平成25年度予算特別委員会質問「実態に即した自殺対策」

◯板橋 聡委員 自民党県議団の板橋聡です。
 本日は、実態に即した自殺対策をテーマに質問いたします。
 昨年十二月二十三日、大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒が、顧問から受けた体罰とは到底表現できないような暴行の果てに自殺しました。一月八日に市教育委員会が自殺と体罰の存在を公表すると、この問題は体罰問題を軸にセンセーショナルに報道されました。その後、橋下徹大阪市長が出した桜宮高校体育学科の入試中止方針をめぐり、マスメディアやネットなどを巻き込んでの国民的大論争が巻き起こりました。一月十八日には、「私が死ねば在校生は救われるのでしょうか」という自殺をほのめかす電話が市教委に入ったと報道があり、そして、二月十五日、同じく大阪府大東市の小学校五年生が自分の小学校の統廃合に反対して飛び込み自殺、現場には「どうか一つの小さな命と引きかえに統廃合を中止してください」と書いてあったそうです。
 私は、平成二十三年七月の予算特別委員会において指摘しました世界保健機構(WHO)が公表しています自殺予防メディア関係者のための手引にあるガイドライン、具体的には、自殺の報道を過剰に繰り返し報道しない、自殺をセンセーショナルを扱わない、問題解決法の一つであるかのように扱わないというものが全く守られていない結果、こういう悲劇の連鎖を引き起こしたのではないかと思えて仕方がありません。そこで質問です。
 自殺に関する過剰報道が他の自殺を誘発するという問題について、私の予算特別委員会での指摘以降、どのように検討して対応されたかお答えください。

◯原口剣生委員長 飯田こころの健康づくり推進室長。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 自殺の報道に関してでございますけれども、二十三年七月の委員からの御質問後の対応でございますが、平成二十四年二月の自殺対策推進協議会、これは関係団体、あるいは県の関係機関等が一緒になって自殺対策を総合的に推進していくための体制でございますけれども、この協議会におきまして、自殺の報道のあり方に対する取り組みについてマスコミの委員等からも意見をいただきまして、その際の議論を踏まえまして、平成二十四年三月に先ほどお話がございました手引を県政記者クラブ、それから、県警記者クラブに提供をいたしまして適切な報道のあり方について周知を改めて図ったところでございます。また、同様の手引については県のホームページにも登載をいたしました。加えまして、マスメディアに対する適切な報道について、国に対して県としても要望をしたところでございます。

◯板橋 聡委員 引き続き、ぜひマスメディアや国に対して強力に働きかけをお願いいたします。
 また、一方で、こういうセンセーショナルな自殺、有名人の自殺を含め、そのような報道があった場合に、生徒を保護する観点からも、テレビなんかは全国ネットで放映されていますので、福岡県だけの働きかけではなかなかうまくいかないところがあると思います。そういった観点から、適切な処置がとられるよう学校側、つまり教育庁なんかと連携が必要だと思いますけれども、所見をお聞かせください。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 先ほどお話をいたしました自殺対策推進協議会には、教育庁の担当部局も参画をしております。その場を通じまして連携をしながら対応をしているところでございます。
 教育庁におきましては、学校における自殺対策といたしまして、国が作成いたしました自殺防止マニュアルを活用した研修の実施や教育相談体制の充実を図っているところでございます。また、知事部局といたしましても、来年度、平成二十五年度には教育庁と連携をいたしまして教職員等を対象としたゲートキーパー養成研修等を実施することを検討しているところでございます。

◯板橋 聡委員 ぜひタイムリーな対応が必要だと思いますので、それも引き続きどういう体制がとれるかというのを検討していただければと思います。
 自殺対策の難しさは、亡くなってしまった方から直接話を聞くことができないという点にあると思います。ここで通告しておりました資料「自殺実態白書二〇一三」を要求させていただきたいと思います。委員長、お取り計らいのほどをお願いいたします。

◯原口剣生委員長 お諮りいたします。
 ただいま板橋委員から要求がありました資料を委員会資料として要求することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者がある〕

◯原口剣生委員長 御異議がありませんので、本委員会の要求資料といたします。
 執行部に申し上げます。ただいま板橋委員から要求がありました資料については提出できますか。飯田こころの健康づくり推進室長。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 直ちに提出いたします。

