地方分権改革シンポジウム参加(後編)

昨日のブログの続きです。
地方分権改革シンポジウムの第二部は基調講演を行った片山善博前総務大臣がコーディネーターとなり「国出先機関の移管実現と地域の自立」をテーマにパネルディスカッション。パネラーは神野直彦東京大学名誉教授、井戸敏三兵庫県知事、嘉田由紀子滋賀県知事、古川康佐賀県知事、村上仁志関経連地方分権委員長、松尾新吾九経連会長とこれまた錚々たるメンバー。
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以下、備忘録↓

神野教授:
○出先機関改革は諸刃の剣。デザイン次第では強烈に国の権限を強くする場合もある。
○今回のアクションプランにも機関委任事務(法的にはあくまで委任した「国の事務」であって、「地方公共団体の事務」とは観念されない事務)的コンセプトを持ち込まれようとしてた。最終的には消えたが、これをやられると折角の権限委譲は骨抜きになる。今後も注意が必要。

井戸知事:
○関西広域連合設立の背景は、関西全体で取り組むべき観光や防災など多くの課題について関西として取り組む主体が無かった。そこで国の対応を待たずにとにかく受け皿を用意して国を動かす為に関西広域連合を作った。
○関西広域連合の委員会は知事、議会は各県議会議員で構成される。つまり住民の意思が反映されやすい仕組みになっている。

嘉田知事:
日本は成長社会から成熟社会へ移行している。成長社会は富の分配を政治は考えれば良かったが、成熟社会ではリスク・負担の分配を考えなければならない。現状のような決定機関が現場に無い仕組みではタイムリーな判断が出来ない。

古川知事:
JR九州とNEXCO、DoCoMo九州とNTT西日本、どちらに親しみがあるか?私は地元九州に本社があるJR九州・DoCoMo九州に親しみを感じるし、地元の感覚に近い判断が出来るのは大きなメリット。

片山氏:
東京は国が乗り出して地域全体のデザインをやっている。関西は誰がやる?近畿整備局?これが進歩の違い。

神野教授:
将来的に財源の問題が立ちはだかる。
フランスの広域連合は課税権がある
スウェーデンは現在道州制の実験中だが、課税権もあるし財政高権もある
EUは通貨高権はあるが財政高権は無い
日本はアクションプランに財源関連の記述はたった一行しかない。

以上、まとめ終り。
雑駁な備忘録ですが、興味の有る方は別途質問して下さい。分かる範囲でお答えします。

ところで大きく話は変わりますが、この動画面白い

橋下徹大阪市長とMBSの女性記者の5月8日登庁時市長囲み取材における「君が代問題」に関するやりとりです。
このインタビューを元にこんな新聞記事が出来上がります

大阪市の橋下徹市長(42)は8日、登庁時の記者団のぶら下がり取材で、大阪府が施行した君が代起立条例に関して“逆質問”を繰り返し、30分近く、まくしたてた。「ここは議会とは違う。対等の立場」「質問に答えなければ回答はしません」「答えられなければここへ来るな」などとヒートアップ。登庁時ぶら下がり取材の全時間、キレ続けた。また同日夕、府市統合本部の会議後に開いた会見でも、終了間際に橋下氏自らこの件を切り出し、約20分にわたり持論を展開した。(以下略)

橋下市長が記者に30分の「公開口撃」 2012年5月9日9時25分 日刊スポーツ

自分は、正直な話、橋下市長について首をかしげる部分も多いのですがこういう訳の分からないマスメディアの取材姿勢と印象操作のカラクリが見えてしまうと多くのまっとうな国民は橋下市長擁護に回るだろうなぁと思います。
このオリジナルのやり取りを元にMBSがどんな編集映像を造り出し「報道」するのか興味津々です。5月11日毎日放送で夕方放送のVOICEで特集されるとのこと。

昔ならテレビに出た画像、新聞の記事、それが我々一般人に伝わる事実となっていましたが、今は一次情報に直接アクセス出来るのが良いですね。取材される側もすべての情報ソースを公開する事により自分を守る事が出来ると思います。

地方分権改革シンポジウム参加(前編)

先日の誕生日には本当に多くの方から御祝いのメッセージをFacebookに頂き有り難うございました。幾つになっても誕生日を祝って頂く事は嬉しいものです、皆さんのお言葉を励みに頑張ります!

一昨日は地方分権改革シンポジウムという経団連主催の会合に参加していました。経団連会館の大ホールは立ち見が出るほどの満席で、この問題に対する関心の高さが感じられました。
基調講演とパネルディスカッションの二部構成で、基調講演は元鳥取都知事で前総務大臣の片山善博氏による「出先機関改革の意義と課題」というテーマでした。
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備忘録代わりに纏めておきます。

出先機関改革の意義:
○出先機関において意思決定を行うトップは国からの人材で1-2年で交代する。色んな分野で知見を持った人間が地域に蓄積した方が良い。
○国・県・市で重なる業務も多く、行政改革の観点から意味がある。
○地域のことは地域で決める方が適切な答えが出るのでは。

出先機関改革に反対する人達:
○官僚・・・組織を改革することは、組織の中で描いた人生設計を壊してしまう可能性が有り、そこに恐れがあるのは理解できる。
○自治体・・市町村は反対も多い。国から補助金を貰っている立場上なかなか賛成しにくい部分もある。県への反発もある。県は日頃から基礎自治体との信頼関係作りに努力すべき。
○業界・・・土木建設業界は既存の出先機関と構築した信頼関係の変化に対する不安があるだろう。
○住民・・・自治体に対する不信感。しかし、地方に業務が降りてくることにより可視化が進めば自ずと不信感は払拭される。

大災害に備えて国直轄などの議論をどう考えるか?:
東日本大震災で活躍したのは自衛隊(国の組織)と消防(市町村の組織)。つまり人員・機材が何処に配置されているかが問題で、何処の組織(国or県or市町村)であるのかはあまり問題でないのでは?

