平成28年度予算特別委員会「園芸作物振興について」

◯板橋 聡委員 園芸作物振興についてお伺いします。
 私の地元、みやま市を含む県南地域は、肥沃な筑後平野に広がる農村地帯で、農業こそが各地域が持つ特性や資源を生かす基幹産業であります。これこそが雇用のベースカーゴであると考えております。
 今議会の我が会派の代表質問においても、TPP協定により園芸品目についても関税撤廃に向けて大きく動き出したことから、今後ますます振興施策に力を注いでいかなければならないと指摘したところです。
 知事からは、ミカンを初め果樹は植えつけてから収穫するまでに年数を要するため、早急な対策が必要であることから、県が開発した極早生ミカンの早味かん、甘柿秋王などへの改植に対する支援を強化するとともに、高収益型園芸農業の予算を拡充するとの答弁がありました。
 そこで、まず、二十八年度の新規施策として打ち出された高収益型園芸事業の果樹緊急対策について、その内容と狙いについて説明願います。

◯加地邦雄委員長 鐘江園芸振興課長。

◯鐘江園芸振興課長 本対策は、果樹におきます乗用防除機、それから乗用草刈り機といいました省力機械の導入を支援するものでございます。これは、早味かんや秋王など改植する際に苗木の間隔を広く、また直線的に植えつけることで、これらの機械の導入が可能となりますことから、改植の加速化とあわせまして生産の効率の向上を狙ったものでございます。

◯板橋 聡委員 この高収益型園芸事業には、我が会派は平成四年度、他県に類を見ない大型の県単独事業として創設した当初から、深くかかわってきております。そして、近年では、二十二年度の雇用型経営対策、二十三年度の六次産業化対策、そして本年度から実施している施設長寿命化対策など、県当局に対し、その時々の情勢を踏まえたメニュー提案も行ってまいりました。
 継続的に本事業を実施し、県内各地域の園芸農家を強く後押しすることで、今では園芸農業が本県農業の大きな柱になったところであります。また、国に全てを頼らず、本県独自で実施してきたことは、各地域の農家からも高く評価されており、期待も大きいものと考えております。
 このような中、TPP協定が大筋合意されたことを踏まえ、県の財政事情が厳しい中で、今回、果樹緊急対策として五千万円を追加措置し、総額十四億五千万円に拡充するわけであります。我々は、国内外の産地の厳しい競争にさらされようとしている農家の不安を解消し、意欲ある取り組みを確実にフォローし、さらなる振興につなげていかねばなりません。
 時を同じくし、政府はTPP協定を踏まえ、二十七年度補正予算で産地パワーアップ事業を創設しました。この事業の狙いは、産地の競争力を強化するというものであります。その意味からも、本県の高収益型園芸事業と目的は一致するものであり、この国庫事業も最大限に活用し、各地域で頑張っておられる多くの方々の期待に応えていくことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

◯鐘江園芸振興課長 県といたしましては、国が競争力の強化を目的に新たに創設いたしましたこの産地パワーアップ事業を活用しまして、強風に耐えるハウス、それから集出荷施設など、比較的事業費が高い施設につきまして支援することとしておりまして、高収益型園芸事業とあわせまして実施することで、県が強く進めております収益性の高い園芸農業の確立に資するものと考えております。
 このため、二十八年度予算としまして十八億七千万円余をお願いしているところでございまして、この両事業を実施することで多くの意欲のある取り組みにしっかりと応えてまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 次に、私の地元、みやま市はミカンの有数な産地であり、柑橘部会では糖度の高いよりすぐりのミカンを区別して販売しています。この取り組みは、十年ほど前に、本当に品質のいいものは高く売ろうということから始まったもので、これにより市場の評価も高まり、価格も安定し、経営の見通しも明るくなったとの声が多くなっています。
 この取り組みを積極的に進めた伍位軒という中山間地の地区では、数年前からUターンする若者がふえて、それに伴い小学生以下の人口もふえ、本年度、全国豊かなむらづくり表彰事業において農林水産大臣賞を受賞するなど、地元出身の私にとっても非常に誇らしいことと思っております。
 彼らは、産地独自品種の北原早生の導入にもいち早く取り組み、従来のミカンのおよそ一・五倍の価格で販売するなど、産地を牽引しています。また、本年度販売を開始した早味かんについても、極早生ミカンの起死回生の品種として作付を拡大したいとの思いも強いようです。
 露地ミカンのスタートを飾る極早生ミカンは、糖度が上がりにくく、ミカン消費の足を引っ張るという理由から、国は作付を推進しないとの方針であるとのことです。私も、おいしくないミカンを出荷することは非常に問題だと考えています。消費を伸ばすためには、おいしいミカンを安定して出荷することが基本であります。
 そこで、新たな施策として打ち出している早味かんへの改植支援についてお尋ねします。この県単独事業は、国の方針に沿っていないように見えますが、どのような考えで実施されているのでしょうか。

◯鐘江園芸振興課長 委員御指摘のように、国は極早生ミカンの作付は推進しないとの方針でございます。しかしながら、一般的な極早生ミカンの糖度が九度程度であるのに対しまして、本県の早味かんは糖度十度を上回りますことから、市場からも高い評価を得ておるところでございます。
 このため、早味かんを本県のミカン産地振興に欠かせないものと判断をいたしまして、県単独で改植を支援することとしたものでございまして、来年度の本格販売に当たりましては、価格形成力のある百貨店なり高級フルーツ店、こういったところで販売を促進してまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 新しくできました選果場を使って、しっかりといい品質のものを出したいということで、地元柑橘部会の期待も大変大きいので、しっかり取り組んでいただくようお願いしておきます。
 さて次に、花卉の振興策について伺います。
 花卉といっても、福岡県が開発した秋王の柿でも、豊前海一粒かきのカキでもなく、花の花卉です。私の地元みやま市では、ナスやミカン、セロリに加え、花の栽培も盛んです。JAオリジナル品種で緑が鮮やかな観葉植物、エメラルドウェーブ、花の色が豊富で大輪のダリア、らせん状の緑のつるが特徴のリキュウソウなど、私も目をみはる新たな種類も多く生産されており、市場からも高い評価を受けているようです。
 しかし、消費者にはまだまだ知られておらず、もっとこれから花の魅力をPRしていくことが大切だと考えます。県でも既に消費の拡大に力を入れておられるようで、PRイベントや企業オフィスでの展示など取り組まれていると伺っております。
 その中の一つに、小学生を対象としたフラワーアレンジ教室が実施されているようですが、私はこの取り組みに非常に注目しております。消費を伸ばすために子供のころから花に親しむ習慣をつけることは、非常に大事なことだと思っていますが、二十七年度の実施内容を伺ったところ、実施数はわずか二十八校とのこと。私は、そんな規模では全然足りないと思っております。せっかくのいい取り組みなので、もっともっと拡大していくべきではないでしょうか。
 予算には限りがあるのは理解しますが、例えば、母の日の後のカーネーションなど、値段が下がったものを生産者に安く提供してもらうとか、工夫をすれば、より多くの子供たちに花に親しむ機会をふやすこともできるのではないですか。課長の考えを伺いたいと思います。

