平成23年度予算特別委員会質問「水産業の高収益化及び『元気な福岡農業作り推進費』について」

◯板橋 聡委員 自由民主党県議団の板橋聡でございます。
 本日は、水産業の高収益化ということにつきまして質問させていただきたいと考えております。
 一般質問でも申し上げましたとおり、県内各地において存在します所得格差や、それを原因とするハンディキャップを少しでも埋めるために、特に県南におきましては、主要産業でございます農林水産業の従事者の所得向上が急務であると考えております。これは、若年者就労促進や少子化対策にもつながる問題だと私自身は強く思っております。
 そこで、今回は水産業の高収益化について質問させていただきたく存じます。
 まず、現在、県内のノリ養殖漁家の件数及び生産規模を教えてください。

◯新村雅彦副委員長 有江水産振興課長。

◯有江水産振興課長 有明海のノリの養殖漁家につきましては、七百六十八経営体ございます。生産は、昨年度で百五十一億円の生産を上げております。

◯板橋 聡委員 百五十一億円というのはどれぐらいなのかちょっとわかりにくいので、よろしければ、ノリの生産規模というものが、県内の例えばノリ以外も含めた水産業の中で何%ぐらいを占めるものか教えていただけますか。

◯有江水産振興課長 平成二十一年におけます本県の水産の総生産額が約三百三十億円でございまして、年によって変動はありますけれども、有明海におけるノリの養殖生産額は約四割を占めております。

◯板橋 聡委員 四割というのは、私も、福岡の水産業の中でもかなりのパーセンテージを有明のノリが担っているなと感じました。ただ、一方で、現在、有明のノリ養殖漁家、先ほど八百軒程度いらっしゃるということでしたけれども、うち二十軒程度が毎年後継者がおらず廃業されたりしておるというふうな話を伺ったことがございます。そういう意味では、後継者育成という観点で、阻害要因、こういうことがあるからなかなか後継者が来てくれない、あるいは継いでくれないんだというものは一体何でございましょうか。重立ったものを何点か挙げていただけますでしょうか。

◯有江水産振興課長 ノリ養殖漁家が減少する大きな要因の一つとしては、非常に生産コストが高くかかるということで、ノリ養殖機械や漁船などの設備投資に多額の費用がかかることがございます。それから、労働環境の問題で、極寒での海上での作業、陸上での加工作業を最盛期には昼夜を問わず行わなければならないといった過酷な労働条件がございます。
 あと、ノリの品質の件でございますけれども、基本的にノリ漁家というのが家族単位、個人単位で経営をやっているところが多く、個々の養殖や加工の能力、施設の差などにより非常に品質にばらつきがありまして、なかなか単価が上がらないという状況がございます。

◯板橋 聡委員 ありがとうございます。
 そういった中で、私、いろいろ農林水産部の予算を精査させていただく中で、一つ注目しております事業がございまして、沿岸漁業構造改善事業、つまりノリの協業化というものがございました。委員長にお願いしたいんですけれども、この中で、有明海区のノリ協業化事業の概要につきまして資料を要求させていただきたいと思いますので、お取り計らいをお願いいたします。

◯新村雅彦副委員長 お諮りいたします。
 ただいま板橋委員から要求がありました資料を委員会資料として要求することに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者がある〕

◯新村雅彦副委員長 御異議ございませんので、本委員会の要求資料といたします。
 執行部に申し上げますが、ただいま板橋委員から要求がありました資料については提出できますか。

◯有江水産振興課長 直ちに用意できます。

◯新村雅彦副委員長 それでは、確認させてください。
    〔資料確認〕

◯新村雅彦副委員長 じゃあ、お願いします。
    〔資料配付〕

◯新村雅彦副委員長 それでは、資料が配付されましたので、板橋委員、質疑を続けてください。

◯板橋 聡委員 私は、いろいろ経営という観点から考えますと、高収益化に関しては二つの視点があるのかなと。一つは、売上の向上です。どんどんノリをたくさんつくって売ることで売上が向上することによって高収益化を実現すると考えられると思います。
 現在のノリ養殖場の現実から考えて、今、一軒当たり大体平均のコマ数等々あると思いますけれども、あと、大体家族単位で一経営体になっているということもございますが、売り上げの向上という観点では、どれぐらいの余力というか、のびしろ、伸び幅がございますでしょうか。

