小川知事被災地視察と6月定例議会開会!

6月3日は前日の荒れ模様から一転して梅雨の中休みの素晴らしい晴天にめぐまれました。
その中、小川洋県知事が昨年7月14日の九州北部豪雨災害の被災地であるみやま市・柳川市を視察に訪れました。知事は被災以降、公式・非公式含め事あるごとに当地を訪れて頂いており、地元の区長さんともお互い声を掛け合える関係を築いてもらいました。
今回は梅雨時期を前に災害復旧の現状と被災企業等の状況を把握して貰う事が大きな目的です。

沖端川の決壊箇所は梅雨を前にここまで復旧が進みました。
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右側が新たに築堤された部分ですが、養生するまで3年程度時間が必要なので左側の土嚢で作られた仮堤防もその間しっかりバックアップ機能を果たします。
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マスコミの取材も多く、復旧の現状を多くの方に知って頂けたのではないでしょうか。

被災した企業も訪問しました。
一つは本郷の松木漬物食品。地元名産の高菜漬けなどを生産販売しておられ、TV番組などで紹介されたそうで地元のみならず全国的に伸びていた会社です。昨年の9月に視察した時は、製造機器や冷蔵庫などが水に浸かり大変な状況でした。食品製造業ですので衛生第一。相当な負担だったと想像しますが、新たに設備投資を行い営業を再開されていました。社長のご子息に丁寧にご対応頂きました。
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次に訪問したのは中山の(株)フコク。元々綿製品を作っていた会社ですが、その技術を派生させ今は自動車の内装材や建材の分野で成長しています。沖端川の決壊箇所のすぐ裏に工場があり、被災時は腰の辺りまで水没し大変な状況でしたが、社員のみならず取引先や知人・友人が一丸となって復旧活動を行い予想以上に早く元通りの生産が開始出来たとのこと。
視察に伺うと全社員そろってのお出迎え。胸が熱くなりました。
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大変嬉しかったのは松木漬物食品もフコクも若き経営者、これからの地域の経済界を引っ張っていって欲しい世代です。水害という大変な困難に見舞われても前を向き、一歩一歩着実に踏み出している姿に私の方が逆に勇気と元気を頂きました。
本当にありがとうございました。

6月7日より定例議会が開会されました。被災地視察の件はもっと早く書きたかったのですが、議会前のバタバタですっかり遅れてしまいました。今回私は一般質問を行う予定です。恐らく6月18日(火)または19日(水)になると思います。詳しい内容が決まりましたら告知致しますのでどうぞ宜しくお願いします。

日向神ダム視察と矢部川沖端川復旧工事説明会

昨日は水利組合の皆さんと日向神ダム管理出張所を訪問し、福岡県が管理している日向神ダムを視察しました。
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今年は例年より若干雨量が多かったため、現在水位は標高299.7mまで上がっています(底面からおよそ67.2m)、貯水量は1230万トン。梅雨期制限推移は292.7mですので、これから梅雨の時期に備えて徐々に水位を低下させるそうです。しかしながら下流では先日お伝えしたとおり河川改修工事中ですので、下流と連携を取り放流する必要があるとのこと。

昨年7月14日の九州北部豪雨では1時間最大1005トンの流入量で、ダムの水位は最高298mまで上昇しました。298mってことは今の299.7mより低いじゃないか?!と思う方もいらっしゃるでしょうが、あの雨量があと4時間続いた場合、水位は308.5mに達し緊急操作(つまり、流入した分だけすべて放流)をおこなう可能性があったそうです。また緊急操作をおこなうには県知事の許可が必要なので、その決済を取る為にもまさにギリギリのところで雨が小降りになった状況だったとのこと。ちなみに緊急操作は日向神ダムが出来てから一度もありません。
違う視点で捉えれば、7月14日の矢部川の増水は日向神ダムだけの問題でなく、増水した笠原川・星野川水系からの流入も大きく関係していたという事です。

治水は何か一つだけ改善すれば全て解決するような問題では無く、上流、中流、下流すべての様々な要素が絡み合っており、対策の難しさが窺い知れます。

その後、夜には九州北部豪雨で沖端川が決壊し大被害を受けた本郷地区の復旧工事説明会を藤丸敏衆議院議員、西原親市長、渡辺筑後川河川事務所長、森田南筑後県土整備事務所長等々の皆様と行いました。
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多くの質問が飛び交い、大変活発な意見交換が出来ました。
とにかく、不安な箇所があれば区長さん経由で教えて頂き調査を行い、適切なフィードバックを行うよう国・県の各事務所と認識を同じくしました。

今後も、故郷に安心して暮らせるよう国・県・市一体となって頑張ります。

今日は九州芸文館の開館記念式典も行われたのですが、これはまた後で。
とにかく会場は盛り上がっていますので、是非覗いてみてください!