◯鐘江園芸振興課長 委員御指摘のように、子供のころから花に親しみ、そして花のある生活のよさを体験してもらうということは、花の消費を拡大する上でも重要な取り組みであると認識して実施しておるものでございます。
 御提案いただきましたように、生産者、それから花屋さん、こういった方々との連携を深めまして、工夫を凝らすことによりまして、実施する学校数をふやし、より多くの子供たちが花のよさを体験する機会をつくってまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 注目しておりますので、よろしくお願いします。
 さて、本県は全国三位の花の生産県です。しかしながら、家庭の消費は全国県庁所在地の四十一位と、生産していますけれども、なかなか花を買うという習慣が少なく、非常に低い状況にあるとのことです。本気で消費を拡大しようと思えば、さらに踏み込んだ取り組みが必要と考えております。
 そうした中で、次年度の新たな施策として、福岡の花購買促進事業が打ち出されておりますが、具体的にどのような内容なのか、説明をお願いします。

◯鐘江園芸振興課長 家庭消費の拡大に向けまして、県内の八百店の花屋さんと連携をいたしまして、週末に花を気軽に買って帰っていただくウイークエンドフラワーキャンペーンを実施することとしております。具体的には、地元テレビ番組での県産花卉の紹介や、花を買ったことがない若者に街角で花のよさをPRいたします。さらに、持ち帰り用の手軽なバッグをつくりまして、週末には家庭に花を飾るということを浸透させてまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 まずは、生産をしている福岡県から花の消費が拡大することを祈っております。
 さて、平成二十六年度に内閣府が行った農山漁村に関する世論調査によりますと、都市住民の三割が農山漁村地域に定住してみたいと答えており、この調査から田園回帰の流れを酌み取ることができると思います。
 一方で、後継者問題で地元農家は大変頭を痛めております。やはりTPP問題等々ある中、しっかりとした後継者あるいは新たな生産者の育成がなければ、海外と日本の競争の中でしっかりと打ち勝つことはできません。
 こういう好機を捉えて、しっかりと農外からの参入者を受け入れるべきだと私は思いますけれども、県はどのような支援を行っていますか。

◯加地邦雄委員長 近藤経営技術支援課長。

◯近藤経営技術支援課長 新規就農者の対策につきましては、就農前の情報発信ということで、セミナーや相談会を開催しているところでありますし、就農時につきましては、営農から生活までを一体的に支援する市町村の相談窓口の設置を支援しているところでございます。その中で、いろいろ研修の取り組みなり、空きハウスや空き農地の情報収集、あっせんといったような取り組みもされているところでございます。それから、就農後の所得確保に対しては、青年就農給付金を活用した支援もさせていただいております。

◯板橋 聡委員 お答えは、やっていると、とにかくやっているんですということですが、本当にそうでしょうかね。私は、地元のほうでいろいろな生産部会との意見交換をしております。具体的に申しますけれども、ナス部会など、今、非常に後継者も少なくて、県からもそういった部分で支援が受けられるのか心配をされている部会がございます。そういったところは最近、空きハウスとか空き家がふえてきたと、こういうのも含めて何とかせないかんということで、彼ら自身、青年就農給付金を利用して、農外からの新規参入希望者がいた場合、その研修を積極的に受け入れたいと。さらに地元で安心して定着できるように、空きハウスとか空き家のあっせんの仕組みづくりに対して支援できないのでしょうかという悲痛な叫びを私のところに訴えてきていらっしゃいます。
 先ほどの井上順吾委員のおっしゃった人の思いに応えるということをしっかりやっていただかなければ困るのですけれども、この事業は一体何年からやっておるのですか。

◯近藤経営技術支援課長 営農から生活まで一体とする市町村の相談窓口につきましては、平成二十四年度から取り組みを進めているところでございます。

◯板橋 聡委員 平成二十四年からということで、もう丸四年も過ぎようというところでありますけれども、その間に具体的な相談件数、あるいは県外からの新規就農の数は一体何人いるのでしょうか。

◯加地邦雄委員長 執行部は答えられますか。

◯近藤経営技術支援課長 新規就農者の状況につきましては、ここ三年ほどは二百名を超えるところで推移をしておりまして、そのうち農外からの新規参入者につきましては六十名前後で推移しております。そのうちの県外からの分については、申しわけありません、今、手元にございません。

◯板橋 聡委員 先ほど言いましたとおり、内閣府のほうで田園回帰したいというような調査結果が出ておるわけですけれども、それをしっかり受けとめられているかどうかを判断できなければ、この施策が合っておるかどうか、全然わからないわけですね。そういったことに関して、一体、県のほうから地元のどこと連携をとって、どういうふうなフィードバック等々しているのでしょうか。

◯近藤経営技術支援課長 県といたしましては、先ほどから申し上げています市町村が設置する相談窓口の中で、農協や農業委員会等、関係団体と一緒になって、またいろいろな議論をさせていただいているところでございます。

◯加地邦雄委員長 この際、委員各位に申し上げます。本日の審査は午後五時までを予定しておりましたが、議事の都合により、このまま続行させていただきます。よろしくお願いいたします。

◯板橋 聡委員 結局、そういうふうにやっている、やっているという話ですけれども、地元で全く、その声が吸い上げられていないと。そういったところに対しての指導等々の体制はどうなっているのか。具体的にみやま市の中で話を聞かせていただけますか。