◯新村雅彦副委員長 質問の趣旨はいいですね。

◯有江水産振興課長 今の御質問は所得ということでしょうか。

◯板橋 聡委員 ノリの生産量ということです。

◯有江水産振興課長 現在、ノリの養殖の漁場がコマで言うと約二万二千コマございまして、これについてはもう決まった数で、これ以上漁場をふやすということはできません。

◯板橋 聡委員 一漁家一経営体という経営状況でもございますし、ノリのコマ数というのもかなり、かなりというか、いっぱいいっぱいであるということでありますから、これは生産量をふやすというのはなかなか容易なことではないと。ということは、やはり高収益化を達成するには、もう一つの方策は、これは生産コストをどういう形で削減していくかに尽きるのではないかと思います。その意味で、ノリの協業化は私は非常に効果があるんではないかと考えております。
 現在、ノリの養殖漁家にとって、非常に経費の部分で大きなものを占めます設備投資に関しては、どういったものがあって、総額どれぐらいあって、年間どれぐらいの減価償却を計上されているか。平均的な値で結構です、教えていただけますか。

◯有江水産振興課長 ノリの養殖を行いますのに、主な施設整備としましては、やはり漁船が大体二千万円、それから、ノリを加工します機械が三千万円で、合わせて五千万円という大きなハード的な設備投資が必要でございます。これの減価償却というのが年間に大体三百万円必要でございます。

◯板橋 聡委員 五千万円というのはちょっとびっくりしたんですけれども、一経営体当たり五千万円というのは正しいでしょうか。

◯有江水産振興課長 あくまでも新規に購入した場合でございまして、一経営体当たりこの金額でございます。

◯板橋 聡委員 わかりました。これが年間の減価償却という形では三百万円ぐらいのコストとして毎年自動的に乗ってくると。これがあるがために、やはりノリのできふできで非常に収入が圧迫されると。これは私の一般質問のほうでも申しましたとおり、非常に凶作のときになったときとかは、ノリ生産者の方は子供の給食費にも事欠くぐらい収入のほうで苦労される場合もあると理解しております。
 一方、ノリの協業化に関してこういうふうな資料をいただいておりますけれども、この協業化によって一体どれくらいの経費削減効果が見込めるか。この協業化事業に関する簡単な説明と一緒に、その経費削減効果に関してお示し願えますでしょうか。

◯有江水産振興課長 まず、協業の形態といいますか、協業のやり方につきましては、ノリの場合は二通りございまして、海上作業から陸上加工の作業まですべてを漁家が共同して行うというスタイルと、海上作業は個々の漁家が行い、陸上の加工作業は漁協がまとめて加工作業をするという大きく二つのスタイルがございます。
 協業のメリットと申しますか、まず、施設を共同で保有することによりまして、設備投資、油代の生産コストの縮減が図られます。五経営体が仮にばらばらでやった場合と、共同でやった場合で比べますと、経費的には約二割が削減されるという試算をしております。さらに、共同作業を行うことで、一経営体に直せば労働時間が削減されると。それから、高度な品質管理ができる施設をつくりますので、品質のばらつきが少なくなり、単価の向上が見込める、そういったメリットがございます。単価の向上で言いますと、一枚当たり〇・四円向上が見込まれる試算ができております。

◯板橋 聡委員 ちょっとばらばらというふうな感じだったんですけれども、例えば一経営体がこういったノリの協業に取り組んだ場合、具体的にはコスト削減メリットや単価の向上によって、収益はどれぐらいの向上が見込まれるんでしょうか、ちょっとそれを教えていただけますか。

◯新村雅彦副委員長 質問の趣旨はよろしいですね。ちょっと急いでください。

◯有江水産振興課長 申しわけございません。
 三百九十万円ほど一経営体当たりの収入が増になります。

◯板橋 聡委員 ありがとうございます。私、思うんですけれども、こういったいい事業をやられているときに、一軒当たりどれぐらいのインパクトがあるかをしっかり執行部側が把握されて、これを漁家に伝えないと、いい制度であったとしても、なかなかこれは浸透しづらいんではないかと思いますので、ぜひここら辺は改善をお願いしたい、意識をした上で告知されるほうがよろしいかと思います。
 一方、収入の部分もそうなんですけれども、やはりノリの生産者の方というのは、先ほど有江課長がおっしゃられたとおり、シーズンには本当に過酷な労働をされていらっしゃるんですよね。潮の満ち引きに合わせて漁場に出て、コマに出て作業をされている。こういったところの労働負担に関してはどのような効果が見込めますか。

