平成27年6月議会一般質問「景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について」

録画中継にて知事答弁を含め視聴する事が可能です
板橋聡の議会質問録画中継

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質問要旨 一、景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について
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◯十八番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自民党県議団の板橋聡です。二期目を迎えました小川知事に対する一般質問のトップバッターを務めさせていただきます。常日ごろから御指導をいただいております先輩諸氏、同僚議員の皆様の御配慮に感謝申し上げて、始めさせていただきます。
 四年前、私が初めて一般質問の舞台に立たせていただいた際、小川知事より、県内の格差を何としてでも解消し、地域の特色を生かしてバランスある発展を目指す旨、力強いお言葉をいただきました。あれから四年の時が流れ、国政においては政権与党がかわり、経済政策も緩やかなインフレを目指すよう方針転換が行われ、それに伴い為替相場、株価初めとする経済環境が激変した中、今回は景気回復の地域格差と地域の人材多様性確保について質問をさせていただきます。
 まず、景気回復の地域格差についてです。経団連が六月十九日に発表した二〇一五年春闘の月例賃金引き上げに関する最終集計では、大手企業の賃上げ額は八千二百三十五円となり、十七年ぶりに八千円を超え、賃上げ率は二年連続して二%を上回りました。直近の景気動向指数は前月比一・九ポイント上昇し一一一・一となり、内閣府は基調判断を引き続き改善を示していると発表。また、民間企業の設備投資増により二〇一五年一─三月期のGDP二次速報値は前期比年率三・九%増で、一次速報値から大幅改善をしております。このように、多くの景気指標は経済状況の改善を示し、消費税率アップによる足踏みがあったものの、アベノミクスと呼ばれる経済政策は着実に実績を残していると言えます。
 しかしながら、私の地元のみやま市初め市井の声に耳を傾けると、そこまで景気のよい話が聞こえてこないのも現実です。知事も同様に、六月議会の説明要旨や我が会派の代表質問に対する答弁など、アベノミクスの効果による県内経済の見通しについて事あるごとに、県経済は持ち直してきている、その回復を確固たるものにするとした上で、県内各地でそれを実感できるようにすると発言をされています。
 そこで知事に質問です。知事が景気回復を県内各地で実感できるようにするというのは、裏を返せば県内でもまだ景気回復を実感できない地域があるという意味だと理解します。景気回復に関する県内地域格差について知事の所見をお聞かせください。
 当初、景気回復は、東京を初めとする大都市圏が起爆剤となり、徐々に地方へ波及していき、最終的に県下隅々で実感することができるものと思っておりました。つまり、都市部と地方には景気回復の時間のずれ、すなわちタイムラグが存在するため、このタイムラグの期間を乗り切れば、まず都市部に訪れた景気回復の波が地方に押し寄せるのではと考えておりました。しかし、景気指標と言われる業況判断DIや有効求人倍率、完全失業率など主要な数値を過去二十年ほどさかのぼって調べてみると、東京、福岡、全国平均は全てほぼ同じタイミングで上昇したり下降したり回復をしております。つまり、リーマンショックがあれば同時に全て下降し、政権交代すれば同時に上昇し、消費税が上がれば同時に下降しており、そこにタイムラグは存在しません。存在するのはタイムラグではなく、地域による上昇または下降する振れ幅の違いでした。つまり、東京は回復するときは大きく上昇する、福岡は小さく上昇する、下がるときには同時に下がり始めてほぼ同じタイミングで底を打つ。今のところ福岡県内各地の詳細なデータは存在しませんが、県内でも都市部と地方で同様の傾向があることは想像にかたくありません。
 そこで知事に質問です。景気回復を県内各地で実感できるようにするとは、すなわち景気回復の振れ幅が小さい地方においてこれを押し上げることにほかならず、景気回復のピークを迎える前にこれに対する具体的かつ効果的な施策を速やかに打っていくことこそが景気回復の地域格差是正につながると認識しますが、知事の御所見を披瀝ください。
 さて、景気回復の振れ幅は、地域によって格差が存在するということについて質問しましたが、その際、大きな問題となるのが賃金格差です。アベノミクスの第二の矢と呼ばれた財政出動などをきっかけに、人手不足の声が聞かれるのが土木職です。この求人賃金の東京と福岡の差額を、アベノミクス前後という観点で政権交代前の二〇一二年十二月と二〇一五年直近を比較します。そうすると、最高賃金における東京と福岡の差は二〇一二年十二月に五・六万円だったものが、直近では七・七万円に広がり、最低賃金においても二・三万円から四万円に広がっています。もちろん、福岡でも賃金は上がっているものの、上げ幅が小さいため東京との差がむしろ広がる結果になっており、これは福岡県内においても同様の傾向、すなわち景気回復に伴い都市部と地方の賃金格差は広がっていると考えられます。そうすると、四年前の私の一般質問でも同様の指摘をしておりますが、給与がよく、人材の流動性もあり、景況感もいい都市部に新規学卒者を含む求職者は流れることになり、これは地方創生議論の肝である人口の一極集中をさらに加速させる懸念すらあります。また同様に、福岡県内各地には、地域の特色に根差した技術力を武器として活躍するローカルな物づくり企業が多数存在します。例えば、筑豊地域では、炭鉱産業の二次産業として技術を磨いた鉄工会社などが、自動車産業を初めとする新しい分野へ続々と乗り込んでいます。また私が住む有明海周辺では、ノリ養殖の最盛期に、不眠不休で行われるノリの生産、加工を支える技術を持ち、二十四時間対応の保守体制を整えた機械メーカーが複数存在します。これら地域密着の物づくり企業が今、口をそろえて技術者の確保が大変難しいと言っております。景気回復や賃金の地域格差が原因で地方から技術人材が流出し、前述したような地域に根差した物づくり企業が存亡の危機に立たされるのは、雇用問題はもちろん、地域が人材の多様性を失い、そこに生まれ育つ青少年にとって身近な目標となる社会人の種類が減ることは、地域の柔軟性や活力を失うことにつながります。
 そこで知事に質問です。四年前も指摘しておりましたが、給与格差が景気が回復傾向のために引き続き拡大する中、地方では人材、特に技術系の人材確保が難しくなっております。雇用面について、地域における人材多様性の重要性と、その確保のためにどのような対策が必要か、知事の所見をお聞かせください。
 最後に、中小企業振興条例について質問します。知事は、地域経済を支える中小企業を総合的に支援するために、中小企業振興条例制定に向け準備を進めているとおっしゃっております。我が党の代表質問において、これまで九十二社の経営者に対し本庁職員が直接ヒアリングを実施したり、現在千二百社を対象にアンケート調査中とのお答えをいただきました。そこで私は、ひそかに危惧していることがあります。経済産業省出身の知事だけに、物づくり系企業に偏ったヒアリングやアンケートにならないだろうかと。例えば、先ほどからお話ししているように、景気回復の幅が小さい地方において、公共事業は景況感に大変大きなウエートを占めます。その点で、公共事業を担う企業の意見や地域ごとの特徴もしっかり反映させるなど、都市部だけでなく、地方の景気回復に対しても実効性のある条例を目指していただきたいが、知事の御所見を御披露ください。
 以上、四年前の初質問で取り上げた県内地域格差を主眼に置いて質問をいたしました。知事の選挙のスローガンどおり、四年前よりさらに前進した答弁を期待して、質問を終わります。(拍手)