平成24年9月議会一般質問「矢部川水系における九州北部豪雨災害について」

20120928読売新聞一般質問記事
公式動画へのリンク

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆様、おはようございます。自民党県議団の板橋聡です。今回は、七月十四日に発生した九州北部豪雨災害の被災地であるみやま市から選出していただいている議員として、矢部川水系における九州北部豪雨災害について質問いたします。
 まず、河川管理情報の提供について質問いたします。今回の豪雨は、矢部川の整備基本方針に掲げられた基本高水流量毎秒三千五百トンを超える流量をもたらし、西日本新聞いわく、想定外の流量、百年に一度超えだったそうです。矢部川の最高水位は観測史上最高の九・七六メートルに達し、はんらんの危険があるということで、私の地元であるみやま市、そして隣の柳川市においても全区域に避難指示が出されております。
 その当日、私はみやま市の災害対策本部を訪れており、まさに避難勧告が市内全区域の避難指示へ変更される間際に立ち会っておりました。今回の避難指示についてはタイミングの問題や、河川からの距離にかかわらず市内全域に避難指示を出すべきだったかどうかなどの議論が存在しますが、実際その場にいた者として申し上げれば、判断材料となる河川情報が乏しい条件下で、市としてはぎりぎりの決断をされたと評価しております。
 そこで質問です。知事は我が会派の代表質問に対する回答で、ダムのリアルタイム情報を下流地域へ提供するとおっしゃっていますが、下流地域にとってはリアルタイム情報だけでなく、ダム付近の天候はどういう変化をしており、今後どのように流入量、放流量が変化していくかまでを含めた今後のダム放流予測のような情報提供があれば、住民の安全を確保するためのより正しい避難判断につながると考えますが、知事の所見をお聞かせください。
 また、今回二カ所が決壊した沖端川には、現在河川監視カメラがございません。水位計も一カ所のみです。沖端川の監視カメラ及び水位計の整備と拡充を強く要請いたしますが、知事の所見をお聞かせください。
 さて、沖端川は実はとても特殊な河川であります。通常、川は、支流が本流に流れ込んでだんだん太い川になって河口に流れ着くものですけれども、沖端川は本流矢部川から支流として分派して河口に向かっていく、全国でも珍しい河川であります。一般的に堤防が決壊すれば河川の水位は下がるものですけれども、今回の水害で沖端川の堤防は二カ所決壊したにもかかわらず、本流矢部川の水位が落ちなかったため、矢部川から大量の雨水が沖端川に流れ込み続けました。その結果、沖端川の水量は落ちず、最終的に本流矢部川の六合付近の堤防が決壊して、本流と支流全体の水位が下がるまで復旧作業を行うこともできませんでした。
 そこで質問です。知事は沖端川のこのような特殊性を御存じだったでしょうか。また、被災した住民が今後も安心してふるさとで暮らしていくために、沖端川の復旧はこの特殊性を踏まえて、ぜひとも改良型で進めていくべきと考えますが、知事の所見をお聞かせください。
 次に、九月十三日の矢部川水系流域協議会にて、今回の沖端川の堤防決壊原因は越水と確認されました。豪雨が日向神ダム、矢部川、その支流、遊水池、クリークなどありとあらゆるポケットに流れ込み、洪水調整の限界を超えた結果、あふれてしまったということだと理解します。ポケットで一番効果が高いのはダムだと思いますが、今回は視点を変えて質問します。
 現在県で推進されている、災害に強いため池等整備事業、いわゆる小規模クリーク整備事業は、湛水被害の軽減のみならず、下流地域のポケットとして洪水調整機能も強化します。近年、十年に一度、二十年に一度と表現されるレベルの豪雨が頻発するようになり、今回を上回る豪雨がいつ起きても不思議ではありません。このため、地域の洪水調整機能を強化できるクリークの整備を計画的に進め、防災機能をさらに高める必要があると考えますが、これまでどおりの整備で本当に十分なのか、今回被災した県南地域、特にみやま市、柳川市において不安が残ります。
 そこで質問です。クリーク整備の現状と今後の取り組み方針について知事の所見をお聞かせください。
 次に、避難所に関して質問します。矢部川を挟むような形で、みやま市の指定避難所となっております上庄小学校と下庄小学校があります。この二つの小学校は、県が管理しております国道四四三号沿いに立地していますが、それぞれ土地が低い場所にあります。そのため今回の水害で、下庄小学校においては四四三号から校門に至る市道が冠水してしまい、そもそも住民が避難することができませんでした。そして、上庄小学校に至っては一時三百人以上の避難者がおりましたけれども、沖端川の決壊により四四三号を含め周囲が完全に冠水し、まさに孤立状態になってしまいました。浄化槽も水没しているためトイレが使えず、避難所として用をなさない状況でした。他の自治体の状況を聞いてみると、確かに小学校や公民館が避難場所として指定されている場合が多い。学校施設は広いですし、トイレや給食設備があったり、避難所として適している面も多いですが、今回のような水害の場合、その立地によっては避難所の機能を果たさないばかりか、逆に避難された方を危険な状況にする場合もあります。
 そこで知事に質問です。県下の指定避難所について、冠水などにより孤立してしまう可能性がある避難所を把握されていますでしょうか。また、県としてどのように取り組んでいくのかお答えください。
 次に、市をまたがる避難についてお尋ねします。今回、沖端川の決壊によって百五十軒近くの床上浸水被害が出ました。みやま市本郷の瀬戸島地区は、ちょうど沖端川と矢部川に挟まれて中州のような形状になっております。沖端川を挟んで筑後市と隣接する市の境目の地域です。この地域の指定避難所は本郷小学校ですが、矢部川にかかる約二百メートルの橋を渡って避難しなければなりません、幸作橋というんですけれども。ここは高齢者の多い地域です。矢部川が増水して幸作橋のすぐ下まで濁流が迫ってきております。流木が橋げたを揺らして雨風も激しい。怖くて幸作橋を渡りきらん、と避難をためらわれるお年寄りもいらっしゃいました。そこで地元の浅山区長がとっさの判断で、より川幅が小さい沖端川の行基橋、こちらは五十メートルぐらいの橋なんですけれども、これを渡って筑後市側にある筑後広域公園の体育館に避難をすることになりました。そしてその直後、沖端川は決壊。瀬戸島地区のほとんどのお宅は浸水、天井近くまで濁流にのみ込まれたお宅も数多くあり、まさに間一髪の避難でした。体育館には筑後市の職員の方が避難対応をされており、みやま市からの避難にもかかわらず大変よくしていただいたそうで、避難された本郷住民の皆様は、口々に感謝の言葉を述べていらっしゃいました。
 今回の大水害でつくづく感じたのは、水があふれたところとそうでないところは全く別物です。今回沖端川は、たまたま左岸側、みやま市、柳川市側だけ決壊しました。つまり、大量の避難者が水の出ていない対岸の筑後市側にどっと押し寄せる可能性もあるんです。先ほどお話ししました、冠水した上庄小学校も、ちょっと歩くとすぐお隣の柳川市です。
 そこで知事に質問です、災害の場合、人間が決めた市や町、あるいは県の境界線は関係ありません。市をまたいで違う地域へ避難するような場合を想定し、県がちゃんとイニシアチブをとって調整役を果たすべきと思いますが、知事の所見をお聞かせください。
 また、県境を越えて佐賀、大分、熊本へ福岡県民が避難する可能性もあります。そのような県をまたがる避難について、他県との連携はどうなっていますでしょうか、お聞かせください。
 最後に、風水災害時の緊急対策工事などに関する協定書について質問します。長いので以後、風水害協定と省略させてもらいます。
 七月十四日の朝、矢部川は堤防のパラペット越しに手を出すと水面に手が届くほど、いつ越水してもおかしくないくらい増水していました。私はたまたま堤防のパラペットから漏水している箇所を発見したのですけれども、付近を点検に当たっていた建設業者の方にこれを報告すると、幾つかある水防工法を検討し、これはシート工法で対応しましょうと即座に対処していただき、被害の拡大が防げました。その見事な対応に感服した次第です。
 今回の水害において、堤防決壊箇所や危険箇所の応急処置に始まり、土のうづくり、各地河川や道路の点検、その後の復旧工事など風水害協定を締結している企業の方々は地域住民の安全、安心のために、場合によっては御自宅が被害に遭われているにもかかわらず、迅速かつ適切な対応をしていただいたと聞いております。この制度は平成二十年度から始まった比較的新しい制度で、今回のような広範囲で起こる大規模な水害は想定されていなかったとのことですが、地域の災害対応、減災の力を高め、地域住民の安全、安心の向上に貢献する協定であると改めて評価いたします。
 そこで知事に質問です。災害はいつ起こるかわかりません。忘れたころにやってきます。風水害協定が県民の安全、安心に資するよう、いついかなる場合でもきちんと機能させるのは県の責務だと考えます。今回の災害を通じて知事の風水害協定に対する評価と、今後どのようにしてこの協定を地域の住民の安全、安心につながる価値のある協定にしていくか知事の所見をお聞かせください。
 知事には、豪雨災害後二度も現地入りしていただきました。今回の答弁は私に対してではなく、ぜひ、あのときお会いしていただいた被災者の皆様の顔を思い浮かべて、誠実で明快な御答弁をお願いいたします。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず、沖端川への河川監視カメラ及び水位計の設置についてお答えしたいと思います。今回の豪雨によりまして、矢部川流域では河川がはんらんし、甚大な被害が発生いたしております。特に沖端川におきましては、越水により堤防が決壊し、広範囲で家屋が浸水したところでございます。現在、沖端川におきましては、河川監視カメラは設置されておりません。水位計につきましては新村橋に一台設置をしてございます。今回の災害後、地元市からは、水防活動や住民の避難活動を迅速、円滑に行うため、沖端川に河川監視カメラを設置してほしい旨の要望をいただいておるところでございます。洪水時におきます河川の画像情報、水位情報といったものは地元市の災害時における諸活動の際、大変役立つ情報となります。そのように考えております。このため今後、矢部川水系流域協議会にも諮りながら、沖端川の河川監視カメラや水位計の具体的な設置箇所を決定いたしまして、来年梅雨の時期までに設置をしていきたいと、このように考えております。
 次に、ダム操作の事前通知についてお尋ねがございました。降雨予測に基づいてダムの操作による放流量をあらかじめ予測いたしまして、下流地域に事前通報や警戒などを行うためには、情報の信頼性というのが大切でございます。しかしながら、現段階での降雨予測システムの精度、これを考えますと、事前にダムの放流量を予測し、通知をすることは極めて難しいというふうに考えております。
 沖端川の改良復旧についてお尋ねがございました。矢部川水系沖端川では、先ほど議員も御指摘ありましたように、大変な被害が発生したわけでございますが、沖端川は国が管理をいたしております矢部川から分流する河川でございまして、この両方の河川のバランスをとりながら一体的な整備をしていくことが、沖端川の治水安全度の向上を図るためには必要であると、このように考えております。現在、このような沖端川の特性というものを踏まえながら、堤防の整備、河道掘削などによります河川の改良事業を集中的に行えるよう、その内容や実施方法などにつきまして、今国と協議を行っているところでございます。協議が調い次第、早期にその工事に着手してまいります。
 クリーク整備の現在の状況と今後の取り組みについてでございます。クリークの整備は、農業用水を確保いたしますとともに、貯留、排水といった、先ほど議員はポケットとしての防災機能とおっしゃいましたが、そういった機能を強化するために実施しているものでございます。農業生産のみならず生活の安全を確保するためにも必要なものと認識をしております。クリークの整備につきましては、国営で行っております大規模なものを除きまして、県が国庫の補助事業を活用いたしまして、平成三十二年度の完了を目標に進めてきたところでございます。しかしながら、平成二十二年度に国の農業、農村整備予算というものが大幅に落ち込みました。クリークの計画的な整備に懸念が生じたところでございます。このため、昨年度、県単独事業というものを創設させていただきまして、必要な予算を確保させていただいたところでございます。小規模なクリークにつきましては、この県単事業を活用いたしまして、平成二十三年度から三カ年計画で整備を進めているところでございまして、これをしっかり進めさせていただきたいと思っております。
 次に、避難所の現状の把握とその対応についてお尋ねがございました。市町村におきましては、避難所を選定する場合には、私ども県の地域防災計画で定めた考え方を踏まえまして、一に浸水区域等の危険区域を避ける、二に、仮に浸水想定区域内に避難所を設置せざるを得ない場合でも安全を確保できる場所にする、三番目は、できる限り近距離にある施設を確保するということ、そういったことを計画で定めておりまして、その考え方を踏まえて、市町村では避難所を選定しているものと承知しております。しかしながら、今回はかつて経験をしたことのないような大雨によりまして、短時間に道路が冠水し、河川がはんらんをいたしました。この結果、みやま市や柳川市では避難路が冠水をいたしまして、指定避難所が孤立したことから、指定避難所ではなく近隣の公的施設や民間施設に避難したケースもございました。先ほど議員御指摘のとおりでございます。県といたしましては、今回の災害における避難所の状況を踏まえまして、全県的な避難所の点検作業を行ってまいります。その際、今回の教訓を踏まえ、指定避難所の安全性が確保されているのか、また短時間で避難できる距離にあるものか、指定避難所が使用できない場合の代替施設への避難誘導が定められているかどうか、住民の意見をよく聞いて選定されているかどうか、そういった視点で点検をしていきたいと考えております。こうした点検を行った上で、市町村が地域の実態に即しまして、避難マップの見直し、避難マニュアルの策定や、これらに基づく避難訓練が行われる場合に、これを支援していきたいと思っております。
 次に、市町村域を越えた避難所の確保についてお尋ねがございました。市町村では、それぞれの地域を対象範囲といたしまして地域防災計画を策定しており、避難所につきましても市町村域内にある身近な公民館等を指定避難所として選定している、先ほど申し上げたとおりであります。一方で、先ほど申し上げましたように、今回の豪雨では、朝倉市、みやま市、大刀洗町におきまして、増水した川を渡り指定避難所に向かうことが危険であったために近隣市に避難をした、そういったケースがございました。こうしたことを踏まえまして、避難所につきましては市町村区域内で選定することが基本としつつも、地勢的な、地域的な特性によっては隣接する市町村の避難所を利用するほうが住民の安全につながる、そういう場合もあると考えております。今後、全県的に避難所を点検することにいたしておりますので、その際、隣接する市町村の避難所を活用することで、より効果的に住民の安全を確保できるような場合には、市町村間の連携、場合によっては御指摘の、必要に応じ他県との連携が図れるよう調整を行ってまいりたいと考えております。
 あわせて、自主防災組織の共同避難訓練の実施など、市町村区域を越えた避難の実効性を確保するための取り組み、これについても働きかけをしていきたいと考えております。
 次に、地域住民の安全、安心のさらなる向上についてでございます。本県では、風水害時における道路、河川などの公共土木施設の速やかな復旧を図るため、平成二十年度からでございますが、地元建設業者と県の県土整備事務所との間で風水害時の緊急対策工事等に関する協定、これを締結をいたしておりまして、迅速に工事ができる、これが実施できる体制を構築してきているところでございます。今回の災害におきましては、この協定を締結いたしました地元建設業者の方々が、沖端川の決壊箇所の緊急復旧工事を二十四時間態勢で献身的に行っていただきますなど早期の復旧に貢献をしていただきました。今後、今回の災害時における対応と、またその経験を生かしまして、協定を締結した建設業者に対しまして、日ごろから連絡体制を確認したり、技術の研さん機会を定期的に設けることによりまして、建設業者の方々の対応力の向上を図って、迅速かつ復旧が可能となるよう取り組んでまいります。地元の建設業者の皆様に御協力いただきながら、引き続き地元地域住民の皆様の安全、安心の向上に努めてまいりたいと考えております。