◯有江水産振興課長 先ほども申しましたように、ノリのシーズンが冬の時期でございまして、極寒の海上での作業を長時間やって、帰ってきたら陸上での加工作業を続けざまにやるということで、最盛期は不眠不休でやられると。それを協業化してローテーションを組めば、その分労働は軽減されるということでございます。

◯新村雅彦副委員長 質問の趣旨は具体の効果でしょう。

◯有江水産振興課長 海上の作業というのは、コマのノリの枚数によって大体固定されますので、世話にかける時間は変わりませんけれども、そういった陸上の作業をローテーションでやるということで、約四分の一に労働時間は軽減されます。

◯板橋 聡委員 そういう意味では非常にメリットが多いようなんですけれども、ちょっと聞くところによりますと、やはりどうしても協業する際に、いろいろと経営体が集まらない場合もあるといった問題点があると。そういう問題点というか、この協業化に参加する場合の漁家のデメリットといったものはどこに存在するとお考えでしょうか、教えてください。

◯有江水産振興課長 基本的に、協業して経営的なデメリットというのはございませんけれども、どうしても海上の養殖方法とか陸上の加工方法が、自分たちが今まで好きなようにできたのが、協業ではそういった思いどおりにいかないということで、意見の食い違い等がありまして、再び個人経営に戻るといったケースがデメリットとしてはございます。

◯板橋 聡委員 つまり、かなり職人芸というか、そういった部分があって、思うように、自分一人でいいものをつくりたいと考える方も多いと。やっぱりそういったところがいろいろと協業にはネックになっておるという理解でよろしいでしょうか。

◯有江水産振興課長 委員の言われるとおりでございます。

◯板橋 聡委員 本当におっしゃるとおり、漁家がすべてこれに参加することがよいとは思いませんけれども、これは一つ重要な視点があると思うんですね。私個人、非常に思うんですけれども、農林水産業という分野は、生産者であると同時に経営者であるという意識をもっと醸成させるべきだと考えております。もちろん職人としてやっていくという部分も大事でしょうけれども、そういった意味では、この協業化をもっと推進させ、理解していただいて、取り組んだほうがいいと思われるところがどんどん取り組めるようにする。先ほどちょっと課長のほうの御理解等々が不足しているなと感じたところもございますけれども、同様に、漁家に対して、経営という形ではこういうメリットがあって、十分検討に値するから、ぜひ検討してみてもらえませんかというような啓発活動を今より活発化することによって、より前向きに検討する漁家がふえる可能性、これをどう思われますでしょうか、お答えください。

◯有江水産振興課長 だんだん経営も厳しくなってきておりますので、そういった事例を挙げて啓発していけば、協業化は進んでいくと思っております。

◯板橋 聡委員 ぜひ検討をお願いしたいと。
 そこで、水産業の高収益化に結びつけるノリ協業化事業、啓発も含めて、その決意を谷部長からお伺いできればと思います。

◯新村雅彦副委員長 谷農林水産部長。

◯谷農林水産部長 ただいま委員の御意見にございました、生産者であるとともに経営者であるべきということは、まさしく私もそのとおりだと思っております。これは、水産だけではなくて、農林水産みんな通じるものでございます。ただいまいろいろ言われてございました、いろいろな協業化することによって経営的なメリット、あるいは労働環境の改善といったものも見込まれるわけでございまして、私どもは今後、そういった協業化してうまくいっている、また、後継者も育っているといった事例を積極的にPRすることによって、さらにこの協業化の取り組みを推進してまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 水産業に限らず、農業全般、また、県が非常に今回力を入れています六次産業化にもつながる話でございますので、ぜひお願いいたします。
 ちょっと時間が厳しくなってまいりましたけれども、質問の二番目、元気なふくおか農業づくりの推進という部分でちょっと質問をさせていただきます。
 重点施策にもなっております元気なふくおか農業づくりの推進という事業の中に、元気なふくおか農業づくり推進費として、県農業の役割や重要性を啓発、福岡の農業応援団づくりとありますけれども、元来、福岡県は農業、特に園芸品目などに関しては移出県──福岡県から外に、都市圏に対して販売をしているというような県でございます。
 東京、大阪などに向けてのPRということでしたらまだ理解はできるんですけれども、なぜわざわざ県内、県民に対してするのか、その意図がよくわからないので、事業の内容、意図について御説明していただけますでしょうか。