◯近藤経営技術支援課長 県内には、直接農業者に接する普及指導センターがございまして、そちらのほうがみやま市の相談窓口設置の中で、先ほど言いました農協なり農業委員会さんと一緒になって議論をさせていただいているところでございます。

◯板橋 聡委員 いや、違います。普及センターがやっているではなくて、どういう体制で具体的に何をやったか。こういう困った人の声が上がってきていないということに対して課長はどう思われるか、教えてください。

◯近藤経営技術支援課長 みやま市において相談窓口の取り組みについては、就農相談会が開催されております。その声が上がって……。ちょっと申しわけございません。

◯板橋 聡委員 いやいや、就農相談会の話ではないんですよ。就農相談会は、こっちから出す話でしょう。現場の声をどうやって吸い上げているかという話を聞きたいんですけれども、部長、どう考えられますか。

◯加地邦雄委員長 小寺農林水産部長。

◯小寺農林水産部長 現場の声につきましては、少し繰り返しになるところもありますけど、私どもは普及センターがございます。普及センターのほうで農協、それから関係の市町村、そういうところと話しながら、どういう方が入ってくるか、そういう中で、その方がどういう課題があるのか、どういう面で不安を持っておられるのか、そういうのをいろいろ聞いていく、そこがワンストップの窓口でございまして、そういうところで入ってこられる方のいろいろな課題、不安、そういうものを聞きながら、そういう方が定着していくように、いろいろ指導をやっているところでございます。

◯板橋 聡委員 指導はいいんですけれども、実際、現場から、こういうことをやってみたいんだと、こういうふうにやったらどうなんだというアイデアが出てきているんですよ。それをしっかりすくい上げて、実際の施策につなげていくのが一番大事な仕事だと思っております。
 これに関して、TPPだとか、いろいろな問題で地元の農家は物すごい不安を抱えているわけですね。親が不安だと、息子が農業を継ごうなんて思わないですよ。そう思いませんか、部長。

◯小寺農林水産部長 確かに、新規就農される方にとりましては、やはり今実際やられている方の経営、そういうものが非常に関心もありますし、そういうのがきちんとやられていることが一番重要だと思っております。

◯板橋 聡委員 だから、何か回答になっているのかどうか、よくわかりませんけれども、今後TPP対策等を考えたときに、今回は高収益園芸に関する新たな施策というのはしっかり御説明いただきましたけれども、実際にそこの現場で就農して、生産する人がいないといけないと。原資があって、人がいて、この二つにさらに知恵が加わって、ちゃんとしたTPP対策等々がとれるということになるのだと思いますけれども、私は今の回答ではとてもちょっと、それをきちんと三位一体になってやる体制が今の農林水産部のほうでできているかどうか心配でございます。ぜひ、この件に関しては、知事保留をさせていただきたいと思います。

◯加地邦雄委員長 ただいま板橋委員から申し出がありました知事保留質疑を認めることにいたします。なお、知事保留質疑は三月十八日金曜日に行う予定でありますので御了承願います。

◯板橋 聡委員 終わります。(拍手)

平成27年2月議会一般質問「中山間地における果樹産地の新規就農者対策」「空き家予備軍対策」

録画中継にて知事答弁を含め視聴する事が可能です
板橋聡の議会質問録画中継

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質問要旨 一、中山間地における果樹産地の新規就農者対策
     一、空き家予備軍対策
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◯議長(加地 邦雄君) 板橋聡君。(拍手)
*板橋議員質問