◯議長(松本 國寛君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 一点、再質問をさせていただきます。
 ダム放流予測情報公開について、現時点では予測システムの精度などの問題でハードルが高いということは理解いたしますけれども、技術は日進月歩しておりますので、継続してぜひ検討をお願いします。
 一方で、日向神ダムの放流量は最大で毎秒三百五十トンとのことです。今回は、ダム付近でも、観測史上最大の雨量だったため、沖端川が決壊した後もダムからの放流が続けられておりました。報道によりますと、当時、矢部川は毎秒四千トンの流量を記録したとのことですから、ダムの放流自体がそれほど下流域の水位に影響を与えたとは思いません。しかしながら、具体的に、ダムからの三百五十トンの放流が、下流域の水位にどれぐらい影響を与えるのか、基礎的な情報として下流域の市町村や自主防災組織、消防団などに情報提供することは、将来再び豪雨に見舞われた際の対応に有益であると考えますが、知事の所見をお聞かせください。
 私は、過去二回、一般質問の場において、矢部川水系の質問をさせていただきました。それは水が足りないという利水がテーマでした。今回は皮肉なことに水があふれて困ったという質問であります。治水と利水は表裏一体です。どちらが欠けても地域住民の安全、安心は損なわれます。そもそも矢部川水系は、地域農林水産業に恵みをもたらす川なのです。こういう水害が起きると、どうしても治水だけに意識が向きがちになりますけれども、あえて言わせてもらえば、利水も忘れず、今回の水害からの復旧、復興は、恵みの川、矢部川への利水の視点も忘れずに復旧、復興していただきたいとお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 ダム放流による下流部への影響について御質問がございました。日向神ダムが洪水調整時に放流する量は、私ども県の操作規則において定められておりますが、原則として毎秒三百五十立方メートルとなってございます。今回の豪雨におきましても、この規則に基づき適正に操作を行い、ダムの放流を行っております。ダムからの放流水は矢部川に流入をいたします。八女市の黒木町で星野川や笠原川などの支流と合流いたします。そして、下流域であるみやま市、柳川市などに到達をする、そういう川でございます。このようなメカニズムを経て矢部川下流や沖端川の洪水時の水位は上昇いたすわけであります。したがいまして、日向神ダムの放流量と下流域におきます避難判断水位との関連性につきましては、専門的な解析も必要でございます。このため専門家や地元市長が参画をいたしております矢部川水系流域協議会にも諮りながら、ダムからの放流量による下流部への影響について、いろいろ解析、研究いたしまして、可能な限り説明をさせていただきたいと思っております。

小川知事被災地視察

小川知事が7月16日に県内地域の豪雨による災害視察を行いました。公務多忙の中、急遽決まった被災地視察。八女市をはじめ福岡県内各所で甚大な被害が発生しているにも関わらず、タイトなスケジュールを調整し、みやま市本郷地区を視察して頂いた事に感謝します。
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(右から西原親みやま市長、板橋聡、小川洋県知事、村山福岡県県土整備部長)

県の管理河川である沖端川堤防決壊の状況や、復旧に向けての工程が説明された後、私の方から本郷地区の地形的な問題から地域一帯の民家が軒下のあたりまで浸水した事や農家が多い為農機具が壊れてしまったこと等をお伝えし、後片付けに追われる集落の被害状況を直接見て頂きました。被災者の皆さんとも言葉を交わした小川知事は「市とも連携し、県として出来る事を精一杯やらせてもらう」との言葉を残して、次の視察場所に移動されました。

16日夕方の時点で矢部川と沖端川中山地区の決壊箇所はほぼ土が積み上がり修復間近となっていました。沖端川本郷地区の決壊箇所は重機の搬入が困難な場所で修復作業開始に手間取りました。昨日は夜を徹しての作業を行うことになっていましたが夜半に強く降った雨が心配です。
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また海苔生産の現場にも大きな被害が出ているようです。農業・漁業関係者への聞き取りを進めたいと思っています。

矢部川・沖端川の堤防決壊と被害状況

7月14日の水害を受けて15日朝から被災地の視察や市・区長さん等への聞き取りをさせて頂きました。
先ず矢部川
14日の様子(以下、全ての画像はクリックすると拡大できます)
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15日の様子
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一気に水が引いたように思いましたが、これは堤防決壊箇所を修復する為に意図的に流量を制限しているようです。

みやま市周辺で堤防決壊した場所が3カ所あります。まず矢部川右岸津留橋付近(以下、地図の緑色矢印が決壊箇所)

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沖端川左岸 中山地区立花いこいの森公園裏

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沖端川左岸 行基橋付近

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決壊というと河川が曲がっていて水が堤防に勢いよくぶつかるような部分が、徐々に浸食されて決壊してしまうようなイメージを持っていました。しかし今回決壊した三カ所はほぼ直線の箇所で、実際見たときも「なんでこんな所が決壊するんだろう?」という印象を持ちました。やはり集中豪雨とそれに伴う急激な水位上昇が大きな要因になっているのではないでしょうか?これは分析を待ちたいと思います。