◯新村雅彦副委員長 小寺農林水産政策課長。

◯小寺農林水産政策課長 今後、本県の農業が維持・発展していくためには、競争力強化はもちろんのところでございますけれど、県民の方々に本県の農業の重要性を理解していただき、その上で本県の農産物を積極的に購入していただく、そういう取り組みが重要不可欠と考えております。今回、そういう意味で、本事業により、小学校や家庭、地域を対象として県全体に広がる啓発活動を行ってまいりたいと考えております。

◯板橋 聡委員 我が党の代表質問の中でも、小川知事のほうが言及されておりましたけれども、TPPに対する考え方というところで、今回、予算措置の中では、二月十八日の議会におきまして附帯決議が出ております。これを意識しての予算組みというのはしっかりしておるということですけれども、こちらとの関連はいかがでしょう。

◯小寺農林水産政策課長 私も附帯決議は十分重く受けとめております。附帯決議はTPP参加への動きがあることを踏まえたものである、そういう理解の上でこの事業に取り組むこととしたところでございます。

◯板橋 聡委員 附帯決議をちょっと読み上げますと、「TPP協議については、地方も万全なる対応で挑まなければならない。今後については、万全なる対応を求め、積極的に取り組むことを条件とする」となっております。そういう意味では、この元気なふくおか農業づくりというのが、知事としてこのTPPに対する対応策であると理解してよろしいのかと思いますけれども、この啓発というところに私は非常に引っかかっておるのですよ。啓発というのは、大辞林で調べますと、「人が気づかずにいるところを教え示して、より高い認識、理解に導くこと」ということになっております。ですから、私がぜひ知りたいのが、じゃあ、知事のTPPに対する思い、農業に対する思いとして、国土の保全だとか国家安全保障上の問題というところで農業は非常に重要であるとは言われておりますけれども、一体この啓発事業において、知事は、農業のどういったところが人が気づかないところだと思っていらっしゃるのか。あるいは、どういった高い認識、理解に導こうとして、こういった啓発事業をされているか。そこのところをぜひ理解したいと思っているんですね。これこそが知事のTPPに対する首長としての明確な意思表示だと私は考えております。
 そういった意味で、知事のこの啓発事業に関する思い、あるいはどういったところに啓発をして、高い認識、理解に導こう、どういったところが高い認識である、理解であると考えていらっしゃるのか、谷部長、御存じでしょうか。

◯谷農林水産部長 ただいま委員御指摘の点については、私は知事と議論をしたことはございませんので、確認はしておりません。
 ただ、啓発とは、気づかない部分、あるいはさらに高いところへ持っていくということでございますが、私ども、この事業を考えておりますのは、気づかない部分といいますのは、県民の皆様、小学生も含めてでございますけれども、農業の持つ役割、機能にすべての人が気づいているわけではないということを今、前提にしているわけでございます。当然、毎日御飯等を食べておるわけでございますが、それがどこでつくられているかにも関心を持たない人たちもたくさんいると。そういった人たちに、そういう農業とはそういう食料を生産する場所だと、しかも、県内でつくられているんだというところをしっかりと気づいて認識していただく。
 もう一つ、高いところに持っていくという部分については、そもそも私どもの生活を支えておる食というものについてどうなんだということをしっかり考えてもらうという意味で、私ども、こういった啓発活動に取り組もうとしておるものでございます。

◯板橋 聡委員 部長、ありがとうございます。部長のお気持ちは非常によくわかりまして、なかなかすばらしい理解だなと思いますが、ここはぜひ首長として知事の思いを確認させていただきたいと思いますので、知事保留質問ということでよろしくお取り計らいをお願いいたします。

◯新村雅彦副委員長 ただいま板橋委員から申し出のありました知事保留質疑を認めることといたします。
 なお、知事保留質疑は七月十五日金曜日に行う予定でありますので、御了承願います。

◯板橋 聡委員 どうもありがとうございました。(拍手)