◯議長(井上 忠敏君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、景気回復の地域格差と、それに対する対策でございます。福岡県の経済は、生産、消費が堅調に推移をいたしておりまして、雇用情勢も有効求人倍率が過去最高の水準でこのところ推移するなど、全体としては着実に持ち直しをしてきております。これを企業ごとに見てみますと、輸出が好調な自動車、産業用ロボット、また外国人の観光客の増加により売り上げが伸びておりますホテル、百貨店などを中心に、業績が回復しているという声が聞かれます。その一方で、食料品加工、サービスなど内需型の中小企業を中心に原材料の高騰、あるいは人件費の増加が収益を圧迫している、そういった声も聞かれるところでございます。業種や規模にかかわりなく、この今持ち直してきております景気回復を県内に広げていくためには、企業の生産や設備投資が活発化をいたしまして売り上げ、収益が増大し、それが雇用の拡大、賃金の上昇につながっていき、そのことがさらなる個人消費の拡大と生産拡大を引き起こす、そういった経済の好循環を実現していくことが必要であると考えております。
 こうした考え方のもとで、二月の補正予算と、それから二十七年度の当初予算によりまして、民間設備投資を刺激するグリーンアジア国際戦略総合特区の推進、物づくり中小企業が行います新製品の開発に対する助成、地域の消費を喚起をいたしますプレミアムつき地域商品券の発行、またよかもん、名産品です、それから、よかとこ、旅行事業でございますが、これらの販売、そして雇用条件や労働環境の改善を後押しをいたします正規雇用促進企業支援センターの開設、賃金改善を図る中小企業への人材派遣、そういったことに取り組んでまいります。また、幅広い産業分野で生産誘発効果が見込まれております公共事業につきましては、補助事業費の減少というものを県の単独事業費で補うとともに、防災、減災の観点から、地域ごとにめり張りをつけてこれを執行することといたしております。そして、今後県経済の動向を見きわめつつ、必要に応じ事業量を確保していきたいと考えております。こうした取り組みを機動的に進めることによりまして、持ち直しをしてきております我が福岡県の経済、その回復を確固たるものにし、県内各地の企業、県民の皆様に景気回復を実感していただけるよう全力を挙げてまいります。
 次に、地域の中小企業の人材確保についてお尋ねがございました。中小企業が求める技術者などが地域から御指摘のような都市圏に流出をし、その企業経営に支障を来すようなことになれば、各地域の特性を生かした形で物づくり企業というのは立地いたしております、その多様性が失われかねません。中小企業が必要な人材を確保していくことは重要な課題であると、このように認識をいたしております。そのため県では、年代別の就職支援センターのホームページ、また合同の会社説明会などによりまして地元中小企業を御紹介をしていくとともに、企業の人事採用担当者を対象といたしまして採用力の向上セミナー、そういったことも実施をいたしまして、中小企業の人材確保、両面から支援に努めているところでございます。今年度は、地元中小企業の魅力をより詳しく紹介をする冊子を作成をいたしまして、県内外の大学等へ配布する予定でございます。また、正規雇用促進企業支援センターを設置いたしまして、労務管理経験がある専門アドバイザーが企業を訪問いたしまして、人材の採用やその定着の支援を図ることといたしております。今後、こうした新たな取り組みも含めまして、中小企業が必要とする技術者など多様な人材の確保をできるだけ支援をしてまいります。
 次に、中小企業振興条例の制定についてお尋ねがございました。この条例の策定に当たって、幅広く中小企業の課題やニーズを把握をしているところでございます。これは、その対象は物づくり企業に限ったものだけではありません。県内七十一カ所の商工会議所、商工会の経営指導員は、御承知のとおり日ごろから地域のサービス業、小売業、建設業などの企業を訪問いたしております。こうした産業の情報も活用してまいりたいと思っております。加えて、現在千二百社に対するアンケート調査を行っており、その内訳を申し上げますと、県内企業の産業構造、これを反映させた形で数を決めております。サービス業が四割、小売が二割、建設、製造、卸、それぞれ一割となるように対象を決めて調査を行っているところでございます。また、これまでのところ九十二社の経営者の方にヒアリングを行っておりますけれども、これまで行った九十二社についてその内訳を申し上げますと、製造業が最も多く五十三社、サービス業が十六社、小売が七社、建設が四社、卸が三社、その他が九社となっております。(発言する者がある)それで、最後まで聞いてください。引き続き、できるだけ、今、これまでのところ九十二社と申し上げた。これから引き続き、できるだけ幅広く経営者の声を聞いていきたいと、このように考えております。今後も、県内各地域の中小企業の課題やニーズの把握に努め、条例に反映させていきたいと、このように考えております。