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自民党県議団の板橋聡です。
 私は、平成二十三年に初めての当選をさせていただいて以来、藏内会長初め自民党県議団の御指導を仰ぎながら、一般質問十二回、予算及び決算特別委員会にて二十一回質問の場に立たせていただきました。初めての一般質問では、県内地域格差是正について質問を行い、地域それぞれの特性を生かし、一極集中ではなくバランスよく発展することが福岡県の最大の強みになることを知事と確認をさせていただきました。一期四年、締めくくりとなる三十四回目の質問となりますが、この思いは変わっておりません。地域特有の資産をどう活用していくかという視点で、本日は、中山間地における果樹産地の新規就農者対策と空き家予備軍対策の二つについて質問をいたします。
 まず、中山間地における果樹産地の新規就農者対策についてです。みやま市を初め農山村地域では、人口減少対策や定住化対策など地方創生の取り組みが急務であります。その一丁目一番地が地域特有の資産である肥沃な農地を持続させる、つまり主要産業である農業の維持発展を図ることだと私は信じております。昨年の九月議会でも触れましたが、高齢化による農業者の減少が続く中で、継ぐ意思と誇りを持った新規就農者をどう確保するのかが一つの鍵を握ります。県南地域は、みやま、八女、朝倉、うきはなど、ミカン、柿、ブドウ、スモモなど、県内有数の果樹生産が盛んな地域であります。しかしながら、これらの産地は中山間地域でもあり、後継者不足が深刻です。加えて、果樹は苗を植えて収入を得るまでに数年を要するため、栽培を始めたその年に収入が得られる野菜などと比べ、農外からの新規参入が取り組むには厳しい部門であるとの声が多く聞かれます。最近、農業全般では新規就農者がふえてきているような話もありますが、果樹産地においては、果樹や中山間地特有の課題が重くのしかかっております。新たな就農者が低迷すれば、地域特有の資産である果樹産地を維持できるのか心配です。新規就農の育成については、県もさまざまな施策に取り組んでいるのは承知していますが、果樹には特有の課題が存在し、一律の施策ではうまくいかない側面があります。
 そこで知事に質問です。野菜や米麦と比較し、果樹における新たな就農者、農外からなのか、後継者なのかも含め、現状はどのようになっているのかをお示しください。
 また、中山間地の振興、果樹産地の維持という視点を踏まえ、新規就農者の確保をどのように行っていくのか、知事の所見をお聞かせください。
 ところで、知事は、地方創生の取り組みについても、常々、強みを生かすこと、仕組みをつくることが大事と言っておられます。私もその理念には賛同いたします。みやま市の柑橘部会では、十年ほど前から、園地登録制度を設け、糖度の高いえりすぐりのものとレギュラー品を別ブランドとして区別して販売し、ブランドごとに代金を精算する方式を導入しております。本当に品質のよいものは高く売るという園地登録制度の導入により、販売価格も上昇し、親が自信を持って後継者に帰ってこいと言えるようになった、あるいは友達が就農するのを見てUターンもふえてきているとの明るい話も聞きます。
 先ほど触れたように果樹産地特有の課題も山積している中で、みやま市の柑橘部会のリーダーが強い意志を持って進めてきた産地育成の手法は、県内でも一歩進んでいるとの評価をいただいております。このような取り組みこそ、これまでの長きにわたり産地が培ってきた品質の高いものをつくる技術力や、農家が一致団結をする組織力を生かしたものであり、まさしく、知事が申される産地の強みが生きた取り組みだと考えます。ぜひ、この取り組みをさらに磨き上げて、今後の果樹産地育成に応用することを要望いたします。
 中山間地が今後とも果樹産地として振興し続けるためには、産地関係者はもちろん、行政も一丸となり、後継者から見ても魅力のある収益性の高い経営基盤を構築することが産地振興の鍵であります。
 そこで知事に質問です。新規就農者の確保とも密接に関係する果樹産地における収益性向上のための取り組みをどのように進めようとされているのか、お示しをください。
 続きまして、空き家予備軍対策について質問いたします。私が説明するまでもなく、空き家問題は各地で顕在化しております。十二月議会の自民党代表質問においても大きなテーマとして知事の姿勢をただし、その際、知事は、市町村、民間事業者に呼びかけて官民一体となり空き家対策を総合的に推進するための協議会を設立すると答弁しました。
 そこで知事にお尋ねします。スピード感を持って対応すべき空き家対策ですが、現在、協議会設立はどのような状況でしょうか、お示しください。
 空き家問題は、空き家が増加することで地域の活力が低下するなど多くの問題を抱えており、まずは空き家の利活用を促進することが重要です。さらに、空き家の利活用をする際に、清掃、リフォーム、リノベーションを行ったり、賃貸契約や不動産売買、引っ越し作業が発生したり、地域において大きな経済効果が見込めます。まさに、地域の眠れる資産です。
 そこで知事に質問します。空き家の有効活用は地域振興のみならず、経済活性化にはかり知れない可能性を秘めています。廃屋になったり、手の施しようがないほど老朽化する前の空き家の利活用を図るべきでありますが、実態がわからなければ対策の打ちようがありません。まずは利活用が可能で、利活用をすべき空き家の実態把握は行われているのでしょうか。また、空き家は増加傾向の上、その状態も刻々と変化いたします。継続的に空き家の状態を詳細に把握すべきと考えますが、知事の見解をお示しください。
 今回、空き家の詳細な状況把握を要請するのは理由があります。地元の方と、最近ここら辺も空き家がふえてきたねという話をしていたところ、いやいや、実は本当の空き家は少ないんだよと言われたのが、質問趣旨を空き家予備軍対策としたきっかけです。一口に空き家と言っても、皆さんが頭の中に浮かべるものは十人十色ではないでしょうか。賃貸や売却のために空き家状態になっているものや、別荘などの用途で日常的に使用されていないものは別として、その他の空き家と統計上呼ばれるものは次の三つに分かれると考えます。一つ目は、老朽化した空き家、廃屋です。テレビなどで最近よく報道される、倒壊の危険云々とか、更地にすると税金がかかるから壊さないという議論に上がるのがこれです。二つ目は、住む人、利用する人が死亡したりしていなくなった状態の空き家。私なんかは空き家と言えばこれを想像していましたが、これはいざ利活用しようとしても、相続人や関係者が遠方にいたりして行政として利活用を働きかけることに大変困難が伴います。そして三つ目は、これは東京を初めとする都市圏一極集中とも関連いたしますが、子供が独立したり、地元を離れた御家庭で、親御さんが御高齢となって入院や老健施設に入所したために長期不在となっている空き家です。はたから見ると、住む人、利用する人がいないから、賃貸や売却したらどうかと思える物件ですけれども、地元を離れたお子さんが月に一度はお見舞いのために帰省して宿泊するから手放せないとか、所有者は死亡したけれど仏壇があって親族がお盆とか正月に集まるから手放せないとか、もろもろの事情により中途半端な状態で、廃屋状態に一歩一歩近づいている、そんな統計上は空き家と一くくりにされるものを私は空き家予備軍と定義しました。
 そこで知事に質問です。所有者の長期不在で日常的に使用されない空き家予備軍は、所有者や関係者が明確で、事前に積極的な利活用の検討を促すことが可能です。また利活用をためらう理由も把握できれば、例えばお見舞いのための一時的な滞在をどうするかとか、仏壇の取り扱いの対応など、行政としてさらなる対策が可能となります。これら空き家予備軍は一刻一刻と廃屋への道をたどっています。空き家対策の中でも、このような空き家予備軍をきちんと把握し、重点的に利活用を促進することが効率的で効果的と考えますが、知事の所見をお聞かせください。
 知事はお気づきでしょうか、議会棟と行政棟の間に美しい紅白の梅の花が咲いているのを。紅白幕を連想させる梅の花。知事初め私ども議員も、四月に紅白幕に囲まれて大輪の花を咲かせるために必死で奮闘しているところであります。しかしながら、花はお水をやらなければ枯れてしまいます。ぜひ、栄養分たっぷりの知事答弁というお水をお願いして、私の一般質問を終わります。(拍手)

