。県が指定している無形民俗文化財に限っても、北部九州豪雨の被災地である八女市には先週行われた田代風流、同じく柳川市には十月に開催された三柱神社秋季大祭の目玉であるどろつくどんなどがあり、各地において災害を乗り越える地域おこし、まちづくりに一役買ったのではないでしょうか。
 一方で、困った問題も発生しています。どんきゃんきゃんでは、しゃぐま、獅子頭と言うんですけれども、これをいただいた少年たちがかねやおはやしに合わせて舞いながら太鼓を打ち鳴らすのですが、本郷地区では少子化の影響から小中学生の数が激減し、神幸行列を維持するのにも四苦八苦されています。田代風流は本来、地域住民の男性のみが参加するお祭りだったのですが、最近は人手不足で女子生徒が参加したり、市外に移り住んだ方々に声をかけて祭りのときだけ帰って参加してもらっているそうです。柳川のどろつくどんは、最盛期には市内二十以上の町内会が山車を所有していましたが、現在はわずか四町のみとなりました。衰退が懸念される中、平成九年に飛龍どろつくどんの会という民間団体が立ち上がり、町内会と一体となって伝統の維持、継承に腐心されている現状です。全国的に名の知れた、本県観光の目玉とも言える博多祇園山笠あるいは小倉祇園太鼓などとは違い、小さな集落で受け継がれてきた祭りや芸能に代表される無形民俗文化財は、伝統を継承するための人材も少なく、携わっている少数の方によって細々と引き継がれているものも少なくありません。また、生活様式や意識の変化により地域社会に対する個人のかかわり方にも大きな変化が起こっており、お祭りや伝統芸能のお世話にかかわると時間もとられる、道具だ何だと金もかかるということで、あえて避けようとする人が少なからずいるのも、残念ながら現実でございます。
 そこで知事に質問です。小川知事は県民幸福度日本一を初めとする数々の施策の中で地域おこし、まちづくりというキーワードを盛り込まれています。県民幸福度向上の観点で、地域おこし、まちづくりを県の施策の中でどのように位置づけ、進めていらっしゃいますでしょうか。また、地域コミュニティーの活性化に対して伝統芸能や民俗行事など無形民俗文化財は大きな役割を果たすと思いますが、地域おこし、まちづくりに無形民俗文化財を活用することについて知事はどのような認識を持っているか御披瀝願います。
 文化財保護のあり方については、平成二十二年三月に福岡県文化財保護基本指針が県教育委員会により策定されています。この中で地域の活性化に向けた活用として、「文化財保護行政としては、まちづくり担当部局との連携により、都市計画法や景観法等の既存制度も活用しながら、文化財と一体となって価値をなす環境を整備し、文化的な空間を創出していくなど、文化財保護の理念に沿った地域おこしやまちづくりを行っていくことが重要」と明記され、地域おこし、まちづくりにおける文化財の活用が盛り込まれています。
 そんな中、県指定無形民俗文化財及び無形文化財は合計七十六件ございますが、これらの維持、保存に対し、県単独の県費補助額の過去五年の実績は、平成二十年分から順に、七十二万円、四十万円、四十九万円、百十四万円、百四十四万円です。一件当たりにして、何と年平均わずか一万一千円。もちろん地域の無形民俗文化財の保存、活用は基本的に市町村が行うべきと理解しますが、財政もノウハウも市町村あるいは住民だけではとても賄い切れません。県からの支援は必要であります。県として価値を認めたからこそ県指定になっている無形民俗文化財に対して、この予算額ではとても県が策定した文化財保護基本指針を達成できるとは到底思えません。
 そこで知事に質問です。この補助事業は、県指定無形民俗文化財の維持、保存以外に、基本指針に記してあります地域活性化に向けた活用が含まれているのか、予算案の提出者である知事の見解をお聞かせください。
 どんきゃんきゃんが行われる廣田八幡宮には御成敗式目の一節が掲げてあります。「神は人の敬いにより威を増し、人は神の徳により運を添う」。まさにそのとおりで、無形民俗文化財であるお祭りや伝統芸能の保護、継承は地域住民の積極的な参加があって初めて可能であり、またお祭りや伝統芸能が継承され発展することは地域の活性化につながっていく。つまり、無形民俗文化財保護と地域活性化は表裏一体の関係であります。