平成24年2月議会一般質問「中小企業の地域によるハンディキャップについて 、地域目線の新規就農者支援について」

公式動画へのリンク WindowsMediaPlayerが必要です

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆さん、こんにちは。自由民主党福岡県議団の板橋聡です。通告に従いまして一般質問をいたします。
 まず、中小企業の地域によるハンディキャップについて質問いたします。私の六月の一般質問において小川知事より、県内の地域格差は何としても解消していきたいとの大変心強い答弁をいただきました。一方で、その際御指摘させていただいたとおり、平成二十年度の年間平均所得において、福岡都市圏は約二百八十四万円、私が住んでおります地元みやま地区では二百二十八万円と、福岡県内で約年間六十万円の格差が存在しており、この格差を解消するためにはさまざまな施策が必要であるのは明らかであります。
 その一つとして、最低賃金の引き上げ議論が存在していると思われます。麻生前知事に引き続き小川知事も最低賃金八百円の早期実現を目指し、平成二十三年七月十二日に国に対して意見書を提出されています。正規社員との賃金格差是正や、労働者が健康で文化的な最低限の生活を営み、生活保護との整合性に配慮し、労働に対するインセンティブが失われないことの重要性はよく認識しております。が、景気回復や経済成長のない、すなわち実態を伴わない賃金の引き上げは中小企業に対して大きな負担になるのも事実でございます。
 現在、福岡県の最低賃金は時給六百九十五円で、これは地域差なく県内一律六百九十五円でございます。一方で、最低賃金引き上げの根拠の一つで、最低賃金との整合性を問われている生活保護費は、福岡県内地域ごとに五等級、全国では六等級ですけれども、福岡県内は五等級に区分けされ、二十歳から四十歳の単身世帯において住宅扶助を含めて比較すると、一番高い地域と安い地域では月額十一万八千円余と九万二千円余となり約二八%の開きがあります。つまり、これは健康で文化的な最低限度の生活コストを地域に合わせて反映させた結果だと認識しております。
 私が住んでおります県南地域は、平均所得と同様に、福岡市、北九州市という両政令都市及びその周辺地域と比較し、産業基盤も脆弱であり、労働力の需要や流動性でも劣っているというのが実態でございます。そんな中、全県一律で最低賃金八百円を目指すのは、これは地方に拠点を置く中小企業には負担が大き過ぎ、逆に雇用の縮小や、場合によっては事業の廃止など悪影響を及ぼしかねません。政令指定都市とそれ以外の地域で最低賃金を変えるような弾力的運用が可能ならば、都市部と地方の経済成長のタイムラグを埋める解決策になり得るんではないかと考えます。
 そこで知事に質問です。県内一律の最低賃金が地方の中小企業の負担になっているという実情を御認識でしょうか。もしそうなら、法律など諸問題あるとは思いますけれども、例えば国に働きかけるなど政令で対応するようなおつもりがございますでしょうか、知事の所見をお聞かせください。
 そんな中、昨年末、福岡県、福岡市、北九州市がグリーンアジア国際戦略特区の認定を受けました。大変喜ばしいことです。国家プロジェクトとしての規制緩和、税制優遇、財政金融支援により県下全域が広く経済成長していくことを多くの方々、多くの県民が夢見ています。しかしながら現実は厳しく、この特区のエリアは県下全域というわけではなく、両政令指定都市及びその周辺の四市一町だけに限定され、私が住む県南など筑豊も含めエリア外、まさに蚊帳の外でございます。将来的に新たにエリアを追加することが可能とはいえ、エリア外の中小企業は、まずスタートラインに立つことはできません。特区の波及効果に期待はするものの、地方の中小企業は特区の恩恵を受け成長する都市圏にさらに差をつけられて、その背中を見ながら後を追う努力をしなければならないわけです。九月の定例議会に行われた最低賃金に関する答弁で知事は、負担がふえる中小企業の支援が必要と、最低賃金に関しておっしゃっておりましたけれども、現実はグリーンアジア特区の事例でもわかるとおり、私ども県南を初めとするハンディを背負った地方の中小企業振興をどうするか、これに対する手当てがないと、地方の中小企業は途方に暮れてしまうわけでございます。
 そこで質問です。地域の特色を生かし地域経済産業の活性化を目指す中で、私のみやま市を含む県南地域などグリーンアジア特区エリアになっていない地方の中小企業に対して、県はどのような具体的な戦略、施策があるのでしょうか、知事の明快な答弁をお願いいたします。
 続きまして、地域目線の新規就農者支援について質問させていただきます。我が会派の代表質問でも出ましたけれども、県として若者の農業参入定着支援については、青年就農給付金を軸に対策が練られていることは理解いたしました。しかしながら、それは就農希望者の目線に重きが置かれ、新規就農者をてこに、どのように県として農業を振興するのか、その戦略や方針がなかなか伝わってまいりませんでした。
 そこで知事に質問です。新規就農希望者において、水田農業や園芸農業それぞれの希望者が出てくると思われます。また、新規就農者のパターンも、Uターン就農による世代交代、またはIターン就農による県外からの人材の掘り起こしなどのケースが考えられます。ブランド化など福岡県が過去行ってきた農業政策との整合性に照らし合わせて、新規就農者確保を軸にしてどのように県農業を強化していくのか、その戦略や方針について知事の所見をお聞かせください。
 新規就農者の増加は、その後定着し、家族を持ち、地域に根差すことにより、農業のみならず少子化対策、地域活性化、経済振興など広がりのある効果が期待されます。また、地域性に基づく特定農産品の担い手を戦略的に育成し、産地としての競争力向上を目指すことも可能です。聞くところによりますと、糸島市は、海に面しており、都市圏にも近く、移住先として話題に上ることも多いため、福岡県における新規就農の問い合わせで抜群に人気が高いと聞いております。逆に言うと、それ以外の地域は青年就農給付金制度があろうとも、自治体やJAなどが主体的、積極的に働きかけを行わなければ、Iターンで新規就農者を獲得するのは大変困難というのが現実です。なかなか、みやま、八女、こういう話を聞いても、糸島ほど魅力的に見えないというのが現実だと思います。