◯議長(加地 邦雄君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、果樹の新規就農者の現状とその確保についてでございます。平成二十一年度から二十五年度までの五年間、新規就農者は八百十八人いらっしゃいます。そのうち、果樹が百人、米麦とほぼ同数でございますけれども、野菜の四百八十六人に比べますと五分の一程度となってございます。また、果樹の新規就農者のうち、農家の後継者の割合が八四%、野菜の六九%に比べて高く、農外、非農家からの参入が少ない傾向にございます。このように果樹におきましては、野菜に比べて新規就農者や非農家、いわゆる農外者の参入が少ないのは、議員も御指摘がありましたけれども、成木になるまで年数がかかること、また農地の借り入れが長期に及ぶことから、なかなか園地を確保し栽培を始めることが難しい、そういったことがあると考えております。このため、新たに果樹で就農を希望される方々に対しては、相談窓口を設けている市町村と私どもの普及指導センターが連携をいたしまして、収穫が可能で貸し付けを希望される果樹園の紹介というものを進めているところでございます。さらに、果樹は、特に剪定技術がその収量に大きく影響いたしますことから、普及指導センターにおきまして、個別に現地を巡回させていただき、きめ細かな技術指導を実施しているところであります。こうした取り組みによりまして、新規就農者の方を一人でも多く確保し、果樹産地の維持発展につながるよう努めてまいります。
 次に、果樹産地における収益性を高める取り組みについてお尋ねがございました。収益性の高い果樹農業を実現していくためには、付加価値を高め、ブランド化を進めていく取り組みが重要であると考えております。このため県におきましては、まず県独自の品種を開発する、二番目に、品質を高め、安定生産をするための技術指導、あるいは機械、施設の整備を進める、三番目は、消費者の認知度を高め、販売量ないしは販売ルートをふやすための販売促進活動、この三段階あると思っておりますが、それらに取り組んできているところでございます。第一に、県独自の品種でございますけれども、全国的に有名になっておりますあまおう、これに続く品種といたしまして、イチジクのとよみつひめ、種なし甘柿の秋王、ミカンの早味かん、キウイフルーツの甘うぃというものを開発したところであります。第二に、これらの品種の品質を高め、安定生産を図っていくため、ミカンでは、糖度を高めるシートマルチ栽培、あるいは柿の秋王では、より安定して実がつく棚栽培の導入などを支援しているところであります。第三に、認知度を高めるため、私自身、関係団体の皆さんと一緒になりまして、とよみつひめやミカンの北原早生、トップセールスを行うとともに、量販店での試食販売、そういった取り組みも進めているところでございます。また、議員御指摘になりましたが、みやま市のミカン産地におきましては、普及指導センターと連携をいたしまして、糖度の高いミカンを生産し、これを他と区別をして販売する独自の取り組みを始められております。県でもこの取り組みを広め、一緒になって広めたところ、博多マイルドというブランド名で販売されるまでに至っているところでございます。なお、北原早生につきましても、この産地で品種登録されたものでございまして、糖度が高く色づきがよいと、市場からも高く評価されているところであります。県といたしましては、こうした産地みずからの取り組みを大変心強く思っております。今後とも、こうした産地と一体となりましてブランド化を進め、果樹産地の収益性の向上に努めてまいります。
 次に、空き家対策のための協議会設置についてお尋ねがございました。空き家問題は、防災、衛生、景観など地域住民の生活環境にさまざまな悪影響を与えておりまして、今後も空き家の増加が懸念されるところから、取り組みの充実強化が必要であると、このように考えております。そのため、前回お答え申し上げましたが、市町村や宅地建物取引業団体、建築設計者団体など民間事業者に対しまして参加を要請しているところでございまして、三月下旬までにこの協議会を設置したいと考えております。
 次に、空き家の実態把握についてお尋ねがございました。現在、空き家の実態調査でございますけれども、県内三十五の市町で実施されております。生活環境に悪影響を及ぼす観点から調査を行っている市町が多うございまして、利活用の観点から行っている市町は、三十五の中で十五の市町になっております。また、継続的に空き家の実態調査を行っております市町は、三十五市町のうち七市町にとどまっているところであります。このため、全ての市町村におきまして、空き家全戸を対象とし、老朽空き家や利活用可能な空き家を含めた調査が必要であり、またそれは継続して調査が行われていかなければならない、このように考えております。
 空き家の詳細な実態把握についてでございますけれども、先ほどの継続的な実態の調査に当たりましては、今後、これをもとに空き家対策、空き家の実態に応じた適切な対応を進めていくため、空き家の老朽度などの外観調査にとどまらず、空き家となった要因、所有者及びその利活用の意向などを詳細に把握していくことが必要であると考えております。このため、市町村において、こうした調査の実施とデータベースの整備が進み、それらをもとに効果的な、効率的な空き家対策が実施されていきますよう、今後設置予定の協議会の場で、しっかり市町村と検討させていただきたいと思います。
 次に、空き家発生の抑制についてお尋ねがございました。放置された空き家は老朽化をし、周辺地域へさまざまな悪影響を及ぼすことから、空き家になる前に利活用や適正管理について対策を講じていくことが重要であると、このように思っております。このため県では、中古住宅の利活用が促進されるよう、宅建事業者や県内金融機関とも連携をいたしまして、安心して中古住宅の取引を行える建物検査制度、私ども、これは住まいの健康診断と呼んでおりますが、その普及促進に努めているところでございます。今後、市町村と協力をいたしまして、先ほど来申し上げました実態調査で把握できた利活用可能な空き家の所有者等に対しまして、住まいの健康診断の利用を強く働きかけてまいります。また、当面利用する予定のない、手放したくないといった意向を持っておられる所有者等に対しましても、市町村や民間事業者と連携をいたしまして、定期借家方式に関する情報提供、適正管理の必要性についての啓発を行ってまいります。さらに、県民の皆様が空き家問題を広く認識し、事前にそれぞれ必要な対策を講ずることができるよう啓発活動や情報提供に努めまして、あわせて市町村の相談体制の充実を図るため、相談対応マニュアルの策定などを行って進めてまいります。これらの取り組みを設置予定の協議会において実施をいたしまして、空き家対策をしっかり進めさせていただきます。

平成23年6月議会一般質問「県内地域格差、農業振興、矢部川水系水源開発について」

公式動画へのリンク(WindowsMediaPlayerが必要です)