 そこで教育長に質問です。大変失礼な言い方になりますが、教育委員会にはまちづくりに関する組織もノウハウも予算も持ち合わせていないと理解しておりますが、この県文化財保護基本指針を達成するために今後どのような体制を構築すべきでしょうか。また、いつごろ、どのように達成するのか、プランやロードマップをお持ちでしょうか。
 また知事に質問です。県として地域振興、まちづくりの観点から、まずは県指定無形民俗文化財に対する支援が組織体制、予算面の双方で必要だと考えますが、教育委員会を含めた福岡県行政全体のトップとして、県民幸福度日本一を目指す小川知事の御所見を御披瀝願います。
 以上、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(松尾 統章君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず、県民幸福度向上の観点からの地域振興、まちづくりの進め方についてでございます。県民幸福度の向上のためには、まずもってそれぞれの地域が元気になることが重要であります。このため総合計画におきましては、時代の潮流や福岡県の強みといったものを踏まえまして、それぞれの地域が特色を生かし、地域の経済を活性化させ元気になる、そういう視点から具体的な施策を展開することといたしております。今後も、地域が持っております特性、資源、強みを最大限発揮をしていただき、その魅力を高められるよう、市町村、地域の皆さんとともに連携を図りながら、具体的な地域振興策、まちづくりに取り組んでまいります。
 次に、無形民俗文化財が地域活性化に果たす役割についてお尋ねがございました。各地域に古くから伝わります神楽や舞など無形民俗文化財は、その地域の歴史、文化を知る上で大変重要なものであります。また、地域の皆さんが力を合わせて代々守り伝えてきたものでございます。貴重な観光資源になるとともに、地域コミュニティーづくりやにぎわいづくりといった地域の活性化にも寄与するものであるというふうに認識をいたしております。
 無形民俗文化財に対する助成制度についてお尋ねがございました。御指摘のありました県教育委員会が所管をしております県指定文化財保護事業というものは、県指定になってございます無形民俗文化財の衣装、道具、それから舞台等の維持、保存というものを目的にしたものでございまして、直接的には地域おこしやまちづくりというものを想定した助成制度ではございません。
 地域の活性化の観点から、無形民俗文化財の活用促進についての考え方、お尋ねがございました。文化財を積極的に地域づくりに活用していきますことは、県として取り組むべき指針となってございます。先ほど述べられた指針にそう記されているわけでございまして、このため知事部局では、京築地域で京築神楽を活用した文化の力蓄積プロジェクトにおきまして、神楽公演などを通じた地域の魅力発信やにぎわいづくりに県、市町村一体となって取り組んでいるところでございます。また、個性ある地域づくり推進事業というのがございまして、これによりましてうきは市の文化財保護活用基本計画の策定事業を助成するなど、市町村が行っておられます文化財を活用した地域振興事業を支援をしてきているところでございます。今後、教育委員会及び知事部局連携しながら、市町村に対しまして無形民俗文化財が地域活性化のための有効な地域資源であること、これを周知をし、その活用がさらに推進されるよう助言も行っていきたいと思います。またあわせて、すぐれた取り組みについて支援をしてまいります。さらに、国や民間団体が行う助成事業につきましても、市町村に対して広くその内容について情報提供を行い、その活用について働きかけをしてまいります。

◯議長(松尾 統章君) 杉光教育長。
*教育長答弁