関西広域連合における「奈良問題」をどう乗り越えるか:
いざとなったら関西圏から中部圏に移管して貰ってもよいのでは?政治判断としての決め方の問題。

四国広域連合構想をどう評価するか?:
経産局だけ移管するという戦線縮小の流れは、政府の実績作りに利用されてしまうのではないか?

出先機関改革を進めるための「基礎工事」:
官僚は反発する、だからこそ真の政治主導が必要。
国から地方へ仕事が移るにあたり、地方において住民の信頼を得なくてはならない。

以上、まとめ終り。論点を整理して、もの凄く噛み砕いたお話しだったので勉強になりました。ただし「反対する人達」の項目は反対者があげている出先機関移行のデメリット等をもうちょっと具体的に反駁した方が説得力があるかな、と。パネルディスカッションの後に片山氏自身仰っていましたが、今回は基調講演もパネルも基本的に出先機関移行に賛成の方が参加していたので、議論を深める為に次の機会には反対の立場の方にも参加したらどうだろうの事でした。

長くなりましたのでパネルディスカッションの件は次回書きます。

さて、明日はみやま市の政治学級二十日クラブという団体に招かれ県政報告を行う予定です。大体二ヶ月に一度くらいのペースでこの手の講演を行わせて頂けるようになりました、有りがたいことです。
この団体は名前の通り、地元有権者がもっと地元の政治を学び政治意識を高めることを目的とした団体です。みやま市の選挙管理委員会や生涯学習課が所管しており、イデオロギーに紐付いた団体ではありません。参加者の方の予備知識も豊富でしょうから、期待はずれにならないよう準備も大変です。どんなやり取りになるのか楽しみに資料を作成しています。

大阪都構想と関西広域連合視察

私が副委員長を仰せつかっている広域行政推進対策特別委員会にて大阪を視察してきました。
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我が福岡県をはじめとする九州7県は2010年に国の出先機関を丸ごと受け入れる「九州広域行政機構」の創設を国に提言しており、各県議会サイドも「九州の自立を考える会」を設立し足並みを揃え推進しているところです(関連エントリ)。今回は橋下徹大阪維新の会代表で話題の「大阪都構想」と「関西広域連合」を調査するために関西経済連合会、大阪市、大阪府、大阪維新の会、関西広域連合等を訪問してきました。

昨年の大阪W選挙の熱狂冷めやらぬ中の訪問、私も一体大阪都構想とはなんぞや?関西広域連合との関係やその先の道州制への道筋は?等々、期待を膨らませておったのですが正直肩透かしを食らった感じです。

先ず、大阪都構想について。
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関経連や大阪市・府の方々も大阪都構想の詳細については未だ詳細を認識しておられず様子見の状態。またどれだけ大阪市・府側でロードマップやマスタープランを作成しようと法律改正など制度が伴わなければ絵に描いた餅になる非常に不安定な状況である事を認識させられました。いつの間にか堺市が大阪都構想から離脱している事も報道ではあまり触れられていません。ある委員が「堺市の離脱により大阪都構想は有る意味破綻しているとも言えるのでは?」という突っ込んだ質問をされましたが、「堺市も最近政令指定市になったばかりなので当面は参加しないという判断だと思う。ただ将来的には変わってくると思う」というなんとも奥歯にモノが挟まったような回答でした。

また私自身疑問に思っていた、都構想から道州制への道筋。

橋下市長が府知事時代に強調されていた地域主権・道州制とは、現在国や府県が抱え込んでいる権限をなるべく住民サイド(道州及び基礎自治体)に移管、現在の府県の役割において広域的なものは道州へ、住民に近い狭域的なものは基礎自治体へ吸収され、都道府県そのものは消滅するようなイメージを持っています。しかし大阪都という強大な中間自治体を作ってしまうと、大阪都そのものが道州制における余計なレイヤーになってしまう危惧があります。一方で、堺市が「最近政令指定都市になったから、今すぐに大阪都構想には参加したくない」というのと同様な感情が大阪都民に生まれることも想定されます。大阪維新の会に対しその点について質問したところ「維新の会は大阪都構想を実現させる会」「道州制には色々ある、我々は(PHP研究所江口克彦氏が唱える)地域主権型道州制を目指す」「しかし地域主権型道州制は国の法律・憲法改正まで必要」という御回答で、私の疑問を払拭させるには至りませんでした。

なんとも言えないモヤモヤ感。聞くところによると、東京都においては特別自治区と都の対立というのもあるらしいです。それじゃ大阪都になっても大阪市と大阪府のような対立は解消しないのでは?という思いもある。それを財源調整においてコントロールするのならば特別区の独立性は踏みにじられるわけです。一方、大阪都が特別区と既存の基礎自治体の両方を司ることになれば、今まで府と市がそれぞれやっていた異質な業務を都として両方抱え込む訳で、逆に混乱するのではないかという疑問。ここんとこは既に都制度を敷いている東京を調査して検証できればと思います。

非常にネガティブな物言いになってしまいましたが、それでも橋下市長率いる維新の会の勢いというか突破力は本当に魅力的に感じましたし、「明るい展望が開けない」「現状を変えたい」という有権者の閉塞感も思い知らされました。その中で、まずは九州においてそのままお手本に成り得る関西広域連合と情報交換しながら、国の出先機関の受入を目指していく方向性は間違っていないと認識を強めたところです。

今回の視察、今までマスコミで得た情報とは全く違う生の声が聞けて大変参考になりました。やはり現場の声を聞くのは大変重要ですね。ご対応頂いた関係各位に心より御礼申し上げます。