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆様、お待たせしました。こんにちは。四月の統一地方選挙において、みやま市選挙区のほうから初当選させていただきました、自由民主党県議団の板橋聡でございます。
 まず最初に、私ごとではございますけれども、父、板橋元昭が七期二十八年にわたり福岡県議会議員を務めさせていただいた際には、先輩議員の皆様、そして執行部の皆様にも大変お世話になりましたことを、ここに改めて御礼申し上げる次第でございます。
 私は会社員でございました。行政経験、議員経験がないままこの世界に飛び込んでまいりました。皆様の御指導、御叱咤を賜りながら、一刻でも早く県民の皆様の負託と信頼にこたえ、福岡県政発展のための一翼を担える議員となるべく努力する所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 さきの統一地方選挙で新しく小川洋県知事が誕生しました。選挙戦のさなか、私の選挙区であります、みやま市にも、遊説を初め幾度か足を運んでいただき、その都度地域住民に対して、県南は福岡の第三のエンジン、農業に夢と活力、生きがいをと、みやま市を含む県南地域へのエールと、その主要産業であります農林水産業への思いを語っていただきました。「言うはやすく行うはかたし」ですが、地域住民は県行政における県南振興について、今度こそは本物だろうと厚く期待していることを冒頭申し上げておきます。
 福岡県は、九州の玄関口として商業、サービス業を集積する福岡都市圏地域、官営製鉄所をルーツに工業都市として成長を続ける北九州地域、産炭地から文化都市へと変貌を遂げつつある筑豊地域、そして肥沃な筑後平野、一級河川筑後川、矢部川を擁し、そして福岡県の食糧基地とも言える県南地域と、方向性の違いはあれど、その地域地域が持つ地理的特徴や、はぐくんできた歴史、文化を資産とし、バラエティーに富んだ特性を生かし、一極集中ではなくバランスよく発展することこそが福岡県の最大の強みになるのは、小川知事も議会初日の所信でおっしゃったとおり、疑いのないところでございます。
 ところが一方で、福岡県の状況を定量的な切り口で見ますと、余りバランスがよいとは言えない状況がございます。例えば、人口推移を昭和六十年と平成二十年で比較しますと、福岡県全体は四百七十万人から五百三万人、約七ポイント増でございます。これを地域で比較しますと、福岡都市圏は百九十万人から二百四十一万人、二七ポイントの増。一方で、県南地域は八十九万人から八十五万人と四・五ポイントの減。さらに私が住んでおります、みやま・柳川の地域では十三万五千人から十一万六千人と一四ポイントの激減となっております。人口構成で比較しますと、昭和六十年に福岡都市圏の十五歳以上六十五歳未満のいわゆる生産年齢人口比率は約六九%、一方、みやま・柳川地域は六五・五%と、当時から約三・五%の開きがございました。それが平成二十年には福岡都市圏が六八・二%とほぼ横ばいに推移しているのに対し、みやま・柳川地域は五九・八%と六%も減少し、福岡都市圏との比較において約九%と差は開く一方です。
 こういう話をしますと、少子、高齢化の一言で片づけられがちですけれども、これはお年寄りに甚だ失礼な話で、知事が政策に掲げている七十歳現役社会のような活力ある高齢化は、寿命が延び、そして労働人口がふえるよい現象と私はとらえます。やはりこれは少子化、しかも若者世代が仕事を求めて田舎を離れ都市部に移り住むために加速に輪をかける少子化に原因が尽きると考えます。一人当たりの平均所得を見ると、その差は歴然とします。平成二十年の県全体の一人当たりの平均所得は約年間二百六十五万円、これを地域で比較しますと福岡都市圏は二百八十四万円、私が住んでおります地元のみやま地区は二百二十八万円、年間約六十万円の違いがございます。これは一人当たりの平均所得ですから、世帯で換算しますと年間百万円以上の所得格差が県内に存在する。それゆえ若者は収入を求め都市部に移り住む、あるいは逆に地元に残ると収入が安定しないため、なかなか家庭を持つ勇気が持てずに少子化に拍車をかける悪いスパイラルを構成しています。
 そこで最初の質問です。県民幸福度日本一を目指し、将来に希望や幸福を実感できる地域社会の再構築を掲げる小川知事は、同じ福岡県に生まれ育っても、地域間にこのような格差とハンディキャップがある現実をどうお考えでしょうか、知事の所見をお聞かせください。
 私は、福岡県のバランスがとれた発展を阻害するような、県南地域の深刻な少子化スパイラルにくさびを打つためにも、やはり県南の主要産業であります農林水産業従事者の所得の向上と安定、それによる後継者確保は現実的で即効性のある有効な対策の一つと考えます。所得の向上という観点で、私自身多くの園芸農家の方から、福岡県の行っている高収益型園芸産地育成事業は大変有効であるとの評価をしばしば聞かされています。ハウスや高性能の農業機械を導入することにより、生産性を高め、コストを圧縮し、安定した収益の実現に役立ち、ひいては農業を継ぐことをためらっていた御子息とも将来について前向きな話ができるなど、後継者確保にも明るい兆しが出てきたそうです。少子化対策は待ったなしの喫緊の課題です。このような具体的、直接的効果が上がっている事業があるのですから、福岡県の財政も厳しい折、効果が高く即効性がある分野にもっと事業の特化と予算の傾注をし、今後とも継続、拡大をしていただきたい。
 そこで知事に質問です。農業の後継者確保に関する具体的な指標、数値目標を県としてお持ちでしょうか。また、農業の後継者確保と県南の所得向上の観点から、今後の高収益型園芸産地育成事業の継続と見通しについて、知事の見解をお聞かせください。
 さて、知事は安全、安心、安定という表現を多用されておりますけれども、所得の安定のために欠かせないのがリスクの軽減です。農林水産業は人知の及ばない大地を、海を、空を相手にしている事業ですから、もちろん豊作もあれば不作もあるのは避けられないことでしょう。しかし、安心して農業に従事し、そして後継者を育成するためには避け得るリスクを取り除き、ミニマイズする努力をするのが行政の役割だと考えます。
 県南を初め県下全域の中山間地域はイノシシの被害が多く、水田、畑作、果樹すべての作物において食害が大量発生していることを御存じでしょうか。しかしながら、防護さくの設置を進めようにも、現在の県の対策予算が全く不足しており、思うように設置が進みません。中山間地は特に零細農家が多いものですから、各農家に与える影響は甚大なものがございます。今年度予算では、農林水産物鳥獣被害防止対策費は増額される予定ですが、それでも全く間に合わない規模で、県下で鳥獣被害が発生しているという御認識を知事はお持ちでしょうか。イエスかノーかでお答えください。