◯原口剣生委員長 正副委員長に資料を確認させてください。
    〔資料確認〕

◯原口剣生委員長 それでは、資料の配付をお願いします。
    〔資料配付〕

◯原口剣生委員長 資料が配付されましたので、板橋委員、質疑を行ってください。

◯板橋 聡委員 資料に関して簡潔な説明をお願いいたします。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 ただいま提出いたしました資料は、自殺対策活動の促進を目的に全国で活動しておりますNPO法人自殺対策支援センターライフリンクというところが、自殺の実態解明を目的に、自殺者五百二十三人とその遺族五百二十三人を対象として調査をして「自殺実態白書二〇一三」として取りまとめをしたものの抜粋でございます。
 まず、一枚目でございます。資料プロジェクトチームが認定した自殺の危機要因でございます。これは調査によって明らかになった自殺の要因についての資料でございます。これによりますと、自殺の危機要因となり得るものが六十九あるとされております。囲みの中にその具体的な要因を七つの区分に分類をしております。括弧の中の数字は自殺に至った要因として抱えられた件数で、健康問題が最も多く、続いて経済・生活問題、家庭問題となっております。
 続きまして、二枚目の資料でございます。自殺の危機経路の事例でございますけれども、これは自殺要因から自殺に至る経過の事例を説明したものでございまして、非雇用者、自営者、学生などの属性によって自殺に至るまでの経路にある一定の規則性があると分析されています。囲みの中に事例として掲げられておりますが、属性によってさまざまな経路をたどっているものの、いずれの場合にも鬱病が大きな要因としてかかわっております。
 三枚目は、その経路をやや具体的に示したものでございまして、例として自営業、それから、みずから起業の危機要因の連鎖図でございます。そこに記載しておりますように、さまざまな要因が重なって最終的に自殺に至ったというのを要因ごとの連鎖という形で分析しておりますけれども、自営業者の特徴といたしましては、自殺に至る年月が他の属性の方々よりも二年と短いということでございます。
 以上でございます。

◯板橋 聡委員 この白書は五百二十三人の自死遺族に対して平均二時間半、最長八時間もの聞き取り調査を行い、四百八十八項目の調査分析を行ったということでございまして、私も非常に示唆に富んでおると思っております。まず、自殺を誘発する危機要因を洗い出して、その危機要因が属性、職業等々によって一定の規則性があると分析をされております。
 ところで、福岡県は、自殺防止の取り組みとして、早期発見、早期治療のために、体制強化として地域における見守り体制、つまりゲートキーパーの要請を一丁目一番地に上げておられますけれども、ゲートキーパーというのはなかなか耳なれない言葉でございます。どのようなものか、具体的な役割とあわせて教えてください。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 ゲートキーパーと申しますのは、日本語で申しますと門番でございまして、地域における周囲の気づきを高める取り組み、悩みを抱えている人に気づき、必要な支援につなげるという人材でございます。自殺というのは、いろいろな悩みを抱えた上で追い込まれた末の死ということでございますので、悩みを抱えた人に少しでも多くの方々が気づくということが自殺を防止する上で非常に重要なことではないかという認識のもとで、そういった悩みを抱えた方々の周囲の方々に気づきを促すためのゲートキーパーとしての役割を担っていただくということで、人材養成の研修等を実施しているところでございます。

◯板橋 聡委員 具体的にはどのような方を対象に養成されているんでしょうか。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 これまでの取り組みといたしまして、昨年度までに三千四百八十五人の方々を対象とした研修を行いました。そこに参加していただいた方々といたしまして、民生委員、それから市町村の職員等、あと、福祉の関係の方々を対象として実施をしてきたところでございます。

◯板橋 聡委員 これは、そういった特殊な職業の方以外に一般の方の啓蒙も含めて広く養成したいということでよろしいでしょうか。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 先ほど申しましたけれども、なるべく一人の多くの方々が周囲の異変に気づくということは、国の自殺総合対策大綱にも書いておりますので、そういった形で進めていきたいと考えております。