◯教育長(杉光 誠君)登壇 地域活性化に向けた文化財の活用、推進体制についてでございます。県教育委員会といたしましては、県指定となっております無形民俗文化財について、道具や衣装の修理等に係る助成を行うとともに、国、民間団体の事業を活用し、地元自治体と十分協議をしながら文化財の保護に努めているところでございます。今後は、地域の文化財は地域で守るという基本理念のもと、無形民俗文化財が地域活性化に活用されますよう、関係部局と無形民俗文化財についての情報共有を図るとともに、地元自治体がつくるまちづくりの組織ができた際には、これに積極的に参画し、指導、助言を行うなど一層の支援に努めてまいりたいと考えております。

◯議長(松尾 統章君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 知事に二点再質問をさせていただきたいと思います。
 知事の最後の答弁で、無形民俗文化財の活用促進について、すぐれた取り組みに対して支援を行うとのことですけれども、支援は非常にいいことなんですが、すぐれた取り組みというのがひっかかってしようがありません。御説明さしあげたとおり、無形民俗文化財は博物館などで維持、保存されている有形文化財と違い、長きにわたり地域の人々が自発的に保護、継承、活用されているもので、その取り組みに県として優劣をつけるのは、ちょっと私としては違和感を感じます。
 その中で、すぐれた取り組み、支援を行うと言われたすぐれた取り組みとは、何をもって判断をされるかというのを教えていただけますでしょうか。また、組織体制、無形民俗文化財の活用に関する地域づくり、まちおこしに対する活用に対して、組織体制に関する問いについては教育長が答弁をされておりますが、過去の質問にて、農作物の鳥獣被害とか伝統産業保護、水害対策について、県庁内で窓口が各所に散らばっていることによる対策の難しさを指摘して、知事にはいろいろと対応いただいております。しかしながら、それらは全て知事部局の中での連携でした。今回は、教育庁が主体的に保護して、それを予算提出権とあと条例制定権を握る知事部局が活用すると、こういう指揮命令系統が全く違う部局間をまたがる連携をお願いしているわけです。今までの部署間連携とは違うハードルが存在すると思っております。
 同様の事例として、世界遺産登録推進室が挙げられると思います。これは組織をつくって、事業予算を与えて、教育庁から知事部局に人を出して、連携体制を整えて、世界遺産登録という部局間をまたがる目的に邁進されております。今回の質問に当たり、教育委員会及び知事部局の幾つかの担当部署の皆様に、何度もヒアリングをさせていただきました。すると、どうぞどうぞ、いえどうぞどうぞおたくが、いやいやそちらでどうぞどうぞと、テレビで見たような光景が、お互い遠慮し合っていらっしゃる様子を見るにつけ、非常に溝が深いなと心配をしております。やはりここは、知事が声を上げて、具体的なミッション、そういったものを知事部局側に与えるなどしなければ、文化財保護基本指針の実現はおぼつかないと思いますが、知事は県トップとしてどのように部局間の連携をとり、効果を上げるのか、もう少しかみ砕いて説明をいただけますでしょうか。
 以上、お願いをいたします。(拍手)

◯議長(松尾 統章君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず、支援の対象として、すぐれた取り組みということでお答えを申し上げましたが、私が申し上げたかったことは、地域の資源の有効活用ということで地域の活性化、それにつながる、そういう視点から、すぐれた取り組みと申し上げたつもりでございます。
 第二点に、先ほどもお答えいたしましたように、保護の基本指針というのがありまして、そこの中には活性化にも活用していこうということがうたわれておるわけであります。それを具体化していくために、教育委員会と、それから知事部局がそれぞれ維持、保存という観点からと、そしてそれを地域活性化あるいは地域のアイデンティティー、それの確立、そういったこと、いわゆる教育委員会がやっていない部分のところ、そういう役割、それが両方相連携しながら、この無形民俗文化財、それが保存、継承、そして活用がされると、そういうことを、先ほど御答弁いたしましたとおり、教育委員会と知事部局が連携をしながら支援をしていきたいと思っているわけであります。