 農林水産物鳥獣被害防止対策費用の内訳には、捕獲、駆除したイノシシ、シカ、いわゆる害獣を地域資源として活用するための処理加工施設事業が挙がっております。自治体財政が厳しい中で、このように害獣を資源とする試みは循環型の対策として評価されると思います。現在、県下の害獣の食肉加工施設はみやこ町、添田町に存在し、糸島市に計画がございます。しかし、八女を中心に年間三千頭の捕獲、駆除が見込まれます県南地域にはございません。
 知事にお尋ねします。将来的に県南地域にも有害鳥獣加工施設を設立し、福岡県全体として害獣の資源化を進めるおつもりはありますでしょうか。
 これらの鳥獣被害対策は福岡県内でも農林水産部、環境部、保健医療介護部と複数の部署に関連しております。そのため、横の連携を充実するよう福岡県鳥獣被害対策協議会が平成十七年より開催されておるそうですが、内容を見る限り、情報交換やわな、電気さくの仕掛けに関する研修など、既存事業の円滑推進、有効活用が主たる目的であり、鳥獣被害に対し効果の上がる大胆な施策を協議する場ではないと思われます。例えば、イノシシ肉の特産品化、ブランド化などを本気で目指すのであるならば、鳥獣被害に悩む側や鳥獣駆逐を管理する側だけの視点ではなく、販路拡大やまちおこしのノウハウを持った組織、具体的には企画・地域振興部や商工部及びその管轄の団体、自治体まで巻き込んだ全庁横断型のプロジェクトチームを新たに立ち上げるべきではないでしょうか。ここはぜひ、小川知事がリーダーシップをとり、部署間の調整、基礎自治体との連携を含めた効果的な対策を検討していただきたいと思いますが、この件についての知事の所見をお伺いします。
 また、みやま市の有力作物でありますミカンにおいては、収穫期にカラス、ヒヨドリ、メジロなどの野鳥の被害で出荷不能の作物が発生し、その数量も無視できない状況です。ブドウなどは防護ネットによる対策が可能です。しかし、ミカンの場合には作付面積が広大なため、防護ネットによる対策は不可能です。山間地域における木の実などのえさの減少や、市街地のごみ出し時におけるカラス対策などにより、えさを失った野鳥が原因となる食害が今後ふえることは間違いありません。福岡県として、ミカンや大豆など作付面積の広い作物に対する野鳥の食害対策をどのようにお考えか、知事の所見をお伺いします。
 最後に、筑後平野には筑後川と矢部川という二本の一級河川が流れておりますが、私が住んでいる筑後平野南部において、農業用水は矢部川水系に多くを依存している状況です。先述のとおり、高収益事業育成の施策もあり施設園芸農家が拡大していることは、収益の向上、安定化に対する一つの効果的な対策と考えますが、そのために、過去と比較して十一月から四月までの非かんがい期における農業用水の需要が高まっております。同様に、農業に限らず有明海に注ぐ矢部川水系の水量は、これまた筑後地域の主要産業であるノリのできばえを左右する栄養塩に多大なる影響を与えます。さらに、ノリの生産のピーク時が非かんがい期、つまり昨今施設園芸農家の拡大により水の需要がふえた時期に重なるため、水量不足に拍車がかかる状況となっております。
 平成十三年に起こりましたノリの凶作の際、ノリ生産業者は子供の給食費にすら事欠くような苦境に立たされました。その際は、地元自治体において給食費補助などを行い緊急対策が講じられたそうですが、そのような不安定な状況はノリ生産、施設園芸にかかわらず、幾ら高収益事業化が進んでも、なりわいとしての魅力は半減してしまいます。また、有明海の潮の干満で逆流してくる浮泥の堆積により、塩塚川、沖端川河口にある漁港では、毎年毎年一億数千万のしゅんせつ工事なしでは漁船の出入りにも支障を来すような状況ですが、これも矢部川水系が浮泥を攪拌し押し出すだけの潤沢な水量を有していれば、しゅんせつ工事のコストが軽減される可能性もあります。求められるのは対症療法ではなく、抜本的な対策でございます。矢部川水系には、御存じのとおり県内有数の貯水量二千三百八十万トンを誇る日向神ダムがございますが、これは治水を目的としたダムですので、梅雨期でございます六月十日から七月二十一日の間は貯水量を七百三十万トンまで強制的に落としてしまいます。すると、ことしのように梅雨明けの時期が早く訪れる場合、小手先の弾力的な運用を行っても意味をなさず、夏の雨量次第では深刻な水不足が筑後平野南部地域の農林水産業に大打撃を招く可能性を、知事は御理解されているでしょうか。ここはぜひ、矢部川水系の抜本的水源対策について御検討をお願いしたいと思います。
 同様のことを、本年五月三十日に行われました県南総合開発促進会議において、柳川市の金子市長が要望されました。また昨年十二月の定例議会では、私の父、板橋元昭前県議が、やむにやまれぬ思いでしょうか、十六年ぶりに一般質問の舞台に立ち、強力に要請しております。その際、当時県知事だった麻生前知事からは、まず矢部川水系の流況について調査研究を行い、それをもとに新たな利水用ダム建設を含めた抜本的な対策を検討する旨の答弁をいただいたことを議事録にて確認いたしました。しかしながら、この場には麻生前知事も、質問を行いました県議会議員もおりません。
 そこで小川新知事にお尋ねします、矢部川水系の水源開発に関する小川知事の認識を御披露いただいた上で、前知事がお約束されました流況に関する調査研究の現状及び今後の見通しについて、行政の継続性の原則に基づき、詳細に説明と見解をお示しお願いいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、県内の地域格差、その解消の問題でございます。県内の地域格差は、これは何としても解消していきたいと思います。そのためには、地域がそれぞれの特色を生かしながら発展していくということが重要でございます。地域の方々と一緒に知恵を出し合いながらやっていきたいということ、それから、それぞれの地域間で相互に補完し合っていくことが、県のバランスのとれた発展という意味では、これも大事だろうというふうに考えております。その上で、御質問にお答えしたいと思います。
 高収益事業の継続についてお尋ねがありました。この事業は、収益性の高い園芸農業を実現するために、先進技術の導入でありますとか、省力機械、施設の整備を支援するものでございまして、園芸農家の経営改善に大きく貢献しているというふうに考えております。その結果、園芸農業の産出額は、今本県の農業の産出額の約過半を占めるまでに至っておるところでございます。県といたしましては、園芸農業の振興を図るために、本年度も六次産業化の視点も取り入れながら、この事業費の大幅拡充をしたところでございます。本事業については、引き続き実施をしていきたいと、このように考えております。