決壊による浸水被害では、沖端川行基橋付近の決壊箇所は地図をごらんになれば分かるとおり住宅地の真裏で、しかも筑後広域公園と矢部川の堤防に囲まれているため浸水によりため池のような状態になり、避難が一歩遅れていたら大惨事になった可能性があります。また沖端川の2カ所の決壊箇所は1キロも離れておらず、その間に挟まれた本郷地区にはこの両方から水が流れ込んできたため集落一帯広範囲で家屋への浸水が起こってしまいました。
以下は本郷校区瀬戸島地区の被害の様子です、決壊時には一階部分がまるまる浸水するほどの流入だったそうです。
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この地域は高齢化率が高く、被災された家屋の後片付けもままならないため、休日にもかかわらず市から職員80名が急遽派遣されお手伝いをされていました。もちろんご親族・友人・消防団・JA職員をはじめとする多くの方々も駆けつけ応援されています。本当に有り難うございます。(本郷の住民一同そんなグチャグチャの状況で奮闘する中、隣接する筑後広域公園のテニスコートではどこかの高校のテニス部が練習する音が聞こえてきて、一瞬現実感を失いそうになりましたが。)

また直接的な被害を受けていない地域でも、今回の豪雨により堤防下に水みちが出来ていたり、道路整備の過程で堤防が極端に下がって水害の原因になりそうな場所などが判明しました。被災地の復旧復興、今後の水害対策、この二つを成し遂げるために、行政区・市・国としっかり連携を取り適切・迅速な対応を県としても取るように働きかけを行います。

記録的大雨による矢部川の変化

7月14日の記録的な大雨にて被害に遭われた多くの皆様に心からお見舞い申し上げます。

昨日日向神ダムの治水機能についてブログを書いたばかりでしたが、7月14日の未明から降り続いた記録的豪雨により7時台に矢部川はこの状況になりました(全ての画像はクリックすると拡大します↓)
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動画で見るとこんな感じです

普段の矢部川はこんな感じです
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似たようなアングルから取った今日の写真と比較するとその異常さは一目瞭然
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私が幼稚園の頃に一度このような状況に矢部川が増水したことを記憶しています。それ以来ですからほぼ40年ぶり。しかもその頃より2m堤防の高さを上げてこの状況ですから、もし堤防の高さがそのままだったらと思うとゾッとします。

雨雲レーダーを逐一確認していましたが、深夜から午前中までみやま・柳川・筑後・八女と矢部川の流れに沿ったように雨雲が停滞して記録的な雨を降らせており、これはもう人間の力では抗いようのない雨量の仕業としか言いようがありません。
午前中に中山地区の沖端川の堤防がまず決壊し、その後本流・矢部川の津留橋付近の堤防も決壊、それにより本郷地区と上庄地区の多くの世帯が浸水するなど多くの被害が発生しました。

明日以降、被害の実態が明らかになっていくと思いますが、取り急ぎ今日気付いた事を備忘録的に書いておきます

○ 現在避難場所に指定されている下庄小学校・上庄小学校は変更すべき。両校とも最も冠水しやすい低い土地にあり、下庄小学校は冠水して避難者を受け入れる事も出来ず。上庄小学校は沖端川の堤防決壊のあおりで周辺が膝上まで冠水してしまい、避難者が孤立したような状況になっていた(浄化槽も水没しており、レンタル業者に簡易トイレをレンタルしたにせよ、トイレが使えないと言うことはそもそも避難所としての機能を満たしていない)。
○ 福岡県が結んでいる災害協定で食料支給を要請したが時間が掛かりすぎた。今回は全県下で災害が発生しており致し方がない部分もあるが、10時過ぎに要請したにも関わらず救援物資は午後5時に福岡市内発だったとの事。例えば大牟田や久留米など地域の物流センターから発送する事は出来ないのか?
○ 逆に言えば、初動の食料は地域で用意しなければ難しい。給食センターなどとの連携はどうなっているのか?
○ 豪雨の際は防災無線が非常に聞き取りにくい。なにか工夫は出来ないのか?
○ 各地域の被害状況把握にデジタル画像の活用をもっとした方が良い。即時性と正確性が向上し、作業時間短縮も可能。受け側もジオタグ連携したらすぐ地図にて確認出来る。
○ もっとネットを活用した情報発信を!みやま市も柳川市もWebサイトによる情報発信量が少なすぎる。武雄市のようにFacebookなんかを使っても良いのでは?

書き殴りましたが、市の職員や消防団、災害対応をされた建設土木業者の皆さんをはじめ本当に多くの方が少しでも被害を食い止めるために献身的に頑張っておられました。それでも起こってしまうのが天災。常日頃の訓練が大変重視されるのは間違い有りません。

治水ダム 日向神ダム

熊本・大分をはじめとする九州地方では大雨による甚大な被害が発生しています。被災された方には心よりお見舞い申し上げます。
福岡県においても前回の大雨の際に朝倉地区で土砂崩れによる死者が発生しており、災害警戒本部が本庁や各地農林事務所にて立ち上げられています。

みやま市を流れる一級河川矢部川も普段より増水しているようですが、今のところ大きな混乱は見られないようです。これは矢部川上流にある日向神ダムが治水ダムとしての役割を発揮しているのが大きな理由の一つです。
日向神ダムは2100万㎥の貯水量がありますが、梅雨場は意図的に730万㎥まで貯水量を下げ突然の大雨や洪水があっても日向神ダムがバッファとなり矢部川への放水量を調節することで、河川の氾濫に対応出来るようになっています。

一方で、空梅雨だったり梅雨明けが早く訪れた場合は一度下げた貯水量が元に戻らないまま夏場を迎えてしまい、結果として11月から4月の「非灌漑期」と呼ばれる時期の水不足に繋がる可能性があるのです。
非灌漑期は海苔の生産や園芸農家の増加により昨今水の需要が高まっており、私が度々議会にて質問している矢部川水系水源開発の問題はこういった現状に由来しています。

同じダムとは言え治水と利水、二つの機能を持つ訳では無いという事を是非ご理解下さい。

平成24年6月議会一般質問「イオンとの包括提携協定について、攻めの環境政策について 」

20120622朝日新聞
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一、イオンとの包括提携協定について
 1.企業と自治体との適切な距離感
 2.部署をまたがる利益相反
一、攻めの環境政策について