 そこで知事に質問です。地域のJAが主体となって県の施策、例えば青年就農給付金や高収益園芸産地育成、あるいは融資、情報発信などをパッケージ化して、産地間の競争力の強化をにらんだ新規就農掘り起こしを目指した場合、つまり主体的にJAやその他現地の自治体が、主体的に新規就農者掘り起こしを目指した場合、これは県として農林水産部横断でしっかりと支援すべきだと考えますけれども、知事の所見をお聞かせください。
 以上、知事の明快な御答弁をお願いして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 最低賃金引き上げの影響に関する認識と賃金制度の運用についてお尋ねがございました。最低賃金は、労働条件の改善や労働者の生活の安定を目的といたすものでございますけれども、その設定に当たりましては、中小企業の賃金支払い能力など地域における労使双方の実情を踏まえることが大事だと思っております。現在国によって、最低賃金は県単位で決定されておりますために、これを引き上げる場合には、やはり地域における雇用維持に重要な役割を果たしている中小企業の経営状況に配慮しなければならない、そのための生産性向上や経営力の強化、経営の安定化のための支援策をあわせて充実強化することが不可欠であるというふうに私は考えております。そのため、議員も先ほどお触れになりましたが、昨年七月、国に対しまして、地域の実情に合わせた最低賃金の適切な引き上げというものを、私は意見書を出したわけでございますが、その際にも、中小企業に対する支援について強力に実施するよう求めたところでございます。
 グリーンアジア国際戦略総合特区エリア以外に存在いたします中小企業の方々への支援についてお尋ねでございます。本県経済の成長を図って安定的な雇用を生み出すためには、まずポテンシャルのある特区を推進をいたしまして、その大きな経済効果というのを周りに広めていく、広く県内中小企業に波及させることが重要であると思っております。お尋ねの県南みやま地域というのは、まず九州新幹線筑後船小屋駅、あるいは九州縦貫道みやま柳川インター、三池港インターが開通いたしました有明海沿岸道路、そして韓国釜山港とのコンテナ取り扱いが急速に伸びて過去最高を記録しております三池港など、県内有数の交通アクセス利便性と国際物流の拠点性、その潜在力が高い地域となってございます。また、近隣にはRDF発電所のほか間伐材を原料といたしました水素ガス製造プラント、レアメタルや紙おむつのリサイクルに取り組んでおります企業が立地をいたしております大牟田エコタウンというのがございます。こうした地域のポテンシャルを生かしますことで、みやま地域におきます、久留米のダイハツ向けの自動車部品製造企業に加えまして、三池港周辺への物流企業、エコタウン等への環境リサイクル関連企業など、そういった産業群の集積促進に努めてまいります。さらに、こうした企業との取引拡大を図っていくために、その周りの中小企業に対しましては、県制度融資によります金融支援のほか、技術開発、人材育成といったきめ細かな御支援を申し上げていこうと思っております。
 次に、新規就農者の確保戦略についてお尋ねがございました。本県農業が持続的に発展していくためには、将来を担う意欲ある若者の確保が必要でございます。一人でも多く就農していただくことを目指しているところでございます。そのため、近年増加をしておりますUターンやIターン者につきまして、その方々、その人たちが一体どういう品目、産品を取り扱いたいのか、そういったことにつきまして把握を進めていきますとともに、どの産地でどのような品目がつくられているか、こちらサイドの情報ですが、そういったそれぞれの情報を、きめ細かな情報発信に努めていきましてマッチングを進め、その精度を上げていきたいと考えております。
 一方で、農外からの参入者は、平均年齢が三十三歳でございます。こうした方々の定着を図っていくためには、これまで行っておりました技術の習得支援だけではなくて、住宅の確保など生活全般にわたる支援が必要になってございます。このため県では来年度から、営農面から生活関連支援まで一体的に行います相談窓口というものを設置しております。さらに、就農前後の所得確保のための国の給付金も活用してまいりたいと思います。また、市町村、農協と連携いたしまして、研修受け入れ農家の紹介でありますとか、住宅や空き家そういったもののあっせん、これも行っていきまして、一人でも多くの新規就農者の定着を図っていきたいと思っております。
 新規就農者対策を含めた産地の振興方策についてお尋ねがございました。新規就農者の育成は、産地の維持発展につながるものでございまして、本県農業の振興を図っていきます上で極めて重要なことであると考えております。県では、就業セミナーや相談会におきまして、県、市町村の具体的な支援策につきまして情報提供を行っておりますとともに、農業大学校や普及指導センターにおきまして早期の技術習得というものを御支援してまいっております。また、県としましては、施設整備に必要な融資や補助事業等につきましてさまざまな制度を用意しております。私、着任してから農業、いろいろきめ細かく検証して、いろんな対策、新しく展開したもの、あるいはこれまでの施策を充実したもの、たくさんあると思いますが、頑張ってきたつもりでおりますが、そういった事業を活用して、具体的に事業を実施される方が、そういった制度を有効に活用ができますように、市町村、農協への情報提供をきちっとやっていきたい。それから県の農林事務所を中心に、県のこれらの施策を横断的に事業者の方々が実施していただけるように環境整備していくことによりまして、産地の振興に努めてまいりたいと思います。