 そのときに、御質問でございますが、新規就農者の目標があるのかということでございますけれども、現行の福岡県農業・農村振興基本計画の中で、園芸農業を含めた新規就農者の方については、年間二百人という目標を持っております。現在、二十二年、昨年の段階でいいますと、百五十名ちょっと切るぐらいでございます。そういう意味では、次の計画でもこうした具体的な目標を検討していきたいというふうに考えております。
 それから、中山間地におきます鳥獣被害の防止対策についてお尋ねがございました。県では、鳥獣被害防止特措法に基づきまして、まず市町村が作成いたします被害防止計画の作成支援、それからこの計画に基づく被害防止対策を、国庫交付金であります鳥獣被害防止総合支援事業を活用しながら実施をしている、この二つの仕事をしているところでございます。本事業は、本年度から全額国庫負担による侵入防止さくの設置、そういったメニューも創設されまして、国の予算ふえたわけでございますが、全国的に非常に要望が高くなりまして、集中をいたしました。その結果、私どもの県では三億八千万円余ということでございました。先ほど先生御指摘がありました、現場では不足という感じを持っておられるのかもしれません。それを踏まえまして、県としましては、この事業というのは、今年度から三カ年で実施をするという国の計画になってございますので、事業として今後採択が確実なもの、そういう採択されやすい形のものになるように、特に評価の高い市町村区域といいますか、その村域を越えた被害防止体制の構築とか、いわゆる国側では評価の高いと見られておりますような、そういう事業というものを関係の自治体と一緒になって仕組んでいく、考えていく、そういった被害防止体制の構築を考えていく。それから、被害防止計画を策定する際、いろいろ私どもがアンテナを高くして集めた情報も提供しながら、指導、助言もやっていきたいと、このように考えております。
 それから、処理加工施設についてお尋ねがありました。捕獲したイノシシやシカを食用として利用するためには、捕獲後、限られた時間内に食肉処理を行う必要があります。現在、県内には、先生御指摘のとおり、町が設置しました処理加工施設が二カ所ございますが、いずれも県北のほうにあるわけでございます。県南に設置をすることは必要ではないかと私は思っております。
 なお、八女市が処理加工施設の新設を検討中であるというふうに私は聞いております。そうした八女市の近隣地域での利用も含めまして、先ほど申し上げました、国に提出をします実際の計画書の策定に当たりましては、そういう施設の設置というものがうまく採択されますように、情報収集と指導、助言といいますか、知恵をお互いに出し合っていくと、そういう作業を行ってまいりたいと考えております。
 それから、捕獲鳥獣の利用の推進のあり方について御質問がありました。捕獲した鳥獣につきましては、その獣肉はもとより、皮や角まで含めた利用を拡大していく、そのためには的確な捕獲方法と、それから安定供給のための収集、運搬方法、それから解体技術の向上であります、それから得られたものの販路の開拓ということが大事でございます。その際、御指摘がありましたブランド化ということもあろうかと思いますが、さまざまな課題を解決する必要がございます。県としましては、県や関係団体と構成しております福岡県鳥獣被害対策協議会というのがあるわけでございますが、御指摘もありましたように、これをまた見直して、被害防止だけではなくて、捕獲獣の有効利用、これも頭に置きながら、全庁的に関係する部局を参加させる形で解決に向けた取り組みについて研究していきたいと、このように考えております。
 それから、カラス、鳥のほうの被害でございますが、被害対策としましては、防鳥ネット、テグス、それから爆音器の利用など防止対策を行っているところでございます。市町村が猟友会の御協力を得て、銃やわなによる捕獲対策を行っているところでございますが、必ずしも十分な効果が得られてないようでございます。現時点では、残念ながら、なかなか有効な手段が見つかってないというような状況かもしれません。このため、私どもとしましては、ほかの地域での取り組み事例でありますとか、研究成果というものを広く情報収集しながら、有効な方法というものを探求していきたいと思っております。
 矢部川の流量の抜本対策についてお尋ねがございました。矢部川の水は、流域の農業用水ばかりでなくて、先ほどありましたノリ、いわゆる水産業や掘り割りの水を活用した防火用水など水資源としても活用されております。この流域にとりましては、極めて重要なものであると考えております。これまで日向神ダムにかんがい期の農業用水を確保するとともに、そのダムの弾力的運用によって、矢部川の流量改善に努めてきたわけでございます。また、農業用水が不足する場合には、筑後川下流用水によります対応を行っております。こうしたことを通じまして、農業、それからノリを初めとする水産業に必要な用水を供給するとともに、副次的な効果としての防火用水の確保にもつながっているところがあります。今後とも、必要な水資源の確保に努めるとともに、矢部川の水を効果的に使うための方策について研究してまいりたいと思います。
 先ほど、前麻生知事と、お父様、板橋県議との質疑のやりとりのお話がございました。これにつきまして、私も議事録を読ませていただいております。矢部川の流況につきましての調査研究というのは、これからやりまして、その研究結果も踏まえながら、さまざまな方策について、費用対効果、いろんなことを総合的に研究していきたいということをここで申し上げたいと思います。

◯議長(原口 剣生君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 私も初めての質問でございますので、前向きな御回答もあれば、なかなか満足しにくい御回答もあるかなと思いますけれども、まずは私の思いを伝えたということで、これをスタートラインに、今後につなげていきたいと思います。
 特に、矢部川水系の問題は、すぐに百点満点の答えが出てくるとは思っておりません。しかし、矢部川が筑後川と並んで県南に恵みをもたらす河川となるよう、私の県議会議員としてのライフワークとしてこの問題に取り組んでいきたいというふうに思う所存でございます。小川知事も、早期に現地視察などに来ていただきまして、できない理由を探すのではなく、県民のために一緒に知恵を絞り、どうやったらできるのか前向きに取り組んでいただくことを要望し、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 本日はありがとうございました。(拍手)