◯十一番(板橋 聡君)登壇 一般質問最終日のトップバッターを務めます自民党県議団の板橋聡でございます。通告に従いまして一般質問を行います。
 まず、イオンと福岡県の包括提携協定について質問いたします。四月二十日、イオンと福岡県は観光振興、地域防災など十四項目で協力する包括提携協定を締結しましたが、その内容から、私は県と一企業の距離感に疑問を覚えました。プレスリリースや新聞記事によると、その協定の一環として買い物金額の〇・一%が福岡県に寄附される電子マネーカードふくおか共創WAONカードが発行されるとのことです。寄附してくれるなんてありがたいことじゃないかと感じられる方も多いかもしれませんが、これは一般的な自治体への寄附と違った仕組みでございます。イオンはわざわざこの協定のためにふくおか共創WAONカードを発行し、このカードの決済金額を寄附金額と連動させることで、福岡県や関係者に対して、心理学で言うところの外発的動機づけを行っております。わかりやすく言えば、福岡県はイオンから鼻先にニンジンをぶら下げられたような状態ということです。
 共創とは比較的新しい言葉で、ともにつくると書いて共創です。福岡県では、麻生前知事が平成八年二月議会の所信演説で述べられた、豊かで活力あるアジアに開かれたふくおかの共創に端を発し、その後五年連続で議会冒頭の所信表明で使用された造語です。共創の精神は今も引き継がれ、本年度の県の事業においても新社会推進部にNPO・企業による元気なふくおか共創事業が存在しております。お気づきのように、今回、協定の一環で発行されると位置づけられたふくおか共創WAONカードに、県の事業名の一部が含まれております。イオン側からの提案だったそうですが、これは一般県民にとって、福岡県が発行しているかのような誤解や、県がお墨つきを与えたカードとの誤解を生じさせます。
 実は、イオンは既に約五十の自治体と同様の包括提携協定を結び、それぞれの地域でご当地WAONと称される、同じ寄附の仕組みを持ったWAONカードを発行しております。昨年十月のみずほ情報総研のレポートでは、これをWAONの普及拡大戦略と紹介し、地方自治体をパートナーと位置づけております。
 そこで知事に質問です。福岡県内に流通している電子マネーは、JR九州のSUGOCA、西鉄のnimocaなどまだまだたくさんございます。私は、一企業が運営する電子マネーの普及戦略に自治体が取り込まれている状態は、自治体の公平性、中立性を損なっていると考えますが、知事の所見をお伺いします。
 次に、部署をまたがる利益相反について質問します。イオンとの包括提携協定の所管部署は新社会推進部社会活動推進課で、目的は福岡とイオンとが相互に連携を図ることにより一層の地域の活性化及び県民サービスの向上を図るとあります。具体的には、県政情報を発信する専用ボードをイオン店舗に設置、イオンの店舗にて県のイベントを開催、そして先ほども言いましたが、ふくおか共創WAONカードを新たに発行してその売り上げの一部を県に寄附することになっております。しかし、言いかえれば、協定に基づき実施するこれら一連の内容は、すべてイオンの顧客囲い込み戦略に利するものです。一方で、商工部では、少子化や大規模小売店舗の進出により苦境に立たされている中小企業の振興や商店街の活性化を政策として推進しており、その観点で今回のイオンとの包括提携は、新社会推進部と商工部で明らかな利益相反を起こしております。
 今回、新社会推進部社会活動推進課に、この部署をまたがる利益相反の状態について認識を問うたところ、いま一つぴんときていないわけです。なるほど、それはそうだろうと。社会活動推進課は、みずからに与えられた職務分掌を忠実に推進しているわけで、彼らは商店街の活性化に思いをめぐらせ責任を持つ必要はないわけです。
 そこで知事に質問です。新社会推進部が独自の政策である企業、NPOとの協働を進めるために、今後も企業との提携、協定を通じた関係を広げようとする中で、その内容、メリット、デメリット、作用、反作用を庁内横断的に精査分析して、関連部署に通達し稟議するような仕組みがなければ、部署をまたがる利益相反、つまり新社会推進部以外の部局が、議会から認められた予算に基づき進めている政策の足を引っ張る可能性があることについて、知事の所見をお伺いします。
 続きまして、攻めの環境政策として大きく二点質問します。
 まず一点、生物多様性戦略のような環境政策は決して環境部だけで完結せず、幅広くすべての部局がかかわるもので、従来の縦割り行政ではその効果を存分に発揮できない可能性があります。例えば、農林水産部において平成十五年より福岡県減農薬・減化学肥料栽培認証制度という事業が行われております。これは化学肥料と化学農薬が県の基準量の二分の一以下で生産された農産物に県が検査を行い認証するもので、食の安全や農産物の付加価値向上に資するだけではなく、環境保全、特に水田のような湿地の環境が減農薬、減化学肥料により改善されれば生物多様性の維持に大きく寄与するわけです。この認証制度は平成十五年に始まりまして、当初は右肩上がりに栽培面積、そして認証農家戸数ともにふえておりましたが、平成二十年ごろから頭打ちになり、県内の耕地面積に占める割合は三%程度にいまだとどまっております。理由を聞きますと、技術的な問題や減農薬、減化学肥料の価値を認めてくれる消費者が広がらないというのが主な原因とのことです。この事業は説明のとおり農林水産部が所管しており、環境政策的意味合いも非常に大きいのですが、環境部の密接な関与は基本的にはなかったと聞いております。
 そこで知事に質問です、このような環境政策にかかわる具体的な事業は、環境部だけでなく庁内各部局で行われておりますけれども、その中で環境部が情報を集約し、必要あれば有識者の紹介やアドバイスを行い、関連部署と調整をして、今までコストセンターと見られがちだった環境政策から、福岡県の魅力向上、あるいは県産品の高付加価値化といった攻めの環境政策に進化させるべきと考えます。特に、みやま市を初めとする県南地域は生物多様性に深く関係する農業が重要な産業で、至るところに農地がございます。環境保全と経済発展または地域振興を両立させるような攻めの環境政策が待ち望まれるところです。知事の所見をお聞かせください。
 また、環境政策においては啓発が重要になります。県教育委員会においても、環境部を通じ県が進める環境政策と連携し、児童生徒の理解を深めるような教育を推進する必要があると考えますが、教育長の見解をお聞かせください。
 続きまして、攻めの環境政策二点目の質問として、矢部川水系の流況についてお伺いします。まず、東日本大震災の原発事故以降、クリーンエネルギーの活用が叫ばれており、その中でも水力発電はエネルギー効率がよいと言われております。矢部川には既に福岡一の水力発電を抱える日向神ダムがございますが、今議会の我が会派の質問でも触れられたとおり、ぜひ県内各ダムにおいても水力発電の導入を推進されるよう強く要望しておきます。
 そして私は昨年の六月議会、初めての一般質問にて、前職の県議の思いを受け継ぎ、矢部川水系の抜本的水源対策に関して知事にお尋ねしました。それに対し小川知事からは、利水ダムの検討まで踏み込んだ麻生前知事の過去の答弁を踏まえ、さまざまな方策について総合的に研究していく旨、御答弁いただきました。
 そこで知事に質問です。あれから一年、県としてどのような具体的な動きがあったのか、その進捗と今後の取り組みを御説明ください。
 以上、知事の明快な御答弁をお願いして、私の一般質問を終了いたします。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 イオンとの包括提携協定についての私の認識でございます。県ではかねてから、共助社会づくりに向けましてNPO・ボランティアとの協働を初めといたしまして、企業に対しても社会貢献活動の取り組みを促してまいりました。今回、イオンから当県に対しまして、企業の地域社会への貢献という観点から、県との協働を進めていきたいと包括提携の御提案がありました。県では、庁内の各部、関係課におきまして、県民サービスの向上という観点から、それぞれの立場で精査をいたしました上で、県産品販売や地域の安全、安心、青少年の育成、そういった幅広い取り組みについての協定を締結したものでございます。この協定のもとで、県産品、まごころ製品の販売でありますとか、店舗での、議員御指摘のポスター掲示のためのボードの設置、広報紙等のいわゆる配架、棚に置いてもらう、そういった取り組みを具体的に進めていきたいと考えております。
 また、イオンが他の多くの道府県で行っております取り組みと同様に、御指摘の電子マネーカードの利用金額の一部を本県の共助社会づくりのために寄附するという提案がありました。この提案につきましては、企業が独自に寄附の仕組みを考案し、自主的に社会貢献活動として取り組むものであると、県が特定の企業活動を後押しするようなものではない、そのように考えております。また、収益に応じた寄附というのは、企業の社会的貢献活動の一つとして広く使われることでございますので、このカードの提案についても協定項目の一つとしたところでございます。
 それに関連して、県庁内部署にまたがる課題の対応でございますが、今回のイオンとの協定事項は、庁内の各部、関係課におきまして、それぞれの立場でどのような提携が適当か、これを精査し、検討した結果、総合的に判断をいたしまして、協定締結の決定をしたものでございます。今後とも、このような協定につきましては、各部、関係課の連携を密にいたしまして、施策の方向性、県が行っております各施策の方向性にそごを来すことがないように、分析や調整を十分に図りながら対応してまいります。
 攻めの環境行政ということで、環境行政における環境部と各部の連携についてお尋ねがございました。持続可能な社会づくりを目指していく上で、生物多様性の保全というのは重要な課題でございます。県が実施するさまざまな施策におきまして、この生物多様性への配慮が必要であると、このように考えております。県では、今年度、生物多様性を保全するための地域戦略、これを策定することといたしておりまして、現在、各部が実施する事業に生物多様性の視点が盛り込まれるよう、環境部が中心となりまして議論を進めているところでございます。
 当然その過程で、場合によっては専門家の紹介、そういったことも考えられていくわけでございます。これらの生物多様性に配慮した各部の事業が実施されますことで、ひいては議員御指摘にありましたように、地域や県産品のイメージアップにもつながっていくものと考えております。
 次に、矢部川水系の水資源対策にかかわる調査研究の進捗状況、私の答弁以降の進捗状況についてお尋ねがございました。矢部川水系の水資源対策につきましては、日向神ダムにかんがい期の農業用水を確保するとともに、そのダムの弾力的運用によりまして流量改善に努めてまいりました。また、農業用水が不足する場合には、筑後川から導水することができます筑後川下流用水による対応を関係市町や関係団体等と連携しながら行っています。
 議員から御質問いただきました昨年の七月以降の県の対応といたしましては、まずダムの弾力的運用で貯留いたしました八十四万立方メートルの水を、関係団体からの要請を受けまして平成二十四年二月十日から二十九日まで放流を実施いたしまして、矢部川の流況改善を図ったところでございます。また、筑後川下流用水につきましては、矢部川の流況が悪く、希釈用水が不足した場合に筑後川下流用水で補給することが昨年から可能となってございますが、県といたしましては、施設管理者である水資源機構と連携し、関係者にその周知を図ってきたところでございます。加えまして、弾力的運用で貯留した水の放流時に、矢部川河口域のノリの養殖に必要な栄養分の供給につきまして、昨年の九月からでございますが、五地点で調査を開始いたしておりまして、これまで調査の結果、放流水が栄養分の補給の増加に寄与している、そういった傾向が見られました。今後、この放流水がノリ養殖に効果があるか、そういったことなど、さらに確認をするために、二十四年度、本年度も調査を継続してまいります。