◯議長(原口 剣生君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 一点だけ、ちょっと言葉の使い方に関して再質問させていただきたいと思います。
 最低賃金の部分でございますけれども、現在、県単位で最低賃金が決められているということで、地域の雇用を担っている中小企業のために、その支援策に関して、国にも要請したし、県としても頑張るということでございますけれども、私が先ほどから言っております地域というのは、福岡県全体を国としては地域として見ているわけです。ですから国に対して要望するときに、福岡県に対しての中小企業の支援というものでは、なかなか、私の言っております、地域をしっかり応援してくれということが違うニュアンスになるのかなと思いまして、知事として、地域というのは、しっかりと最低賃金の中で、県の中でも地域差があって、苦しいと感じる地域もあれば、最低賃金でもなかなか人が集まらないという地域もあるということを踏まえていらっしゃるのかどうか、この一点、ちょっと確認をさせてください。

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。

◯知事(小川 洋君)登壇 先ほど申し上げましたように、最低賃金、これをどう設定するかにつきましては、それぞれの中小企業の賃金支払い能力とか、そういった地域の労使双方の実情を踏まえるということが大事だと思っております。そういう意味では、福岡県内で地域においていろんな差があるということは承知しております。逆に、その差を念頭に、きめ細かな地域指定と最低賃金のレベルといったものを設定していくと仮にした場合に、その手順と、それからその広がり、その地域をどう設定するかについての設定の仕方、非常に技術的にも、また政策的にも難しい課題が多々あろうかと思います。そういった、きょう御指摘を受けましたことを頭に置きながら、今後いろいろ物を考えていきたいと思っております。

平成23年6月議会一般質問「県内地域格差、農業振興、矢部川水系水源開発について」

公式動画へのリンク(WindowsMediaPlayerが必要です)