◯板橋 聡委員 努力されているのはよくわかりました。
 先ほど、室長のお言葉の中で、ゲートキーパーの役割でまず多くの方が気づいてあげることが必要だということが上げられておりました。つまり自殺のサインを見逃さず、話を聞いて的確に専門家を紹介し、見守るということなんだろうと思いますけれども、気づかないことにはどうしようもないんですよね。ところが、先ほどの自殺実態白書の中にも書いてございましたが、自死遺族全体の五八%の方は自殺のサインがあったと思うと回答されておられるんですけれども、このうち何と八三%の方は、当時、つまり自殺される前にそれがサインだとは気づかなかったとおっしゃっておられます。亡くなられた後になって思い返せば、あの深いため息がひょっとしたらそのサインだったのかなとか、振り返ればあれかと気づけるのですけれども、それでは亡くなってしまって遅いということだと思います。
 ここで、先ほどお配りした資料の二枚目にあります自殺の危機経路の事例をごらんください。
 括弧囲みの中なんですけれども、自殺に至るまでの危機要因というのがいろいろな職種別に書いてございますが、特徴的な文字が浮かび上がってきます。私はちょっと注目したのは、やはり多重債務、自営業や失業者、あるいは無職のところで出てまいります。あと、家族との死別です。これは、10)番のところだけ出ておりますけれども、一枚目の資料を見てみますと、家庭問題の中でも家族との死別、自殺であったりだとか、その他足した数というのはなかなかの数になるのかなと思っております。
 そこで考えられますのは、多重債務者は債務整理のために弁護士とかあるいは司法書士にわらをもすがる思いで相談に伺うわけです。あと、家族と死別された方、私も昨年祖母を亡くし、葬儀社の方に大変お世話になったんですけれども、本当に葬儀社の方に親身に相談をいただいたり、いろいろな銀行口座の件はこうしなさい、この手続はこうしなさいということで的確な指示を与えていただいて本当に頼もしく見えます。そういう自殺の危機要因を抱える、あるいは抱えている可能性のある、しかも物すごい岐路に立っていらっしゃる可能性がある方とかかわる職種の方、つまり先ほど言いました弁護士の方だとか、司法書士の方だとか、葬儀社のそういった窓口の方だとか、こういった方がゲートキーパーとしての訓練を受けたり、また、医療とか福祉とか心理学、こういった分野の方と、これは危ないな、これは精神的にやばいんじゃなかろうかというときに、的確な連携がとれるように体制が築ければ、漠然とゲートキーパーをふやそうという事業展開よりさらに効果を上げることができるのではないかと思いますけれども、所見をお聞かせください。

◯飯田こころの健康づくり推進室長 今、御指摘がございましたように自殺対策、特に一般的なものからリスクの高い方々への重点的なシフトという形で進めております。具体的には、中高年対策としてのメンタルヘルスの講習会であるとか、今、お話がございましたような多重債務相談会での保健師派遣による相談会の実施、それから、先ほど、資料の説明の中でも申しましたけれども、自殺と関係が深いと考えられている鬱病対策といたしまして、かかりつけ医と精神科医との連携対策の構築、それから、もう一つのハイリスク対策として、自殺未遂者の方が再度企図するという可能性が非常に高いというデータがございますので、そういった未遂者に対するケアといったものを推進してきているところでございます。
 御指摘のようなゲートキーパーの養成に関しましても、やはりリスクの高い方々にかかわる方々を一人でも多くゲートキーパーとして養成していくことが必要であると考えておりまして、今年度からはハローワークの職員、それからケースワーカー、ホームヘルパー職員などに対象を拡大をして実施をしてきたところでございます。平成二十五年度におきましても、先ほど述べました教職員、あるいは薬剤師などに対象を拡大をして実施していきたいと考えております。関係機関の協力を得ながら進めてまいりたいと考えております。
 悩みを抱えて追い込まれた自殺のリスクの高い人の周辺にいる人を幅広くゲートキーパーとして養成をしていくことが非常に効果的であると考えておりますので、その際、どのような団体と連携をしていくのかというのは、関係機関との意見も聞きながら考えたいと考えています。

◯板橋 聡委員 ぜひ、いろいろな可能性を探って、効果が最大に上がるような事業運営をしていただきたいなと思います。
 先ほども述べましたけれども、亡くなってしまった人の胸のうちを知ることはできません。ですから、きょうのやりとりで新たに踏み出される一歩が果たして正しいのかどうかというのは誰もわからないと思います。そういう意味では、執行部はもとより私ども議会側も自殺対策については常に謙虚な姿勢で向き合い、効果を確かめながら最善の策を探し続ける努力を忘れてはならないと思いますけれども、ぜひここは山下部長の決意を最後にお聞かせください。

◯原口剣生委員長 山下保健医療介護部長。

◯山下保健医療介護部長 自殺を減らしていくということは、私ども保険医療介護部の仕事の第一番目にあるのではないかと私自身は思っております。これまでいろいろな対策に取り組んでまいりましたけれども、御指摘がございましたように、最近では県民一般を対象とした対策ということから、いわゆるハイリスク者を中心とした対策に変えて取り組んでいるという状況でございます。今後ともハイリスク者を中心としてより効果的な対策となるように、先ほど話がございました白書、あるいはよその県の先進的な取り組みなどを含め、専門家の意見なども参考にしながら対策に知恵を絞ってまいりたいと思っております。

◯板橋 聡委員 終わります。(拍手)