◯議長(松本 國寛君) 杉光教育長。
*教育長答弁

◯教育長(杉光 誠君)登壇 県の環境政策と連携した教育の取り組みについてでございます。環境教育は、人間の諸活動と環境との関係について理解し、環境保護、保全活動に主体的に参加するとともに、環境への責任ある行動ができる児童生徒を育成するための教育でございます。その中でも、学校における生物多様性保全の取り組みは、減農薬等による生産活動や河川の生態の調査など多岐にわたっております。これらは県の環境政策とも密接に関連しておりまして、環境、農林水産関係職員等を招き、実践に取り組んでおるところでございます。さらに、県の環境政策を実効性のあるものにするためには、その政策を正しく理解し、実践する児童生徒の育成が重要でございまして、今後とも環境関係部局と一層連携しながら、環境教育の充実に努めてまいります。

◯議長(松本 國寛君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 知事の答弁を受けまして、二点再質問をさせていただきたいと思います。
 イオンとの協定について、企業と自治体の距離感という観点で、知事の御答弁では、もうちょっと突っ込んだやりとりをしたいところですけれども、一般質問の場にはそぐわないので、それは特別委員会などにお任せして、今回、一点だけ再質問させていただきたいと思います。
 企業というのは、ベンチャー、中小そして一部上場企業、外国資本、世論の賛否が分かれる企業、そして反社会的企業まであり、ありとあらゆる形態がございます。また優良企業と思っていても、ある日突然トラブルが発覚して問題企業となる場合もあります。記憶に新しいところで言えば、アレルギー訴訟になったりだとか、食中毒だったりだとか、あるいは社長が使い込みをしておっただとか、そういうふうなニュースが皆さんの記憶にも新しいと思います。県が今回のような協定により直接企業との契約関係を結ぶ場合、現時点でどんな企業なら福岡県として契約してよいかという明確なガイドラインがないと聞いております。ガイドラインを設定する必要はないのでしょうか。その理由とあわせて、知事の所見を御披露お願いします。
 そして、矢部川水系の流況の調査研究について。新たに行っていただいた栄養分調査ですが、栄養塩は有明海の主要産業の一つでございますノリのできばえを左右する重要な要素でございます。特に、昨シーズンは、ノリの生産時期の前半に、非常にノリのできが悪かったんです。大凶作になるかということで大変危惧されておりました。しかし、後半に巻き返して、最終的には例年に近い出来高で終わったのは、ことし二月に行われた日向神ダムの早だめによる弾力活用放流が寄与している可能性があります。今後とも、そういう意味で栄養分調査は、経年変化を見きわめ、矢部川の流況安定がノリ生産に対し定量的に効果があることを確認するためにも、平成二十四年度以降も継続することを要望いたします。
 またここで二つ目の再質問ですけれども、昨年も申し上げましたが、農業、水産業、防火用水、観光、そして環境保全の観点から、筑後平野南部に恵みをもたらす矢部川水系の流況安定は、私の議員としてのライフワークとして取り組む所存でございます。県議会のミスター矢部川として、福岡県がさまざまな調査を行いながら抜本的対策を継続して検討することが肝要だと考えますけれども、知事の所見をお聞かせ願います。
 昨年の一般質問で矢部川水系の現地視察を知事に要望したところ、十一月三日に現地まで赴いていただき、ありがとうございます。しかしながら、白秋祭水上パレードのどんこ船からでは、なかなか現地の窮状も伝わりにくかったかと思いますので、矢部川水系の流量不足が一番深刻な、ノリ生産のピーク時にぜひ現地を訪れていただき、現場で苦慮されているノリ漁家を初めとする地元住民の生の声に耳を傾けていただけるよう、現場主義を標榜されている小川知事に切に要望させていただきまして、私の再質問を終了いたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯議長(松本 國寛君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず第一点目、企業との連携協定に関連いたしまして、ガイドライン、御提案ございました。御承知のとおり社会経済情勢の変化というのは非常にスピーディーで、またその振幅大きいものがございます。またそれに伴いまして、市民の皆様、県民の皆様、国民の皆様のニーズも変化してまいります。意識も変わってまいります。そういう中で、やはり県民福祉の向上という観点から、当該協定を結ぶのがいいのかどうか、どういう範囲で結ぶのがいいか、それを考えていくのが基本だと思っております。そういう意味では、いろんな変化の中で機動的な対応をしていく、それを考えますと、今私どもやらせていただいておりますように、関係各部局におきまして連携をとりながら、それぞれの立場からしっかりその協定の内容を分析あるいは調整をして、県民の福祉の向上に資する形、あるいは資するものかどうか、これについてしっかり検討していく、連携をして取り組んでいく、そういう形がいいと思っております。
 第二点、矢部川水系の水源対策でございますが、御承知のとおり、矢部川の水というのは、流域の農業水ばかりでなくて、水産業あるいは掘り割りの水を活用いたしました防火用水といった水資源としても活用されております。流域にとって極めて重要なものであります。この水系におきます対策につきましては、今後とも必要な水資源の確保に努めるとともに、矢部川の水の効果的な使い方を初めさまざまな方策につきまして、議員いろいろ御指摘もありましたが、さまざまな方策につきまして引き続き関係部局が連携をとりながら、費用対効果などを含めまして総合的に調査研究を続けていきたい、このように考えております。

平成23年6月議会一般質問「県内地域格差、農業振興、矢部川水系水源開発について」

公式動画へのリンク(WindowsMediaPlayerが必要です)