◯十一番(板橋 聡君)登壇 皆様、お待たせしました。こんにちは。四月の統一地方選挙において、みやま市選挙区のほうから初当選させていただきました、自由民主党県議団の板橋聡でございます。
 まず最初に、私ごとではございますけれども、父、板橋元昭が七期二十八年にわたり福岡県議会議員を務めさせていただいた際には、先輩議員の皆様、そして執行部の皆様にも大変お世話になりましたことを、ここに改めて御礼申し上げる次第でございます。
 私は会社員でございました。行政経験、議員経験がないままこの世界に飛び込んでまいりました。皆様の御指導、御叱咤を賜りながら、一刻でも早く県民の皆様の負託と信頼にこたえ、福岡県政発展のための一翼を担える議員となるべく努力する所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 さきの統一地方選挙で新しく小川洋県知事が誕生しました。選挙戦のさなか、私の選挙区であります、みやま市にも、遊説を初め幾度か足を運んでいただき、その都度地域住民に対して、県南は福岡の第三のエンジン、農業に夢と活力、生きがいをと、みやま市を含む県南地域へのエールと、その主要産業であります農林水産業への思いを語っていただきました。「言うはやすく行うはかたし」ですが、地域住民は県行政における県南振興について、今度こそは本物だろうと厚く期待していることを冒頭申し上げておきます。
 福岡県は、九州の玄関口として商業、サービス業を集積する福岡都市圏地域、官営製鉄所をルーツに工業都市として成長を続ける北九州地域、産炭地から文化都市へと変貌を遂げつつある筑豊地域、そして肥沃な筑後平野、一級河川筑後川、矢部川を擁し、そして福岡県の食糧基地とも言える県南地域と、方向性の違いはあれど、その地域地域が持つ地理的特徴や、はぐくんできた歴史、文化を資産とし、バラエティーに富んだ特性を生かし、一極集中ではなくバランスよく発展することこそが福岡県の最大の強みになるのは、小川知事も議会初日の所信でおっしゃったとおり、疑いのないところでございます。
 ところが一方で、福岡県の状況を定量的な切り口で見ますと、余りバランスがよいとは言えない状況がございます。例えば、人口推移を昭和六十年と平成二十年で比較しますと、福岡県全体は四百七十万人から五百三万人、約七ポイント増でございます。これを地域で比較しますと、福岡都市圏は百九十万人から二百四十一万人、二七ポイントの増。一方で、県南地域は八十九万人から八十五万人と四・五ポイントの減。さらに私が住んでおります、みやま・柳川の地域では十三万五千人から十一万六千人と一四ポイントの激減となっております。人口構成で比較しますと、昭和六十年に福岡都市圏の十五歳以上六十五歳未満のいわゆる生産年齢人口比率は約六九%、一方、みやま・柳川地域は六五・五%と、当時から約三・五%の開きがございました。それが平成二十年には福岡都市圏が六八・二%とほぼ横ばいに推移しているのに対し、みやま・柳川地域は五九・八%と六%も減少し、福岡都市圏との比較において約九%と差は開く一方です。
 こういう話をしますと、少子、高齢化の一言で片づけられがちですけれども、これはお年寄りに甚だ失礼な話で、知事が政策に掲げている七十歳現役社会のような活力ある高齢化は、寿命が延び、そして労働人口がふえるよい現象と私はとらえます。やはりこれは少子化、しかも若者世代が仕事を求めて田舎を離れ都市部に移り住むために加速に輪をかける少子化に原因が尽きると考えます。一人当たりの平均所得を見ると、その差は歴然とします。平成二十年の県全体の一人当たりの平均所得は約年間二百六十五万円、これを地域で比較しますと福岡都市圏は二百八十四万円、私が住んでおります地元のみやま地区は二百二十八万円、年間約六十万円の違いがございます。これは一人当たりの平均所得ですから、世帯で換算しますと年間百万円以上の所得格差が県内に存在する。それゆえ若者は収入を求め都市部に移り住む、あるいは逆に地元に残ると収入が安定しないため、なかなか家庭を持つ勇気が持てずに少子化に拍車をかける悪いスパイラルを構成しています。
 そこで最初の質問です。県民幸福度日本一を目指し、将来に希望や幸福を実感できる地域社会の再構築を掲げる小川知事は、同じ福岡県に生まれ育っても、地域間にこのような格差とハンディキャップがある現実をどうお考えでしょうか、知事の所見をお聞かせください。
 私は、福岡県のバランスがとれた発展を阻害するような、県南地域の深刻な少子化スパイラルにくさびを打つためにも、やはり県南の主要産業であります農林水産業従事者の所得の向上と安定、それによる後継者確保は現実的で即効性のある有効な対策の一つと考えます。所得の向上という観点で、私自身多くの園芸農家の方から、福岡県の行っている高収益型園芸産地育成事業は大変有効であるとの評価をしばしば聞かされています。ハウスや高性能の農業機械を導入することにより、生産性を高め、コストを圧縮し、安定した収益の実現に役立ち、ひいては農業を継ぐことをためらっていた御子息とも将来について前向きな話ができるなど、後継者確保にも明るい兆しが出てきたそうです。少子化対策は待ったなしの喫緊の課題です。このような具体的、直接的効果が上がっている事業があるのですから、福岡県の財政も厳しい折、効果が高く即効性がある分野にもっと事業の特化と予算の傾注をし、今後とも継続、拡大をしていただきたい。
 そこで知事に質問です。農業の後継者確保に関する具体的な指標、数値目標を県としてお持ちでしょうか。また、農業の後継者確保と県南の所得向上の観点から、今後の高収益型園芸産地育成事業の継続と見通しについて、知事の見解をお聞かせください。
 さて、知事は安全、安心、安定という表現を多用されておりますけれども、所得の安定のために欠かせないのがリスクの軽減です。農林水産業は人知の及ばない大地を、海を、空を相手にしている事業ですから、もちろん豊作もあれば不作もあるのは避けられないことでしょう。しかし、安心して農業に従事し、そして後継者を育成するためには避け得るリスクを取り除き、ミニマイズする努力をするのが行政の役割だと考えます。