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆様、お待たせしました。こんにちは。四月の統一地方選挙において、みやま市選挙区のほうから初当選させていただきました、自由民主党県議団の板橋聡でございます。
 まず最初に、私ごとではございますけれども、父、板橋元昭が七期二十八年にわたり福岡県議会議員を務めさせていただいた際には、先輩議員の皆様、そして執行部の皆様にも大変お世話になりましたことを、ここに改めて御礼申し上げる次第でございます。
 私は会社員でございました。行政経験、議員経験がないままこの世界に飛び込んでまいりました。皆様の御指導、御叱咤を賜りながら、一刻でも早く県民の皆様の負託と信頼にこたえ、福岡県政発展のための一翼を担える議員となるべく努力する所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 さきの統一地方選挙で新しく小川洋県知事が誕生しました。選挙戦のさなか、私の選挙区であります、みやま市にも、遊説を初め幾度か足を運んでいただき、その都度地域住民に対して、県南は福岡の第三のエンジン、農業に夢と活力、生きがいをと、みやま市を含む県南地域へのエールと、その主要産業であります農林水産業への思いを語っていただきました。「言うはやすく行うはかたし」ですが、地域住民は県行政における県南振興について、今度こそは本物だろうと厚く期待していることを冒頭申し上げておきます。
 福岡県は、九州の玄関口として商業、サービス業を集積する福岡都市圏地域、官営製鉄所をルーツに工業都市として成長を続ける北九州地域、産炭地から文化都市へと変貌を遂げつつある筑豊地域、そして肥沃な筑後平野、一級河川筑後川、矢部川を擁し、そして福岡県の食糧基地とも言える県南地域と、方向性の違いはあれど、その地域地域が持つ地理的特徴や、はぐくんできた歴史、文化を資産とし、バラエティーに富んだ特性を生かし、一極集中ではなくバランスよく発展することこそが福岡県の最大の強みになるのは、小川知事も議会初日の所信でおっしゃったとおり、疑いのないところでございます。
 ところが一方で、福岡県の状況を定量的な切り口で見ますと、余りバランスがよいとは言えない状況がございます。例えば、人口推移を昭和六十年と平成二十年で比較しますと、福岡県全体は四百七十万人から五百三万人、約七ポイント増でございます。これを地域で比較しますと、福岡都市圏は百九十万人から二百四十一万人、二七ポイントの増。一方で、県南地域は八十九万人から八十五万人と四・五ポイントの減。さらに私が住んでおります、みやま・柳川の地域では十三万五千人から十一万六千人と一四ポイントの激減となっております。人口構成で比較しますと、昭和六十年に福岡都市圏の十五歳以上六十五歳未満のいわゆる生産年齢人口比率は約六九%、一方、みやま・柳川地域は六五・五%と、当時から約三・五%の開きがございました。それが平成二十年には福岡都市圏が六八・二%とほぼ横ばいに推移しているのに対し、みやま・柳川地域は五九・八%と六%も減少し、福岡都市圏との比較において約九%と差は開く一方です。
 こういう話をしますと、少子、高齢化の一言で片づけられがちですけれども、これはお年寄りに甚だ失礼な話で、知事が政策に掲げている七十歳現役社会のような活力ある高齢化は、寿命が延び、そして労働人口がふえるよい現象と私はとらえます。やはりこれは少子化、しかも若者世代が仕事を求めて田舎を離れ都市部に移り住むために加速に輪をかける少子化に原因が尽きると考えます。一人当たりの平均所得を見ると、その差は歴然とします。平成二十年の県全体の一人当たりの平均所得は約年間二百六十五万円、これを地域で比較しますと福岡都市圏は二百八十四万円、私が住んでおります地元のみやま地区は二百二十八万円、年間約六十万円の違いがございます。これは一人当たりの平均所得ですから、世帯で換算しますと年間百万円以上の所得格差が県内に存在する。それゆえ若者は収入を求め都市部に移り住む、あるいは逆に地元に残ると収入が安定しないため、なかなか家庭を持つ勇気が持てずに少子化に拍車をかける悪いスパイラルを構成しています。
 そこで最初の質問です。県民幸福度日本一を目指し、将来に希望や幸福を実感できる地域社会の再構築を掲げる小川知事は、同じ福岡県に生まれ育っても、地域間にこのような格差とハンディキャップがある現実をどうお考えでしょうか、知事の所見をお聞かせください。
 私は、福岡県のバランスがとれた発展を阻害するような、県南地域の深刻な少子化スパイラルにくさびを打つためにも、やはり県南の主要産業であります農林水産業従事者の所得の向上と安定、それによる後継者確保は現実的で即効性のある有効な対策の一つと考えます。所得の向上という観点で、私自身多くの園芸農家の方から、福岡県の行っている高収益型園芸産地育成事業は大変有効であるとの評価をしばしば聞かされています。ハウスや高性能の農業機械を導入することにより、生産性を高め、コストを圧縮し、安定した収益の実現に役立ち、ひいては農業を継ぐことをためらっていた御子息とも将来について前向きな話ができるなど、後継者確保にも明るい兆しが出てきたそうです。少子化対策は待ったなしの喫緊の課題です。このような具体的、直接的効果が上がっている事業があるのですから、福岡県の財政も厳しい折、効果が高く即効性がある分野にもっと事業の特化と予算の傾注をし、今後とも継続、拡大をしていただきたい。
 そこで知事に質問です。農業の後継者確保に関する具体的な指標、数値目標を県としてお持ちでしょうか。また、農業の後継者確保と県南の所得向上の観点から、今後の高収益型園芸産地育成事業の継続と見通しについて、知事の見解をお聞かせください。
 さて、知事は安全、安心、安定という表現を多用されておりますけれども、所得の安定のために欠かせないのがリスクの軽減です。農林水産業は人知の及ばない大地を、海を、空を相手にしている事業ですから、もちろん豊作もあれば不作もあるのは避けられないことでしょう。しかし、安心して農業に従事し、そして後継者を育成するためには避け得るリスクを取り除き、ミニマイズする努力をするのが行政の役割だと考えます。
 県南を初め県下全域の中山間地域はイノシシの被害が多く、水田、畑作、果樹すべての作物において食害が大量発生していることを御存じでしょうか。しかしながら、防護さくの設置を進めようにも、現在の県の対策予算が全く不足しており、思うように設置が進みません。中山間地は特に零細農家が多いものですから、各農家に与える影響は甚大なものがございます。今年度予算では、農林水産物鳥獣被害防止対策費は増額される予定ですが、それでも全く間に合わない規模で、県下で鳥獣被害が発生しているという御認識を知事はお持ちでしょうか。イエスかノーかでお答えください。
 農林水産物鳥獣被害防止対策費用の内訳には、捕獲、駆除したイノシシ、シカ、いわゆる害獣を地域資源として活用するための処理加工施設事業が挙がっております。自治体財政が厳しい中で、このように害獣を資源とする試みは循環型の対策として評価されると思います。現在、県下の害獣の食肉加工施設はみやこ町、添田町に存在し、糸島市に計画がございます。しかし、八女を中心に年間三千頭の捕獲、駆除が見込まれます県南地域にはございません。
 知事にお尋ねします。将来的に県南地域にも有害鳥獣加工施設を設立し、福岡県全体として害獣の資源化を進めるおつもりはありますでしょうか。
 これらの鳥獣被害対策は福岡県内でも農林水産部、環境部、保健医療介護部と複数の部署に関連しております。そのため、横の連携を充実するよう福岡県鳥獣被害対策協議会が平成十七年より開催されておるそうですが、内容を見る限り、情報交換やわな、電気さくの仕掛けに関する研修など、既存事業の円滑推進、有効活用が主たる目的であり、鳥獣被害に対し効果の上がる大胆な施策を協議する場ではないと思われます。例えば、イノシシ肉の特産品化、ブランド化などを本気で目指すのであるならば、鳥獣被害に悩む側や鳥獣駆逐を管理する側だけの視点ではなく、販路拡大やまちおこしのノウハウを持った組織、具体的には企画・地域振興部や商工部及びその管轄の団体、自治体まで巻き込んだ全庁横断型のプロジェクトチームを新たに立ち上げるべきではないでしょうか。ここはぜひ、小川知事がリーダーシップをとり、部署間の調整、基礎自治体との連携を含めた効果的な対策を検討していただきたいと思いますが、この件についての知事の所見をお伺いします。
 また、みやま市の有力作物でありますミカンにおいては、収穫期にカラス、ヒヨドリ、メジロなどの野鳥の被害で出荷不能の作物が発生し、その数量も無視できない状況です。ブドウなどは防護ネットによる対策が可能です。しかし、ミカンの場合には作付面積が広大なため、防護ネットによる対策は不可能です。山間地域における木の実などのえさの減少や、市街地のごみ出し時におけるカラス対策などにより、えさを失った野鳥が原因となる食害が今後ふえることは間違いありません。福岡県として、ミカンや大豆など作付面積の広い作物に対する野鳥の食害対策をどのようにお考えか、知事の所見をお伺いします。
 最後に、筑後平野には筑後川と矢部川という二本の一級河川が流れておりますが、私が住んでいる筑後平野南部において、農業用水は矢部川水系に多くを依存している状況です。先述のとおり、高収益事業育成の施策もあり施設園芸農家が拡大していることは、収益の向上、安定化に対する一つの効果的な対策と考えますが、そのために、過去と比較して十一月から四月までの非かんがい期における農業用水の需要が高まっております。同様に、農業に限らず有明海に注ぐ矢部川水系の水量は、これまた筑後地域の主要産業であるノリのできばえを左右する栄養塩に多大なる影響を与えます。さらに、ノリの生産のピーク時が非かんがい期、つまり昨今施設園芸農家の拡大により水の需要がふえた時期に重なるため、水量不足に拍車がかかる状況となっております。