 県南を初め県下全域の中山間地域はイノシシの被害が多く、水田、畑作、果樹すべての作物において食害が大量発生していることを御存じでしょうか。しかしながら、防護さくの設置を進めようにも、現在の県の対策予算が全く不足しており、思うように設置が進みません。中山間地は特に零細農家が多いものですから、各農家に与える影響は甚大なものがございます。今年度予算では、農林水産物鳥獣被害防止対策費は増額される予定ですが、それでも全く間に合わない規模で、県下で鳥獣被害が発生しているという御認識を知事はお持ちでしょうか。イエスかノーかでお答えください。
 農林水産物鳥獣被害防止対策費用の内訳には、捕獲、駆除したイノシシ、シカ、いわゆる害獣を地域資源として活用するための処理加工施設事業が挙がっております。自治体財政が厳しい中で、このように害獣を資源とする試みは循環型の対策として評価されると思います。現在、県下の害獣の食肉加工施設はみやこ町、添田町に存在し、糸島市に計画がございます。しかし、八女を中心に年間三千頭の捕獲、駆除が見込まれます県南地域にはございません。
 知事にお尋ねします。将来的に県南地域にも有害鳥獣加工施設を設立し、福岡県全体として害獣の資源化を進めるおつもりはありますでしょうか。
 これらの鳥獣被害対策は福岡県内でも農林水産部、環境部、保健医療介護部と複数の部署に関連しております。そのため、横の連携を充実するよう福岡県鳥獣被害対策協議会が平成十七年より開催されておるそうですが、内容を見る限り、情報交換やわな、電気さくの仕掛けに関する研修など、既存事業の円滑推進、有効活用が主たる目的であり、鳥獣被害に対し効果の上がる大胆な施策を協議する場ではないと思われます。例えば、イノシシ肉の特産品化、ブランド化などを本気で目指すのであるならば、鳥獣被害に悩む側や鳥獣駆逐を管理する側だけの視点ではなく、販路拡大やまちおこしのノウハウを持った組織、具体的には企画・地域振興部や商工部及びその管轄の団体、自治体まで巻き込んだ全庁横断型のプロジェクトチームを新たに立ち上げるべきではないでしょうか。ここはぜひ、小川知事がリーダーシップをとり、部署間の調整、基礎自治体との連携を含めた効果的な対策を検討していただきたいと思いますが、この件についての知事の所見をお伺いします。
 また、みやま市の有力作物でありますミカンにおいては、収穫期にカラス、ヒヨドリ、メジロなどの野鳥の被害で出荷不能の作物が発生し、その数量も無視できない状況です。ブドウなどは防護ネットによる対策が可能です。しかし、ミカンの場合には作付面積が広大なため、防護ネットによる対策は不可能です。山間地域における木の実などのえさの減少や、市街地のごみ出し時におけるカラス対策などにより、えさを失った野鳥が原因となる食害が今後ふえることは間違いありません。福岡県として、ミカンや大豆など作付面積の広い作物に対する野鳥の食害対策をどのようにお考えか、知事の所見をお伺いします。
 最後に、筑後平野には筑後川と矢部川という二本の一級河川が流れておりますが、私が住んでいる筑後平野南部において、農業用水は矢部川水系に多くを依存している状況です。先述のとおり、高収益事業育成の施策もあり施設園芸農家が拡大していることは、収益の向上、安定化に対する一つの効果的な対策と考えますが、そのために、過去と比較して十一月から四月までの非かんがい期における農業用水の需要が高まっております。同様に、農業に限らず有明海に注ぐ矢部川水系の水量は、これまた筑後地域の主要産業であるノリのできばえを左右する栄養塩に多大なる影響を与えます。さらに、ノリの生産のピーク時が非かんがい期、つまり昨今施設園芸農家の拡大により水の需要がふえた時期に重なるため、水量不足に拍車がかかる状況となっております。
 平成十三年に起こりましたノリの凶作の際、ノリ生産業者は子供の給食費にすら事欠くような苦境に立たされました。その際は、地元自治体において給食費補助などを行い緊急対策が講じられたそうですが、そのような不安定な状況はノリ生産、施設園芸にかかわらず、幾ら高収益事業化が進んでも、なりわいとしての魅力は半減してしまいます。また、有明海の潮の干満で逆流してくる浮泥の堆積により、塩塚川、沖端川河口にある漁港では、毎年毎年一億数千万のしゅんせつ工事なしでは漁船の出入りにも支障を来すような状況ですが、これも矢部川水系が浮泥を攪拌し押し出すだけの潤沢な水量を有していれば、しゅんせつ工事のコストが軽減される可能性もあります。求められるのは対症療法ではなく、抜本的な対策でございます。矢部川水系には、御存じのとおり県内有数の貯水量二千三百八十万トンを誇る日向神ダムがございますが、これは治水を目的としたダムですので、梅雨期でございます六月十日から七月二十一日の間は貯水量を七百三十万トンまで強制的に落としてしまいます。すると、ことしのように梅雨明けの時期が早く訪れる場合、小手先の弾力的な運用を行っても意味をなさず、夏の雨量次第では深刻な水不足が筑後平野南部地域の農林水産業に大打撃を招く可能性を、知事は御理解されているでしょうか。ここはぜひ、矢部川水系の抜本的水源対策について御検討をお願いしたいと思います。
 同様のことを、本年五月三十日に行われました県南総合開発促進会議において、柳川市の金子市長が要望されました。また昨年十二月の定例議会では、私の父、板橋元昭前県議が、やむにやまれぬ思いでしょうか、十六年ぶりに一般質問の舞台に立ち、強力に要請しております。その際、当時県知事だった麻生前知事からは、まず矢部川水系の流況について調査研究を行い、それをもとに新たな利水用ダム建設を含めた抜本的な対策を検討する旨の答弁をいただいたことを議事録にて確認いたしました。しかしながら、この場には麻生前知事も、質問を行いました県議会議員もおりません。
 そこで小川新知事にお尋ねします、矢部川水系の水源開発に関する小川知事の認識を御披露いただいた上で、前知事がお約束されました流況に関する調査研究の現状及び今後の見通しについて、行政の継続性の原則に基づき、詳細に説明と見解をお示しお願いいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

◯議長(原口 剣生君) 小川知事。
*知事答弁

◯知事(小川 洋君)登壇 お答えを申し上げます。
 まず初めに、県内の地域格差、その解消の問題でございます。県内の地域格差は、これは何としても解消していきたいと思います。そのためには、地域がそれぞれの特色を生かしながら発展していくということが重要でございます。地域の方々と一緒に知恵を出し合いながらやっていきたいということ、それから、それぞれの地域間で相互に補完し合っていくことが、県のバランスのとれた発展という意味では、これも大事だろうというふうに考えております。その上で、御質問にお答えしたいと思います。
 高収益事業の継続についてお尋ねがありました。この事業は、収益性の高い園芸農業を実現するために、先進技術の導入でありますとか、省力機械、施設の整備を支援するものでございまして、園芸農家の経営改善に大きく貢献しているというふうに考えております。その結果、園芸農業の産出額は、今本県の農業の産出額の約過半を占めるまでに至っておるところでございます。県といたしましては、園芸農業の振興を図るために、本年度も六次産業化の視点も取り入れながら、この事業費の大幅拡充をしたところでございます。本事業については、引き続き実施をしていきたいと、このように考えております。
 そのときに、御質問でございますが、新規就農者の目標があるのかということでございますけれども、現行の福岡県農業・農村振興基本計画の中で、園芸農業を含めた新規就農者の方については、年間二百人という目標を持っております。現在、二十二年、昨年の段階でいいますと、百五十名ちょっと切るぐらいでございます。そういう意味では、次の計画でもこうした具体的な目標を検討していきたいというふうに考えております。
 それから、中山間地におきます鳥獣被害の防止対策についてお尋ねがございました。県では、鳥獣被害防止特措法に基づきまして、まず市町村が作成いたします被害防止計画の作成支援、それからこの計画に基づく被害防止対策を、国庫交付金であります鳥獣被害防止総合支援事業を活用しながら実施をしている、この二つの仕事をしているところでございます。本事業は、本年度から全額国庫負担による侵入防止さくの設置、そういったメニューも創設されまして、国の予算ふえたわけでございますが、全国的に非常に要望が高くなりまして、集中をいたしました。その結果、私どもの県では三億八千万円余ということでございました。先ほど先生御指摘がありました、現場では不足という感じを持っておられるのかもしれません。それを踏まえまして、県としましては、この事業というのは、今年度から三カ年で実施をするという国の計画になってございますので、事業として今後採択が確実なもの、そういう採択されやすい形のものになるように、特に評価の高い市町村区域といいますか、その村域を越えた被害防止体制の構築とか、いわゆる国側では評価の高いと見られておりますような、そういう事業というものを関係の自治体と一緒になって仕組んでいく、考えていく、そういった被害防止体制の構築を考えていく。それから、被害防止計画を策定する際、いろいろ私どもがアンテナを高くして集めた情報も提供しながら、指導、助言もやっていきたいと、このように考えております。
 それから、処理加工施設についてお尋ねがありました。捕獲したイノシシやシカを食用として利用するためには、捕獲後、限られた時間内に食肉処理を行う必要があります。現在、県内には、先生御指摘のとおり、町が設置しました処理加工施設が二カ所ございますが、いずれも県北のほうにあるわけでございます。県南に設置をすることは必要ではないかと私は思っております。
 なお、八女市が処理加工施設の新設を検討中であるというふうに私は聞いております。そうした八女市の近隣地域での利用も含めまして、先ほど申し上げました、国に提出をします実際の計画書の策定に当たりましては、そういう施設の設置というものがうまく採択されますように、情報収集と指導、助言といいますか、知恵をお互いに出し合っていくと、そういう作業を行ってまいりたいと考えております。
 それから、捕獲鳥獣の利用の推進のあり方について御質問がありました。捕獲した鳥獣につきましては、その獣肉はもとより、皮や角まで含めた利用を拡大していく、そのためには的確な捕獲方法と、それから安定供給のための収集、運搬方法、それから解体技術の向上であります、それから得られたものの販路の開拓ということが大事でございます。その際、御指摘がありましたブランド化ということもあろうかと思いますが、さまざまな課題を解決する必要がございます。県としましては、県や関係団体と構成しております福岡県鳥獣被害対策協議会というのがあるわけでございますが、御指摘もありましたように、これをまた見直して、被害防止だけではなくて、捕獲獣の有効利用、これも頭に置きながら、全庁的に関係する部局を参加させる形で解決に向けた取り組みについて研究していきたいと、このように考えております。
 それから、カラス、鳥のほうの被害でございますが、被害対策としましては、防鳥ネット、テグス、それから爆音器の利用など防止対策を行っているところでございます。市町村が猟友会の御協力を得て、銃やわなによる捕獲対策を行っているところでございますが、必ずしも十分な効果が得られてないようでございます。現時点では、残念ながら、なかなか有効な手段が見つかってないというような状況かもしれません。このため、私どもとしましては、ほかの地域での取り組み事例でありますとか、研究成果というものを広く情報収集しながら、有効な方法というものを探求していきたいと思っております。
 矢部川の流量の抜本対策についてお尋ねがございました。矢部川の水は、流域の農業用水ばかりでなくて、先ほどありましたノリ、いわゆる水産業や掘り割りの水を活用した防火用水など水資源としても活用されております。この流域にとりましては、極めて重要なものであると考えております。これまで日向神ダムにかんがい期の農業用水を確保するとともに、そのダムの弾力的運用によって、矢部川の流量改善に努めてきたわけでございます。また、農業用水が不足する場合には、筑後川下流用水によります対応を行っております。こうしたことを通じまして、農業、それからノリを初めとする水産業に必要な用水を供給するとともに、副次的な効果としての防火用水の確保にもつながっているところがあります。今後とも、必要な水資源の確保に努めるとともに、矢部川の水を効果的に使うための方策について研究してまいりたいと思います。
 先ほど、前麻生知事と、お父様、板橋県議との質疑のやりとりのお話がございました。これにつきまして、私も議事録を読ませていただいております。矢部川の流況につきましての調査研究というのは、これからやりまして、その研究結果も踏まえながら、さまざまな方策について、費用対効果、いろんなことを総合的に研究していきたいということをここで申し上げたいと思います。

◯議長(原口 剣生君) 板橋聡君。

◯十一番(板橋 聡君)登壇 私も初めての質問でございますので、前向きな御回答もあれば、なかなか満足しにくい御回答もあるかなと思いますけれども、まずは私の思いを伝えたということで、これをスタートラインに、今後につなげていきたいと思います。
 特に、矢部川水系の問題は、すぐに百点満点の答えが出てくるとは思っておりません。しかし、矢部川が筑後川と並んで県南に恵みをもたらす河川となるよう、私の県議会議員としてのライフワークとしてこの問題に取り組んでいきたいというふうに思う所存でございます。小川知事も、早期に現地視察などに来ていただきまして、できない理由を探すのではなく、県民のために一緒に知恵を絞り、どうやったらできるのか前向きに取り組んでいただくことを要望し、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 本日はありがとうございました。(拍手)