 平成十三年に起こりましたノリの凶作の際、ノリ生産業者は子供の給食費にすら事欠くような苦境に立たされました。その際は、地元自治体において給食費補助などを行い緊急対策が講じられたそうですが、そのような不安定な状況はノリ生産、施設園芸にかかわらず、幾ら高収益事業化が進んでも、なりわいとしての魅力は半減してしまいます。また、有明海の潮の干満で逆流してくる浮泥の堆積により、塩塚川、沖端川河口にある漁港では、毎年毎年一億数千万のしゅんせつ工事なしでは漁船の出入りにも支障を来すような状況ですが、これも矢部川水系が浮泥を攪拌し押し出すだけの潤沢な水量を有していれば、しゅんせつ工事のコストが軽減される可能性もあります。求められるのは対症療法ではなく、抜本的な対策でございます。矢部川水系には、御存じのとおり県内有数の貯水量二千三百八十万トンを誇る日向神ダムがございますが、これは治水を目的としたダムですので、梅雨期でございます六月十日から七月二十一日の間は貯水量を七百三十万トンまで強制的に落としてしまいます。すると、ことしのように梅雨明けの時期が早く訪れる場合、小手先の弾力的な運用を行っても意味をなさず、夏の雨量次第では深刻な水不足が筑後平野南部地域の農林水産業に大打撃を招く可能性を、知事は御理解されているでしょうか。ここはぜひ、矢部川水系の抜本的水源対策について御検討をお願いしたいと思います。
 同様のことを、本年五月三十日に行われました県南総合開発促進会議において、柳川市の金子市長が要望されました。また昨年十二月の定例議会では、私の父、板橋元昭前県議が、やむにやまれぬ思いでしょうか、十六年ぶりに一般質問の舞台に立ち、強力に要請しております。その際、当時県知事だった麻生前知事からは、まず矢部川水系の流況について調査研究を行い、それをもとに新たな利水用ダム建設を含めた抜本的な対策を検討する旨の答弁をいただいたことを議事録にて確認いたしました。しかしながら、この場には麻生前知事も、質問を行いました県議会議員もおりません。
 そこで小川新知事にお尋ねします、矢部川水系の水源開発に関する小川知事の認識を御披露いただいた上で、前知事がお約束されました流況に関する調査研究の現状及び今後の見通しについて、行政の継続性の原則に基づき、詳細に説明と見解をお示しお願いいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、県内の地域格差、その解消の問題でございます。県内の地域格差は、これは何としても解消していきたいと思います。そのためには、地域がそれぞれの特色を生かしながら発展していくということが重要でございます。地域の方々と一緒に知恵を出し合いながらやっていきたいということ、それから、それぞれの地域間で相互に補完し合っていくことが、県のバランスのとれた発展という意味では、これも大事だろうというふうに考えております。その上で、御質問にお答えしたいと思います。
 高収益事業の継続についてお尋ねがありました。この事業は、収益性の高い園芸農業を実現するために、先進技術の導入でありますとか、省力機械、施設の整備を支援するものでございまして、園芸農家の経営改善に大きく貢献しているというふうに考えております。その結果、園芸農業の産出額は、今本県の農業の産出額の約過半を占めるまでに至っておるところでございます。県といたしましては、園芸農業の振興を図るために、本年度も六次産業化の視点も取り入れながら、この事業費の大幅拡充をしたところでございます。本事業については、引き続き実施をしていきたいと、このように考えております。
 そのときに、御質問でございますが、新規就農者の目標があるのかということでございますけれども、現行の福岡県農業・農村振興基本計画の中で、園芸農業を含めた新規就農者の方については、年間二百人という目標を持っております。現在、二十二年、昨年の段階でいいますと、百五十名ちょっと切るぐらいでございます。そういう意味では、次の計画でもこうした具体的な目標を検討していきたいというふうに考えております。
 それから、中山間地におきます鳥獣被害の防止対策についてお尋ねがございました。県では、鳥獣被害防止特措法に基づきまして、まず市町村が作成いたします被害防止計画の作成支援、それからこの計画に基づく被害防止対策を、国庫交付金であります鳥獣被害防止総合支援事業を活用しながら実施をしている、この二つの仕事をしているところでございます。本事業は、本年度から全額国庫負担による侵入防止さくの設置、そういったメニューも創設されまして、国の予算ふえたわけでございますが、全国的に非常に要望が高くなりまして、集中をいたしました。その結果、私どもの県では三億八千万円余ということでございました。先ほど先生御指摘がありました、現場では不足という感じを持っておられるのかもしれません。それを踏まえまして、県としましては、この事業というのは、今年度から三カ年で実施をするという国の計画になってございますので、事業として今後採択が確実なもの、そういう採択されやすい形のものになるように、特に評価の高い市町村区域といいますか、その村域を越えた被害防止体制の構築とか、いわゆる国側では評価の高いと見られておりますような、そういう事業というものを関係の自治体と一緒になって仕組んでいく、考えていく、そういった被害防止体制の構築を考えていく。それから、被害防止計画を策定する際、いろいろ私どもがアンテナを高くして集めた情報も提供しながら、指導、助言もやっていきたいと、このように考えております。
 それから、処理加工施設についてお尋ねがありました。捕獲したイノシシやシカを食用として利用するためには、捕獲後、限られた時間内に食肉処理を行う必要があります。現在、県内には、先生御指摘のとおり、町が設置しました処理加工施設が二カ所ございますが、いずれも県北のほうにあるわけでございます。県南に設置をすることは必要ではないかと私は思っております。
 なお、八女市が処理加工施設の新設を検討中であるというふうに私は聞いております。そうした八女市の近隣地域での利用も含めまして、先ほど申し上げました、国に提出をします実際の計画書の策定に当たりましては、そういう施設の設置というものがうまく採択されますように、情報収集と指導、助言といいますか、知恵をお互いに出し合っていくと、そういう作業を行ってまいりたいと考えております。
 それから、捕獲鳥獣の利用の推進のあり方について御質問がありました。捕獲した鳥獣につきましては、その獣肉はもとより、皮や角まで含めた利用を拡大していく、そのためには的確な捕獲方法と、それから安定供給のための収集、運搬方法、それから解体技術の向上であります、それから得られたものの販路の開拓ということが大事でございます。その際、御指摘がありましたブランド化ということもあろうかと思いますが、さまざまな課題を解決する必要がございます。県としましては、県や関係団体と構成しております福岡県鳥獣被害対策協議会というのがあるわけでございますが、御指摘もありましたように、これをまた見直して、被害防止だけではなくて、捕獲獣の有効利用、これも頭に置きながら、全庁的に関係する部局を参加させる形で解決に向けた取り組みについて研究していきたいと、このように考えております。
 それから、カラス、鳥のほうの被害でございますが、被害対策としましては、防鳥ネット、テグス、それから爆音器の利用など防止対策を行っているところでございます。市町村が猟友会の御協力を得て、銃やわなによる捕獲対策を行っているところでございますが、必ずしも十分な効果が得られてないようでございます。現時点では、残念ながら、なかなか有効な手段が見つかってないというような状況かもしれません。このため、私どもとしましては、ほかの地域での取り組み事例でありますとか、研究成果というものを広く情報収集しながら、有効な方法というものを探求していきたいと思っております。
 矢部川の流量の抜本対策についてお尋ねがございました。矢部川の水は、流域の農業用水ばかりでなくて、先ほどありましたノリ、いわゆる水産業や掘り割りの水を活用した防火用水など水資源としても活用されております。この流域にとりましては、極めて重要なものであると考えております。これまで日向神ダムにかんがい期の農業用水を確保するとともに、そのダムの弾力的運用によって、矢部川の流量改善に努めてきたわけでございます。また、農業用水が不足する場合には、筑後川下流用水によります対応を行っております。こうしたことを通じまして、農業、それからノリを初めとする水産業に必要な用水を供給するとともに、副次的な効果としての防火用水の確保にもつながっているところがあります。今後とも、必要な水資源の確保に努めるとともに、矢部川の水を効果的に使うための方策について研究してまいりたいと思います。
 先ほど、前麻生知事と、お父様、板橋県議との質疑のやりとりのお話がございました。これにつきまして、私も議事録を読ませていただいております。矢部川の流況につきましての調査研究というのは、これからやりまして、その研究結果も踏まえながら、さまざまな方策について、費用対効果、いろんなことを総合的に研究していきたいということをここで申し上げたいと思います。

◯議長(原口 剣生君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 私も初めての質問でございますので、前向きな御回答もあれば、なかなか満足しにくい御回答もあるかなと思いますけれども、まずは私の思いを伝えたということで、これをスタートラインに、今後につなげていきたいと思います。
 特に、矢部川水系の問題は、すぐに百点満点の答えが出てくるとは思っておりません。しかし、矢部川が筑後川と並んで県南に恵みをもたらす河川となるよう、私の県議会議員としてのライフワークとしてこの問題に取り組んでいきたいというふうに思う所存でございます。小川知事も、早期に現地視察などに来ていただきまして、できない理由を探すのではなく、県民のために一緒に知恵を絞り、どうやったらできるのか前向きに取り組んでいただくことを要望し、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 本日はありがとうございました。(拍手)